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「不動産M&Aがしたい」と思っている方が勘違いしているポイント

お悩み社長

いまさら聞けないんだけど、不動産M&Aって何?

 

最近不動産M&Aもちらほら聞かれるようになってきました。

 

M&A業界でも、「不動産仲介会社と連携して不動産M&Aを成立させました!」みたいな事例が聞かれたりします。節税スキームでもあるため、マネーリテラシーの高い不動産業者なども関心を持っていることも少なくないようです。

ただ、不動産M&Aを勘違いしている人もちらほら出てきたので取り上げてみたいと思います。

 

 

今日の記事を読んで頂きたい方

・不動産M&Aがどういうものを指すかよくわからないけど興味がある方
・不動産M&Aがそんなに簡単でない理由を知りたい方

 

それではいきましょう!
 

 

そもそも不動産M&Aとは

 

不動産M&Aとは、「不動産を保有している会社を売買すること」です。

 

普通、不動産を売買する時には、不動産仲介会社が間に入り、売手から買手に不動産の所有権を移動させて、その対価としてお金をもらう、というようなことをします。

 

一方、不動産M&Aは、売手から買手に、不動産を持っている会社の株式を移動させて、その対価としてお金をもらう、というスキームになります。

 

要は、不動産の所有権が動くか動かないかの違いがあるので、税金のかかり方が全く異なり、税金を浮かせることができるわけです。

 

そもそも株式を譲渡するということについてはとっても税制優遇されており、その売却益がどんなに大きくても個人の譲渡益に対する税率は20%程度で済みます。

 

普通に不動産を売却したら、法人か個人かにもよりますが、株式譲渡でかかる税率以上にはなります。短期売買とかなら個人でも40%近く取られますし、法人なら売却益に対して法人税等がかかるので30%以上といったところでしょうか。

 

不動産はそもそも金額も張るのでばかにならないですね。

 

あとは、不動産の所有権も動かないので、不動産所得税とか登録免許税などもかからないメリットもありますし、仲介手数料を取ってみても、不動産会社が取る売買の仲介手数料は物件価格の3%程度ですが、M&A仲介会社が取る仲介手数料は純資産に対しての5%とかだったりするケースもあるので、負債も法人に残して売却するようなケースでは仲介手数料もグッと安くなります
※ただし、総資産で仲介手数料を計算するM&A業者もいるので、その場合はM&A仲介手数料の方が高くなるケースはあります。

 

メリットばかりなので、不動産M&Aを積極的にやっていこう!という人達も増えているわけです。

 

ちなみに、以下のようなM&Aは「不動産M&A」ではなく、「不動産業のM&A」ですので、ちょっと違います。

・不動産取引業者(売買、仲介)のM&A
・不動産管理会社のM&A

これらは不動産を持っていることもありますが、あくまで事業会社ですので、従業員なども会社とともに引き受けるという覚悟で臨む一般的なM&Aとなります。

 

余談ですが、一言で不動産といっても、不動産M&Aなのか、不動産売買会社のM&Aなのか、不動産仲介会社のM&Aなのか、不動産管理会社のM&Aなのか、でバリュエーションも違えば買手企業も毛色が変わるので、「不動産のM&Aが得意」というコンサルタントがいたら、どのようなM&Aの実績があるかをちゃんと確認するようにしましょう。

 

 

不動産M&Aがそんなに簡単でない理由

 

前述したような税制面のメリットがあるのであれば、「これからは不動産M&Aだ」となりがちですが、それほど簡単ではありません。

 

それは、一般的な不動産取引について取引するのは「不動産」、不動産M&Aで取引するのは「株式」ですので、買う前に調査しないといけない工程は後者の方が大変になるからです。

 

不動産売買では、権利関係や瑕疵が無いか否かなどある程度見るべきポイントがありますが、不動産M&Aで株式を買い取る場合、それらに加え、例えば、「本当に売主が株主か」とか「きちんとその会社が納税をきちんとしているか」など会社にまつわる事項は全部見ていく必要があります

 

また、M&Aというのは、ある程度手順があり、一般的な会社でもスムーズに行って半年かかったりします。不動産M&Aは比較的その手順を簡素化はできますが、それでも一般的な不動産売買と比べ時間がかかるのが現状です。

 

つまり、不動産屋としては、売却物件を流し始めるタイミングで、不動産M&Aの買手打診を始めていたりすると進み方のスピードが全然違うために、一般的な不動産売買で手を挙げてくれた方を待たせてしまったり、機会損失を生むことにも繋がるわけです。

 

収益不動産を扱う不動産業者からすると空室は悪なので、タイミング・スピード感というのはM&A業者よりもシビアな気はします。

 

とはいえ、M&Aをやったことないけど不動産M&Aをやってみようと、不動産売買感覚で不動産業者がスピーディにM&Aをやってしまうと後にトラブルになる可能性も高いので、まだまだ不動産業者とM&A業者が連携して進めていくようなフェーズだと思います。

 

あと、補足ですが、不動産M&Aを検討している買手企業は、不動産売買の買手と比べるとまだまだ圧倒的に少ないように思いますので、不動産M&A一本で買手探すとなると物件によってはかなり苦戦することも理解しておきましょう。

 

 

結局、不動産M&Aって使えるの?

 

筆者としては、今後不動産M&Aの買手企業は増えていくとみていますので、やる価値は十分にあると思います。

 

なので、第一段階として売ろうとしている物件の相場を想定し、その金額に税メリットを少し上乗せした金額を希望金額として不動産M&Aの買手を探し、売れなかったら第二段階として一般的な不動産売買の買手を探す、というあたりがまずは良いかと思います。

 

不毛な時間になる可能性はありますが、もし不動産M&Aで売れればメリットありますし、売れなくても普通の不動産売買をすればよい、ということです。

 

ただ、不動産M&Aをやるためには、不動産を持った売却用の法人を作っておかないとできないので、ある程度最初から不動産M&Aも視野に入れておく必要はあります。

 

M&A業界にいる筆者としては、よく会社分割を用いて不動産管理会社を作り、しばらくしてから不動産M&Aで売却するというスキームを行っていますので、不動産入りの法人を作る方法として参考程度に聞いていただけばと思います。

 

一般的なM&Aで事業会社を売却するときに、「事業は興味あるけどアセットが重すぎて買収できない!」、という買手企業の事情をうかがうことがよくあります。古い会社だと事業に関係ない保養地とかを持っていることがあるので、買手からしたら、事業は欲しいけど保養地はいらない、というケースですね。

 

こんな場合に、会社を分割(新設分割型分割)して、新たに保養地だけ持っている法人を切り出すわけです。

 

これでアセットが軽くなった事業会社はM&Aで売却することができ、売主の手元に残った保養地だけの法人も別の買手に不動産M&Aで売れる、ということです。

 

こういった方法も資産状態や使い方によっては有効な手段になります。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

不動産M&Aは、不動産の売買を考えている方や不動産業者の方は知っておいて損が無いスキームだと思います。

 

なお、不動産M&Aをしたいときの相談は、不動産業者とM&A業者の両方に話を聞いた方が良いですが、行為自体はM&Aなので、進め方自体はM&A業者の認識を参考に検討したほうがよいかと思います。

 

本記事についての疑問や取り上げてほしい内容があれば下のフォームよりお問合せ下さい。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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