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お悩み社長
M&Aで会社を売るんだけど、1億円くらいの金額を受取れる会社ってどんな会社なの?
筆者は中小企業のM&Aを長い間支援してきましたが、1億円くらいの価格がつく会社というのはざらにあります。決して珍しいことではありません。
財務状態や事業の内容にもよるのですが、ほぼ家族でやっているような町工場に1億円の株式価値が付き、一夜にしてお金持ちになった夫婦もたくさんいる訳です。
夢がありますね。
今は、世の中が金余りの状態ですので、買手側もお金を持っていて、1億円くらいの金額であれば、銀行から借入することなく手持ちのキャッシュでポンと決済したりもします。
ただ、「何となく気に入ったから」というふわっとした理由で金額提示することは普通はないので、1億円以上の価格がつく会社というのは、なんらかそれなりの理由がある気がします。
ここでは、そんな、”1億円の価値がつく会社”の特徴について考えたいと思います。
1億円の価格がつく会社の特徴とは
・負債が少なく、資産価値のある資産や現金を持っている
・高収益な事業を営んでおり、年間の営業利益が実質1,000万円以上ある
王道はやはりこんな会社です。
中小企業の株式価値を計算するときに、よく使われる年買法で「純資産額+営業利益×3」などで計算するケースなどが多い気はしますが、上記はそういった理論株価の基準に当てはまり、妥当に評価されたため1億円という金額がついた形となります。
大体、こういう会社は、オーナー自身も「1億くらいもらってもまぁそんなもんだろう」という認識が少なくともあるので、いざ1億円という金額を手にしてもそんなにびっくりしないということがほとんどです。
ただ、会社に価値のある資産や現金を持っていたとしても、給与という形で個人の資産に移そうとすると源泉徴収や社会保険料ががさっと持っていかれてしまうので、M&Aをすることで株式譲渡課税(約20%)にするとかM&Aと同時に役員を退任し退職金を得るなどで多額の税金を節税しています。
彼らはM&Aをすることで、かなり効率的に法人→個人への資金移動をする、という恩恵を得ているわけですね。
そもそも財務状態が良い会社とかではなくて1億円以上の価格がついた事例はないの?という質問については、次のような会社が可能性としてはあります。
・人材不足な業種で、社歴の長い従業員をたくさん抱えている
・ストックビジネスで、実績があり、少ない人材で維持できている
今の時代、正社員を採用するために多額のリクルーティングコストがかかるため、M&Aで一気に採用できるのであればその分高くても買収したい、と考える買手企業もあります。
人材不足な業界の人材とは、例えば、ITのソフト開発者や建築関連の職人、トラックの運転手や自動車整備士、看護師などの専門職で、スキルや資格が必要な人々ですが、いまや日本中で人手不足の状態ともいえます。こういった人材を一括で譲受したいという会社は本当に多いです。
こうした業種では、総じてM&Aも盛んな為、売手1社に対して買手複数社ということもあるので、競争原理が働き買収価格も高額になっていきます。
また、ストックビジネスも人気で、売上高はそんなに高くなくても、労力をかけず長期的に利益を生み出し続けるので、先ほどの「純資産額+営業利益×3」の3が、5とか7とかに見ることができ、結果株価も高くなります。
この最たる例は不動産管理などで、管理物件数が多ければ多いほど株価が高騰していきます。
筆者が見てきた中で、1億円以上の価格で譲渡されるのはこういう会社がほとんどです。
もちろん、特殊な技術を持っていてその技術を破格の値段で買収した、というケースもありますが、それほど過度な期待を持つような話としてとらえない方がよいかと思います。
高値で売れると思われがちだけどそんなに高くない、というケースも参考までに記載します。
・大手企業との販売ルートを持っている
・売上には結びついていないが、特殊な技術を持っている
・特許を持っている
上記の特徴で財務内容があまり良くない会社というのは、売手オーナーの価格目線は高い(高く売れると思っている)が、実際にはその価格では売れない、ということも結構多いです。
大手企業との口座は確かに評価できるのですが、売手企業が思うほど買手企業にとってその口座を手に入れることが難しくないか、あるいは、たとえ手に入れたとしても価格競争も激しく利益に貢献しない顧客になることもあるので、大手の口座だから価値があるというのは必ずしもイコールではありません。
また、特殊な技術でも売上に結びついていなければ世の中から必要とされていない(ちょっと厳しい言葉でごめんなさい)可能性も高いので、買手からの評価は得らないことも想定に入れておく必要があります。
特許についても同様で、売上を生み出している前提で、その参入障壁の役割を保有している特許が果たしている、ということであれば評価も高くなるはずですが、単に特許を持っているだけでは買手企業もどう生かせばよいか分からないケースもあります。それであれば特許を持っていなくても実績のある会社の方を優先したいと思う訳です。
総じて、「買手の販売ルートを生かせば、弊社の商品ももっと売れるだろう」とか「この技術を生かせばもっと売れる製品が作れるだろう」という”売手側のたられば”はM&Aの価格に直接反映されないことが多いです。
なぜなら、M&A後の営業活動や研究開発は、基本的には買手企業が自力で頑張るものなので、そこで得られた利益は買手企業が得るべき、という考え方もなくはないわけです。
これは、逆の立場であれば理解しやすいですが、売手企業にとっては自分の会社が全てであることが多いので、なかなか客観的に判断できないところではあります。その気持ちはとっても分かります。
「事業や会社への思い入れ」はとても大事なのですが、買手にとっては「気持ち」にお金を出すのではなく、事業や会社「将来性」にお金を出します。
株価という形でたくさんのお金を対価でもらうのであれば、その事業や会社が今後もきちんと利益を出せるのかを実績も含めて納得してもらわないと、売手の一人相撲になってしまうわけです。
間違いなく、自社のいる位置をきちんと理解した上でM&Aを行う方が、成約率と満足度の高いM&Aができることは間違いないので、是非参考にしていただけると嬉しいです。
まずは株価算定であなたの会社の価値を測るのもよいかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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