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M&A仲介会社と契約解除する際のトラブル対処法

お悩み社長

現在委託しているM&Aの仲介会社の動きが悪いから契約解除したいんだけど・・

 

近年、M&A仲介会社との契約を解除できないということでトラブルになるケースが多いようです。

 

これは大きくは次のような理由からトラブルになることが多いようです。

・契約を解除したいと申し出ても、仲介会社が解約させてくれない
・解約を申し出ると違約金を請求された
・特定の買手との交渉が決裂し、契約を残しておく必要がないのに「交渉中だから契約解除できない」と言われた
 
基本的には、最初の段階で仲介会社と締結した「仲介契約書」(場合によってはアドバイザリー契約書などという名前の契約書です)で取り決めした内容で契約解除についても対応します

 

この中では、一般的には、売手企業が倒産したり、経営状況が著しく悪化してM&Aどころではなくなってしまったケースなどを除き、双方の合意により解除できる条項にしていることが多いようです。

 

筆者が聞く合意解約事例はこんなところです。

・仲介会社が受託後、結局買手を見つけられず、売手としても売る意志がなくなったので解除
・特定の買い手と交渉が具体的に進んだが結局条件が合わず破談。その後、売手もM&Aを保留したい意向となり、仲介会社も他の買手がいなかったため、一旦契約は解除
・明らかに仲介会社の過失で、売手との信頼関係が崩壊したため解除

 

こういったケースにおいては、仲介会社が売手に対して特段請求をすることなく解除に至ることが多いようです。

 

交渉段階としては、買手企業への打診前であれば費用請求無く解除に応じる会社が多いようです

 

一方で、次のようなケースでは違約金などが請求されるケースがあります。

・売手の非合理的かつ一方的な都合で「やっぱり売るの辞めた」という申し出をした場合
・売手が当初伝えていた条件よりも、交渉が進むにつれ欲が出てきて、希望条件を変更したため破談になり、かつ、その条件では買手が見つからないくらいハードルの高い条件である場合

 

要は売手側都合で非合理的な理由がないケースです。

 

多くの仲介会社は、成功報酬型の報酬体系を取っているので、成約に至らなければタダ働きになります。専門家やコンサルタントが時間を使った上で、売手の気分でやっぱり辞めたとなるのは仲介会社的にもかなわん話なので、抑止力的に違約条項を設けているという会社も多いです。

 

仲介会社が無茶を言っているのか、売手側が無茶を言っているのかは冷静に判断する必要があります。

 

ここでは次のような「仲介会社がごねているケース」への対処法を記載していきます。

 

「まだ買手候補と交渉中だから」と交渉が継続していることを主張され契約解除できない

 

仲介会社が仲介契約を解除されたくないと時はこんな説明をしてくることもあります。

 

ここで重要なのは、「その”買手候補”というのは売主も知らされている先かどうか」「本当に交渉中かどうか」、という点です。

 

M&Aでは、買手候補に打診する前に、仲介会社が売手に「この買手に打診してよいか?」というのを確認します。この作業をネームクリア確認といい、売手から見て打診してほしくない相手(買手社長が売手の知り合いとか、バチバチの競合先とか)に打診をしないようにするために必要な作業です。

 

これを抜かりなくやっていれば、最低限どの買手候補に打診をしているのかは分かりますし、普通は、仲介会社がネームクリアした買手候補への打診の結果どうだったかを説明しますので、買手候補との交渉状況は常に知っているはずではあります。

 

ただ、こういった工程を怠る仲介会社もたまにいますので、そのような中で「買手候補と交渉中」と言われても「どの買手候補と?」という会社ですよね。そもそもネームクリアの工程を怠るのは情報管理の観点で仲介業者としてアウトです。

 

なので、こういうケースでは、

 

・どの買手候補に現在打診しているのか、また、その進捗
・交渉中の買手候補とはどういう話になっているのか
 ⇒買手の役員会が開かれるのが先なので待っているのか
 ⇒事業上のシナジーを検討するために調査・分析しているのか
 ⇒買手が質問事項のまとめているので待っているのか
・買手候補との交渉で、仲介会社で止めている事項はないか
・現在リストにある買手候補以外には買手候補は出せないのか
 

 

ということを明確にしましょう。
 
 
もし契約解除を希望するのであれば、現在交渉している買手候補のみを残して、他は打診しなくて良い旨、また、現在交渉している買手候補の検討が終了したら契約を解除する旨を伝えましょう

 

ちなみに一般的な買手であれば、初見の検討段階で特別な事情がなく判断に2か月も3カ月も要することは普通ないです。大企業の役員会も長くて1か月に1回はやりますし、筆者の経験的には決定権者に情報が伝わってから即答~2週間程度でアリかナシか程度の回答は出していただいている印象です。
 

 

 

「解約する場合は違約金が発生するから契約を残しておきましょう」と言ってきた

 

この違約金については、仲介契約書に記載があるのかどうかをチェックしましょう。

 

売主に非もなく、買手も連れてこず、交渉も始まらない、というケースで、違約金の話を出してくるのはそもそもの仲介契約書自体が一方的に不利なものになっている可能性があるので、あまりにも悪質な場合は弁護士に相談しましょう。

 

筆者がよく目にする仲介契約書では、売主が合理的な理由なくM&Aの検討を辞めた場合に違約金の支払義務が生じることが多いので、これよりも厳しい契約書はそもそも契約締結の時点で問題視しておくべき内容かと思います。

 

なお、違約金の具体的な金額や計算方法などは違約条項に書かれていない(単純に「〇〇したら違約金をもらいますよ」としか書いていない)ケースも多いため、実際に請求を受けた場合は、その計算方法について取り決めが無い点も議論するようにしましょう。

 

 

「解約しても着手金は返ってこないから契約を残しておく方が良い」と言われた

 

M&Aで請求される着手金は、いかなるケースでも返還されないものとして定義されていることが多いです。

 

M&A仲介会社が着手金を徴収する理由は、「具体的な買手が見つかるまでに発生する費用を回収したい」、「株価算定などを専門家に依頼するための費用を回収したい」というものなので、普通は絶対返さない、というスタンスで対応されるかと思います。

 

着手金については、契約締結時(着手金支払時)に注意するしかない内容と思いますが、もう支払ってしまった場合には、一度割り切り、着手金をドブに捨てたと思って他の仲介会社に切り替えて動くのも一つだと思います。理由としては動きの悪いコンサルタントにお願いしていたところで進捗が見込めないケースも多いからです。

 

まず第一に、着手金の発生する仲介会社を選ぶ、ということは「買手と交渉をしないまま払い損になる」というリスクを許容していることになるので、最初の契約時に慎重になるべきです。

 

アドバイスとしては、いきなり契約を解除してほしいという話をする前に、「他の仲介会社でもお願いすることも検討したい」という旨を伝えるほうが、今の仲介会社の動きが変わる可能性もあるので良いかと思います。

 

最近では経産省のガイドラインで、売主がM&Aを検討するときセカンドオピニオンを使うことを推奨しており、非専任での契約も一般的になりつつあることから、上記のやり取りで「専任の契約を結んだから他の仲介会社に声を掛けてはダメ」ということを言ってきた場合には、専任→非専任への契約変更を求めるのも良いと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

できれば任せた仲介会社でクロージングまでいけると良いですが、動きが悪いと思ったら仲介会社を変えることも検討してみましょう。
 
 
ただ、どんな仲介会社経由であっても成約に至らない売手企業というのも存在していて、「希望条件が高すぎる」とか「売手側の好き嫌いが激し過ぎる」など原因があることがあります。

 

成約しない理由については冷静に考えましょう参考までにこちらの記事もご紹介します。
【M&A対処法】なぜあなたの会社には買手がつかないのか?

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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