お悩み社長
本当です。
筆者が実際に案件をお手伝いしたときでも、他の業種と比べ物にならないくらい買手が手を挙げ、価格が吊り上がっていきました。
今日はそんなソフトウェア開発業のM&Aを取り上げてみたいと思います。
こんな方におすすめの記事です
・なぜ他の業種よりも高額で売買されるのか
・どうやってM&Aを進めると高値で売れるか知りたい方
それではいきましょう
ソフトウェア開発業はどのくらいの価格感で売却できるのか
高く売れる、といってもそもそもがどのくらいが安くてどのくらいが高いか分からないですよね?
ここでは、筆者の会社が手掛けた1つの会社を例に取り、どのくらいで売買されるのかを解説していきます。
例えばこちらの会社です。
・ソフトウェア開発業(受託50%、SES 50%)
・年間売上2億円
・年間営業利益2,000万円
・現預金5,000万円、金融機関借入0円、純資産5,000万円
・従業員20名(内、開発者15名)
※多少情報は簡略化して書いてあります。
いくらくらいで売却できたと思いますか?
結論から先にいうと、2億円で売却できました。
純資産が5,000万円もあったというのもありますが、それでも売却価格が売上規模と一緒というのは高額売却だと思います。
筆者の会社はソフトウェア開発関連企業だけではなく、食品や建設、機械関連の会社のM&Aもお手伝いしておりますが、他の業界ではこういう価格は普通まずつかないです。他業界の買手企業に、「希望価格2億円です」と伝えると「いやいや頑張っても1億円がやっとだよ」と言われることもおかしくない水準感です。
なぜ、こんなにもソフトウェア開発業が高額でM&Aされるのでしょうか?
理由は以下のようなところになります。
① 買手企業が多く、譲渡条件交渉で競争が生まれるため
② 他業界に比べ労働単価が高く、技術者を囲い込んだ際、買手グループへの将来利益貢献度が高いため
③ 上場会社でも、IT関連企業は収益力に対して企業価値が高く見積もられているため
④ アセットをあまり保有せず運営している会社が多く、M&A検討における減額要因が少ないため
①~③の理由についてみていきましょう。
M&Aで株価を算定するときに使う計算式はいくつかありますが、上の2億円でM&Aした例で使用したのは、「類似会社比較法」という計算式を使っています。
ここでは細かい説明は省きますが、「企業価値は、その会社が1年間に生み出す収益※の何倍か」という指標と用いて、「上場しているあのIT企業は〇倍くらいだから、今回M&Aするこの会社は〇倍ね」という感じで株価を計算する方法になります。
※これをEBITDAといいます
上の2億円譲渡の例では、この倍率(EBITDA)は7.5倍程度つきました。
他の業界で7~8倍などという倍率は普通付かず、3~4倍付けば中小企業では適正と言われたりしますのでその異常さは際立っています。
M&Aの買手との交渉を進める上で、たくさん買手がいれば値段が吊り上がっていくのはなんとなく想像できますよね?
「うちは5倍で買うよ!」
「他が5倍ならうちは6倍!」
「会長がこの会社を気に入ったから7倍出す!」
といってどんどん価格を吊り上がっていくイメージです。
ちなみに、仲介会社がふっかけて高い金額で買手に買わせるというのは利益相反ですが、複数の買手がおり、競合関係から自動的に金額が上がっていくのは問題ありません。
そして④の理由ですが、M&Aは検討を進める上で、買収監査(デューデリジェンス)という買手が売手を買う前に調査する、という作業があります。
これは会社の資産についても調査し、例えば「この土地、簿価では1億円だけど時価はいくらなの?」とか「在庫の中で不良在庫ないよね?」とかを見ます。
ソフトウェア開発業の場合、不動産は持たず賃貸で事業をしているケースが多く、在庫も普通存在しないので、こういった監査で減額される要因がそもそも少ないです。”人が資本のビジネス”ですからね。
なので、監査前後で価格が変動せず、高値のままM&Aが成立していくことになります。
それでは、ソフトウェア開発業のM&Aでの相場が高くなる理由は分かりましたが、実際に高く売却するためにはどんなアクションをすればよいのでしょうか?
高値で売れるケースとはどのように進めているのか
売手の立場であれば、実際にM&Aを考える場合、以下のフローで動くのが安全かつ良い条件が獲得できるのかもしれません。
(あなたの中で「妥当な株価」と「希望株価」を設定)
② あなたの会社の紹介資料(企業概要書)を作成する
③ できるだけ同時に、できるだけ多くの買手企業と交渉を開始
④ 買手企業には希望株価は伝えつつも、条件は「応相談」としておく
⑤ 各買手企業から意向表明書(概算価格条件)を出してもらう
⑥ その中で一番高い条件を選び、基本合意を進める
⑦ 買収監査中も他の買手候補は保留にしている状態でキープ
⑧ 最終条件が出てきたら、提示条件を飲むか他の買手候補に戻るか決める
ポイントとしては、
・「標準的な株価」と「背伸びした価格」をあなた自身が理解した上で交渉に臨む
・希望を伝えつつ、買手企業にまずは条件を出してもらう
・1社と最終交渉をしている間も他の候補先を繋ぎ止めておく
(最終合意するまではお断りしない。だから待たせないよう、できるだけ最初の提案のタイミングは合わせる)
ということです。
このフローであれば、上で説明した、M&Aの仕組み的には”競り”の状態に持っていくことができます。
もちろん、もっとドラスティックに、この日までに意向表明書を提出してください、と期日指定して買手を募る「入札方式」でM&Aの買手候補を募る方法もありますが、筆者はこれをあまりお勧めしていません。
というのも、買手企業の中には、「他と競るような案件は高値掴みするからそもそもエントリーしない」とか、「金額条件だけを求めるオーナーとは合わないからそんな会社買いたくない」というポリシーの会社も少なくないからです。
こういったところには気を配り、丁寧に対応しておくことが大切になります。
ちなみに「妥当な株価」と「希望株価」をどうやって算出するか、ですが、筆者としては「ソフトウェア開発業」の場合、過去の反応から、大体このくらいでみています。
(あくまで個人の偏見に基づくイメージですが)
類似会社比較法でEBITDA×3~5 :中小企業として妥当な株価
類似会社比較法でEBITDA×6~7 :希望株価としてまあ許される範囲
類似会社比較法でEBITDA×8~ :M&Aに慣れている会社ではまず出さないバズった金額感
買手企業によっては普通に「高い!却下!」となり得る希望金額
正直、仲介会社を入れずにこの交渉をやるのはしんどいと思います。
仲介会社の起用も検討したほうが進めやすいとは思いますが、最近はただただ高値で売れますと煽って受託しようとする仲介会社も増えてきていますので信用できる業者かどうかすら判断に困ります。同様の案件の成約経験があり、本音ベースで話をしてくれるコンサルタントを探しましょう。
最後までお読みいただき有難うございました。