M&Aいろは塾では、売手オーナーが初めてM&Aの仲介会社を選ぶ時に「ここは気を付けた方がいい」「この会社はこういうことをしている会社」ということを分かりやすく説明しています。
本日はM&A仲介を行う「ブティックス」について解説していきます。
こちらの会社は、2006年11月に設立した会社で、元々は介護用品のレンタルやインターネット通販をしていた会社ですが、2015年から介護事業に特化したM&A仲介を始めています。2018年にマザーズに上場しているので財務内容を確認できますが、2021年3月期の実績では、売上1277百万円の内、約半分がM&A仲介での売上(利益率ベースでは65%程度)と、かなりM&A仲介の比率が高くなりつつある会社です。
最近では、「●●業」専業のM&A仲介会社というのは増えてきていますが、2015年に介護事業に特化してM&A仲介を始めているのは、専業系のM&A仲介としては比較的先発組といったところでしょうか。
介護・福祉業界でM&Aを検討している人には参考になる内容になるかと思いますので、是非最後までご覧ください。
ブティックスの手数料について
ブティックスの料金体系は以下のような設定のようです。
中間報酬 0円
最終報酬 最低報酬額 + 譲渡価格をレーマン方式によって計算した額を加算(最大10%)
最低報酬 100万円(介護、障害福祉)、200万円(医療)
最低報酬額で100万円や200万円などという料金設定だけを見ると、いろは塾で取り上げている他の仲介会社と比較しても最低報酬金額は一見するとかなり安いようにみえます。

ただし、注意すべきは、ブティックスの最終報酬額は譲渡額のレーマン方式を細分化して計算するという点です。
どういうことかというと、多くの仲介会社はレーマン方式といっても以下のような料率で説明しています。
5億円超~10億円以下の部分 4%
10億円超 3%
一方、ブティックスのレーマン料率表は次の通りです。
2,000万円越~4,000万円以下の部分 9%
4,000万円越~6,000万円以下の部分 8%
6,000万円越~8,000万円以下の部分 7%
8,000万円越~1億円以下の部分 6%
1億円越~5億円以下の部分 5%
5億円超~10億円以下の部分 4%
10億円超 3%
結構細かいですね(笑)
というのも最低報酬額で500万円とかで設定している会社は、譲渡金額が1億円以下で成約すれば、それが5,000万円でも1,000万円でも手数料は500万円なので、細かく設定する必要ないんですが、ブティックスのように最低報酬額100万円で設定していたりするとその必要があるということになります。
なので仕上がりの手数料をきちんと計算することが必要で、
例えば、譲渡金額が5,000万円であれば、
最低報酬額(100万円) + 譲渡価格をレーマン方式によって計算した額(460万円)
=最終支払額は560万円
となります。
譲渡金額が8,000万円であれば、同様の計算で、最終支払額は780万円となります。
「え!?100万円じゃなくて780万円もするの??」とびっくりしないように事前に計算しておきましょう。
こうなってくると最低報酬額500万円で、レーマン方式も上の料率を適用している仲介会社の方が1億円までは500万円で収まるので安いということが言えます。
実際、100万円、200万円の手数料で収まる案件というのは、譲渡金額が0円というケースのみになりますので、冷静にシミュレーションしてから仲介会社を選びましょう。
ブティックスの評判について
ブティックスのホームページでは、「介護・福祉事業のM&Aでは、業界№1の実績をもつ企業」と記載があります。
実際どんな感じかIR情報で確認すると、こんな感じで成約実績が伸びています。
2017/3期 25組(売上高 152百万円)
2018/3期 42組(売上高 286百万円)
2019/3期 51組(売上高 397百万円)
2020/3期 49組(売上高 360百万円)
2021/3期 85組(売上高 604百万円)
中小M&Aの最大手の日本M&Aセンターで2021/3期で年間405組(810件)ですが、日本M&Aセンターの場合は全業種対応しているので、「介護・福祉」に限った話で言えば確かに業界№1といえるかもしれません(全仲介会社が業種別の成約件数を出している訳ではないので確認できませんが)
なお、ブティックスはこれを18名のコンサルタントが行っているということなので、一人換算で4~5件成約させている計算になります。
で、実際手掛けている案件が100%成約するわけではないので、常時10案件くらいを一人のコンサルタントが対応するくらいのイメージ感かと思います。現場はもうてんてこまいですね。
実際、社員や元社員が投稿するサイトで、ブティックスは「同業他社に比べると給与や待遇はそれほど高くない」と書かれています。展示会事業など別事業も行っているので一概に言えませんが、平均年収が600万円程度だったりもするので、忙しさの割に待遇が思わしくないという想いも従業員にはあるように思います。
これから会社の譲渡を任せよう、という時に、たくさん案件を抱えているコンサルタントに任せてしまって大丈夫かな?と思う方もいるかと思います。
この点は注意する必要がありますが、業種特化でやっているのである程度効率的にできそうな気がします。
言葉は悪いですが、業種特化であれば新しい売案件のご相談をいただいたら、いつも買ってくれる買手にボンボン持ち込むという感じで買手探索の手間が省けますし、毎回同じ業種なので企業として見るべきポイントや買手が気にするポイントも想定しやすく、概要書作りとか買収監査の段取りとかもスムーズにやれるということです。
ちなみに一般的にM&Aのコンサルタントの工数が不足している場合は、こんなこともあるので、危険度のバロメーターとしてください。
・時間をかけた割にアウトプットがしょぼい(株価算定とか企業概要書とか)
・案件内容が頭に入っていない、他の案件とごっちゃになる
・成果が出ないことについていい訳が多くなる(買手探索とか)
また、M&A業界でもたまに聞くのは、同じ専業系のM&A仲介会社でバッティングするということです。
よく比較対象とされるのは、同じ介護・福祉分野専業のM&A仲介会社である「CBパートナーズ」という会社ですが、大抵どこの仲介会社にも介護・福祉担当みたいな人はいて、こういった人達も相まって売手からの受託取り合戦が繰り広げられることもあります。
ただ、面白いことに、売手からの受託の際にはいろんな仲介会社「弊社にお任せ下さい」と言ったりするんですが、受託した後に紹介される買手は実は結構一緒だったりします(笑)
介護・福祉分野でよく買収をする買手企業というのは当然ブティックスとも、CBパートナーズとも、他の仲介会社とも紹介ルートを持っているものなので、結果的に同じ買手企業にたどり着く可能性もあるわけですね。
同じ買手企業と交渉するのであれば、当然仲介手数料が安い方が手残りが多くなるので、この辺も念頭に入れつつ仲介会社を選定するようにしましょう。
加えて、ブティックスのIR資料では、インバウンドでの受託も多いと記載があります。インバウンドというのは、お客さんからの仲介会社にコンタクトを取るということです(逆はアウトバウンドで、仲介会社から電話したりDMを送ったりすること)。おそらくはネットからの流入などが多いかと思います。
で、その後は既にコネクションのある買手企業に持ち込みすることが多いはずなので、他の仲介会社のように買手探しでやたらとテレアポするようなことは無いと思います。
なので、他の仲介会社のように広く評判・口コミを書かれるという可能性は低いと思われるので、コンサルタントの質は電話や面談をしながら、他の仲介会社と比較し、検討するのがよいかと思います。
筆者の見解
仲介手数料については、レーマン方式での料率が最大10%まであるので絶対に仲介契約締結までにシミュレーションして、支払額を確認しましょう。
規模が大きくなってくると、全業種を扱う他のM&A仲介の会社よりも高くなる可能性もあります。
過去の実績からいくと、1組当たりの売上高が平均700万円程度、つまり、片側から平均350万円という手数料なので、案件のサイズ感としては譲渡金額が2,000万円強の案件が多いと想定できます。
一方で、業種特化型の仲介会社ですので、全業種対応している仲介会社の介護担当が対応するよりも質が高い可能性もあります。
筆者の感覚としては、「全業種担当していて5年M&Aの経験があります」、というコンサルタントよりも、「介護・福祉分野に特化した仲介会社で3年間数多くの案件を経験しました」、というコンサルタントの方が、介護・福祉分野のM&Aを任せたときの実力は上だと思います。
仲介手数料と天秤にかけて検討するようにしましょう。
下の図はM&Aいろは塾との比較になります。M&Aいろは塾でお受けする案件では業種を絞っている訳ではないですが、業種を絞って対応している登録コンサルタントはおりますので、いろは塾プライスで案件推進が可能です。是非M&Aいろは塾も選択肢の一つに入れていただけると嬉しいです。
ご参考いただければ幸いです。
最後まで読んでいただき有難うございました!
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