お悩み社長
色々な仲介会社を選ぶ際に、各社から株価算定をもらって考える売手オーナーも多いかと思います。
こうした時に、同じ情報(決算書)を出しているのにも関わらず、株価算定結果に大きな差が出ることがあります。
そして、その差を見たときに「一番高い価格を出した会社に任せれば一番高く会社を売ってくれそうだな」と思いがちですし、実際そういった仲介会社が選ばれることが多いです。
結論からいうと、そういった仲介会社は、売手の好感は得ても、買手からは信用を得られず、かつ、成約率を低くする可能性が高いので仲介会社として任せるのはリスクが伴います。
今日は株価算定に差が出る理由と、それを基準にどうやって仲介会社を選ぶと良いかについて書いていきたいと思います。
まずは以下のような事例を紹介します。
② B社は5,000万円、C社も5,000万円、D社だけ1億円が会社の価値と算出
③ A社長は「D社が一番会社を高く売ってくれるだろう」とD社にM&Aを依頼
④ D社は色々な買手に打診するが平均的には4,000万円の回答、最高値でも5,000万円の提示がやっと
⑤ A社長は5,000万円でも納得せず、妥協する最低ラインを7,000万円と設定
⑥ 結局1年探しても7,000万円を出す先は見つからず、D社がギブアップ
D社だけ高い価格を出したので、A社長としては「D社に任せるべき」と考えてしまい、結果相手が見つからず時間と労力を浪費した、という話ですが、最近こういう話が非常に多いです。
コンサルタントの経験値が同じくらいで、市場感もきちんと理解しており、同じ情報のもとで株価算定をすればこのようなことは普通は起きませんが、
「どうしてもこの案件を受託したい!」
「過去最高値でこのくらいの株価が出せたからこのくらいののれんを乗せても大丈夫!」
と、担当のコンサルタントが思ったりすると、こういう法外に高い株価が出てきてしまいます。
こういう背景を知らず、売主としては「高い価格を出してくるということは高く売れる自信があるのだろう」と思いこみ、この会社にM&Aを依頼してしまう訳です。
そもそも株価算定というのは、売手にとっても買手にとってもフェアな価格を示すものです。
これを勘違いして、「このくらい出せるよう頑張りたいという価格」と勘違いしている仲介会社も実は少なくありません。
B社やC社よりもD社の方が成約確率は格段に低いはずですし、D社は買手をフェアな価格以上で買わせるように話をしなければいけないので、買収後に買手が「こんなはずではなかった」となる可能性は高いはずです。
言い方を変えると、
株価算定で双方にとってフェアな株価が試算できない仲介業者は、残念ながら買手から信頼されませんし、買手からは「売手も欲深い人」と思われ破談のリスクを高めます。
つまり、株価算定に意図的に味付けをする仲介会社を選ぶことはリスクがあるわけです。
逆に言えば、買手に好かれるために、売手の価格目線を下げに来る仲介会社は売手から信用されない、というのと一緒ですので、仲介という以上はどちらにもフェアでなければなりません。
「時間を持て余している」、「高く売れるなら売るけど、高く売れないならM&Aは辞めてもいい」、「高く売れさえすれば他の要素は何も気にしない」、という話であれば、こういう仲介会社に任せるのも一つですが、「後継者がいない」、など、M&Aをする目的を思い返してみて、”自分の会社はM&Aをする必要がある”というのであれば、このD社のような会社に任せることはかなりのリスクを負うことに繋がります。
目的が果たせなくなるだけでなく、期待値ばかりが上がり、左記の例の通り「誰も得しない」ことになるのです。
どのくらいの価格があなたの会社のフェアな価格なのかは、3社以上の仲介会社から株価算定をもらったり、あなた自身が株価算定をしてみることで大体わかりますので試してみましょう。
実際M&Aの仲介会社の行う株価算定はそれほど難しいものではないですし、結局のれんをどのくらい載せるかは味付け次第、ということも理解できると思います。
実は上の事例には続きがあり、A社長はB社に「5,000万円でもよいから」ということで依頼をしました。
ですが、結局は上手くいきませんでした。
D社は多くの買手企業に打診してしまったため、その後どの仲介会社経由で交渉しても同じ買手企業からは再検討難しい、という回答となったのです。
買手企業はその案件を行うかどうかを会社として判断しますので、一度「NO」が出た案件はよほどの事がない限りは再検討することは基本的に無いです。
その大事な初提案をD社のような会社にさせてしまうことで、本来適正価格で決まるはずだった買手候補も失ってしまう可能性があります。
最初に任せる仲介会社こそ、厳選して、厳しい目で選びたいものです。
最後までお読みいただき有難うございました。