お悩み社長
こんにちは、M&A職人です。
M&A仲介会社と会話するとまずは「決算書をもとに株価算定しましょう!」という話になると思います。
で、実際株価算定結果が返ってきてびっくり。「仲介会社によってこんなに値差があるの・・?」と。
結論からいうと「M&A仲介会社の出す株価算定に一喜一憂する意味はない」のですが、金額でバシッと出てくるので「〇〇円で売れたらいいなぁ」「〇〇円だったら売るのやめようかな」と色々考えてしまう気持ちも分かります。
筆者も色々な会社のオーナーさんと会話してきましたが、「俺は株価なんて気にしない!」と言い放った方でも、株価算定を色々試した結果「う~ん、やっぱり高い株価なら売ろうかな」と迷いが生じた方もたくさん見てきています。
今日は、「M&A仲介会社に株価算定を真に受けない方がいい理由」についてお伝えできればと思います。
M&A仲介会社が株価算定をする本当の意味
M&A仲介会社はなぜ、「まずは、株価算定をしましょう!」というのでしょうか。
ルール?それとも、気を引くためのサービス?
サービスの一面もあるのですが、一番の目的は「売れる案件かどうかを見定める」ことです。
大して面識もないのに「御社が売れるか分からないので決算書いただけますか」とはなかなか言えないので、株価を算定するというサービスを提供することを通して、売れる案件かどうかを見定めるということをしています。
財務健全で毎期大幅に黒字の会社だったらいいか、というと必ずしもそういう話ではありません。売手がいくらの売却金額を希望しているかも探りながら売れる案件かどうかを見定めているということです。
M&A仲介会社の発想として、すごくシンプルにいうとこんな感じ。
財務良好+その割に売手の金額目線が低い →売れる案件
財務良好+売手の目線が高すぎる →売れないかも案件
財務不健全+売手の目線が低い →場合によってはいけるかも案件
財務不健全+売手の目線が高すぎる →売れない案件
この雰囲気や、あとは買手が見つかりそうかどうかによって、積極的に営業すべき売手なのか、そうでもない売手なのかを区別しています。
もし、あなたが売手として株価算定のくだりを一通り終え、その後全く音信不通になったら「売れない案件」として見做されている可能性が高いと思ってよいでしょう。
問題はここからです。
「売れる案件」には当然ながら色々な仲介会社の営業が殺到します。
そうなるとどうなるか。
リップサービス的な味付けをした株価査定結果が出てくる、ということになります。
例えば、普通に株価算定をすると5億円という株式価値になる会社があったとして、そのオーナーは5億円以上で売れてほしいという希望を持っているとします。この状態であれば、株価算定結果と売手の希望が合致しているので、何の問題もなく仲介会社が受託して、成約に向けて進めるでしょう。
でも、他の仲介会社が5.5億円という株価算定結果を出したらどうでしょう?
売手としては高く会社を売却したいので、5.5億円の株価算定をした他の仲介会社を選ぶ可能性も出てきます。
そしてまた他の仲介会社が6億円という株価算定結果を出したら・・・?
売却する会社は何も変わらない(本来の株式価値は何も変わらない)のに、仲介会社の競合関係だけで株価査定金額が上がっていくというおかしな状態になります。
もちろん、あまり仲介会社が風呂敷を広げすぎて高すぎる株価査定結果を出してしまうと、売手はその高すぎる株価を期待するので、結果仲介会社が上手く受託できたとしてもその高すぎる株価を出してくれる買手を見つけてこないといけない、という新たな難題を抱えることになるのでは?という指摘もあると思います。
ただ、M&A仲介事業というのは、売案件を受託してから買手を探して成約させるという流れが主流なので、まず売案件が受託できないと何も始まりません。
他の仲介会社に売案件の受託を許すくらいであれば、多少目線が上がってしまっても受託しにいこう、というのが現場の営業的にはあり得る判断となります。
結果よくわからない株価算定ばかりを売手が受け取ってしまう、ということになりかねないのです。
あるいは、普通に株価算定をすると4億円という株式価値になる会社を、オーナーが5億円以上は絶対ほしいという温度感を感じた仲介会社の担当者がエイヤで5億円に盛った株価算定結果を出してしまうというのも同じような現象だと思います。
色々な仲介会社があるので、自社が正しいと思った株価算定を出す仲介会社もあれば、盛りに盛った株価算定を出す仲介会社もあると想定したうえで、あまり真に受けないことをお勧めします(間違っても、高い株価を出してくるのだから高く売ってくれる自信があるのだろうなんて思ってはダメです。仲介は利益相反行為はしてはいけません)。
その株価査定が高かったり、安かったりしても何の影響もない人、まさしく第三者が本来株価査定をするにふさわしいのです。
株価算定をするなら誰にお願いしたらいい?
では、第三者に株価査定をお願いするといっても誰にお願いしたらいいのでしょうか?
仲介会社だと営業的な色のついた株価査定をされる可能性があるし、
公的機関である事業承継引継ぎ支援センターはそういった業務はしてくれないし、
顧問税理士に依頼してもM&Aを専業でやっているわけではないので相場観が分かっているか不安だし。
筆者的には、何が何でも株価算定をするというのでなく、実際に複数の買手から提示条件をもらってから考えるでもいいのかな、とも思いますが、事前に目安だけでも知りたいという方は利害関係が無い専門家に「株価算定をアウトソーシングする」というのも一つかなと思います。
最近の副業ブームもあってか、個人の人が自分のスキルを売る、いわゆる「スキルマーケット」というのが流行っています。
例えば、国内最大手のスキルマーケットである「ココナラ」といったサイトですが、他にも色々あります。
事務作業の外注や、イラスト、お悩み相談など様々ありますが、依頼者が、登録している個人に「5,000円で〇日までにお願い!」と依頼して、後日仕事の成果物を受け取って取引終了という流れです。あと腐れなく手軽に依頼できるのがいいですね。
筆者はたまにココナラで事務作業を依頼しますが、丁寧に仕事をして下さる方も多いです。
最近このスキルマーケット界隈でも、M&Aの関連サービスが増えているように思います。
こういったところでM&A経験が豊富な方がいれば株価算定を依頼するというのもよいかもしれません。
(但し、仲介営業目的の人もいるかもしれませんので口コミを参考にしましょう。ココナラではサイト外のやり取りは違反行為となります)
仲介会社に依頼すると無料で行われることも多い株価査定ですが、こういったところではいくらか料金が発生するのがデメリットではあります。ただ、逆に忖度なく、営業もなく、割り切りで依頼できるので、M&A専門家の本音が知りたいという方は合っているかもしれません。
また、買手の立場としても、「これから買収しようと思っている案件について、仲介会社が〇〇円と言っているだけどこれって高いのか?」などの相談もできます。
結局買手と交渉してみないと株価なんて分からない
株価算定については、実際は買手と交渉して金額を提示してもらわないと本当に妥当な水準感というのはわかりません。
だから株価算定については「絶対〇〇です」と断定的な言い方をする人は信用してはいけません。
世の中に全く同じ会社など無いので、似たような会社でも同じ株価査定になるわけもなく、また、買手側も株価査定の仕方で画一的に決まっているわけではないのです。
事前にあれこれ株価を査定したとて絶対に正確な結果は得られないと心得て進めることが重要です。
売手としては、希望金額で絶対〇〇円ないとダメ!というものがないのであれば、買手の状況みて希望を定めていこうかな、でよいと思います。
どちらかというと、仲介手数料が高すぎる仲介会社を選んでしまい手取り額を減らしてしまったり、特定の買手をゴリ押ししてくる仲介会社を選んでしまい色々な買手を並べて検討させてくれない状態になってしまう、など、仲介を使う手数料や進め方にこだわって選んでいく方が、結果ヤバい仲介会社にあたらなくて済むかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか?
M&Aいろは塾では、M&A仲介の裏側も赤裸々にした上で、M&Aをしようと考える人が正しい判断をしてもらえばと思っていますので、是非他の記事もご参考いただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!