手数料
お悩み社長
最近は銀行や信用金庫でも「M&Aは当行(当庫)にお任せ下さい!」と言っていたりしますね。
でも、銀行ってお金を借りるところでもあるし、決算書とかも全部渡してるから、ちょっとその辺のM&A仲介会社が会社売りませんかといってくるのに比べて意味合いとして重いですよね。
なぜなら、
「M&Aで売らなければいけないくらいヤバい会社だと思われているのかな?」
「断ったら融資剝がされるのかな?」
とか。
そういうことは普通無いのですが、ちょっと心配になる方もいると思います。
今日は金融機関がM&Aを勧めてくる背景と対処法について取り上げたいと思います。
・任せるならM&A仲介会社と金融機関はどっちがいいのか?
・勧誘されたときの対処法
それではいきましょう。
金融機関がM&Aに取り組むようになった背景
ご存じの通り、銀行業界はマイナス金利政策の導入により全体的に成長が鈍化しています。地方銀行では人口減で事業規模が縮小していたり、吸収合併も話題に上がることもあります。
とはいえ、銀行業は昔から脈々と続く業であり、無人化やAIの導入などは限定的なものなので、構造的にも柔軟に収益が取れない体質になっているのかもしれません。
筆者の同級生で銀行員になった人はこんなことを言っています。
「新入行員で入った頃は、ある程度の年齢になったら十分な年収が得られると思っていけど、昇給は気持ち程度だし、社会保険料とかも高くなってるから生活は苦しい。でも、営業しても稼いでいる実感もないので仕方のないとも思っている」
数千万円、数億円の融資がいたるところで発生するようなこともないはずなので、融資で稼いでいるというのは現場レベルでも少ないのかもしれません。
現在金融機関は、貸金でも儲からず、投資信託も個人がネットでやる時代で用立てしてもらいにくく、国債売っても全然手数料入らない、という難しい環境に置かれていることも想像できますが、そんな中、金融機関の新しい収益元として中小企業のM&Aが注目されているということですね。
金融機関が融資先のM&Aに無頓着であると、融資先がM&Aをしたとたん一括返済されるということも普通にあるので、融資の推進という意味でも積極的にM&Aに関わりたいというのも本音だと思います。
任せるならM&A仲介会社と金融機関はどっちがいいのか?
では、実際M&Aを検討している、もしくは、後継ぎがおらずゆくゆくM&Aをしたいと思っているようなケースの場合、M&A仲介会社に任せるのか金融機関に任せるのがよいのかどちらが良いのでしょうか?
この問いはなかなか難しく、金融機関に任せた場合でも結局M&Aの仲介会社を紹介されて、M&A仲介業者とやり取りしているケースもあったりします。まずは、金融機関がどういう形でM&Aをサポートしているか、どのくらいの手数料感なのかを整理しましょう。
金融機関がM&A支援を業務として行う場合には、ざっくりこのような感じになります。
金融機関がM&Aを支援する方法
② 金融機関が前捌きはするが、基本的にはM&A仲介業者に斡旋し、自分たちは紹介料をもらう
③ 金融機関はM&Aのプラットフォームを紹介するのみ(わずかな紹介料がプラットフォームからもらうことも)
①の場合だと、メガバンクで最低報酬2,000万円程度(大手仲介会社並み)、地銀レベルで最低報酬500~1,000万円程度(中堅M&A仲介会社並み)なので、そこそこの規模感の会社の売却だったら自らやるケースもあるかもしれません。
ただ、金融機関でM&Aに詳しい人は支店ではなく本部に集約しているケースが多いです。つまり支店にはM&Aに詳しい人はいないということ。
例えば、全行員が2,000人いる地方銀行で言えば、本部の法人営業部数人しかM&Aの実務をしない、という体制の金融機関も多いです。最近は増加傾向ですが、そもそも銀行業務はM&A業務とは全く別物なので、銀行だからいきなりM&Aがサポートできるというわけではなく、M&A用の勉強と経験が必要になります。
銀行業の歴史と比べM&A仲介は最近普及していることもあり、どの程度のリスクなのかは各銀行手探り状態です。保守的な経営が求められる銀行としては②のスタンスが一番フィットする、ということもあるかもしれません。
また②の場合の銀行の収益としては、金融機関がM&Aの仲介会社に売手企業を紹介したとき、成約時に20~30%程度(会社による)の紹介料がもらえるので、金融機関的には、とにかくたくさんの売手企業を発掘して、仲介会社に案件を流せば、手を動かさなくても、売上が立つという仕組みではあります。
そのような背景から、最近金融機関では支店長クラスを本店に集めてM&Aの研修をさせたり、資格を取らせたりして、大型の売案件(金融機関内でも大口の融資先であることが多い)を常にフォローし続ける、という体制になってきているわけです。
とある、金融機関の幹部の方から聞いた話では、「支店で一番大きな顧客のM&Aニーズを聞き漏らし、証券会社に案件をかすめ取られ、結果融資も全額返済されたという失態を支店長の責任として追及し、結果転勤させた」、という事例もあるようなので、支店長クラスでも必死にお客さんのM&Aニーズを探っているというのは理解できます。
いづれにしても、会社を売る側の立場からしてみたら、①でも②でも一般的なM&A仲介会社と同水準のが発生するので、同じ手数料を払うのであれば、金融機関を通して進めたほうが、M&A仲介会社に牽制が効く可能性もあるので、馴染みの金融機関を通すのも一案、かもしれません。
ただし、売却の話は融資してもらっている金融機関には知られたくないと思う方もいると思いますし、第一、金融機関も、より基本の報酬が高く紹介料もたくさんもらえるM&A仲介会社を紹介したがる関係上、結局割高な成功報酬を支払わされる可能性があるので、話半分で聞くくらいで、色々なM&A仲介業者と比較検討は怠らないようにしましょう。
あくまで、「仲介手数料と主担当になるコンサルタントの質とのバランスが良いかどうか」です。
勧誘されたときの対処法
M&Aを勧誘された場合でも、その意見だけで仲介契約を結ぶようなことはおすすめしません。
これはM&A仲介会社からの勧誘の際も一緒です。
M&A業界というのはまだ法整備も整っていなければ、動いているコンサルタントのレベル感も本当にまちまちだからです。
大切な会社を任せる訳なので、最低でも3社くらいの仲介会社に声をかけてみるようにしましょう。
最近ではネットで調べると、標準テーブルとして1,000~2,000万円手数料を取るような会社が多いですが、商工会議所の引継ぎ支援センターで仲介手数料とコンサルの質が適正な会社を教えてもらうなど、公的機関も使って探してみることもできますので覚えておきましょう。
ちなみに、勧誘を断ったからといって貸し剥がしされたりとかは普通無いように思います。こういった優越的地位の乱用は金融庁が厳しく規制しております。
ただ、譲渡企業に融資している金融機関の逆恨みみたいな形で、M&Aに非協力的な態度を取る金融機関もあるのは事実です。例えば、M&Aで譲渡した後、売手代表者の個人保証の解除をさせない、などです。
あまりごねるようならM&Aの買手企業の資金力で借入金を一括返済するということも念頭にM&Aの協議を買手と進めましょう。
金融機関というのはメンツを大事にする業界ですので、断るときもメンツを傷つけないような対応が望ましいとは言えます。難しいですけどね。
最後までお読みいただきありがとうございました。