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人材派遣会社に「資本提携しませんかDM」がよく届く理由と注意点

お悩み社長

うちの会社(人材派遣会社)によくM&A仲介会社からDMが届くんだけど・・・
 

 

以前掲載した下の記事で、「資本提携しませんかDM」は結局M&A仲介会社の売り文句である、と説明しました。

「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実

 

では、こうしたDMが人材派遣会社によく届くのはなぜでしょうか?

結論としては、人材派遣会社はM&Aがしやすく、M&A仲介会社も短期間で成約まで持っていける(収益化する)からです。

ただ、人材派遣業のM&Aには注意すべき点がいくつかあるため、DMが来たからという理由でその仲介会社に依頼するのは危険かもしれません。

 

今日はこの話題について説明していきます。

 

今日の記事を読んでほしい方

・DMが来ていて対処に困っている方
・人材派遣業で会社を売ろうか考えている方
・人材派遣業の良いM&A仲介会社の選び方

 

それではいきましょう!

 

人材派遣業でM&Aが盛んな理由

 

人材派遣業と言っても、事務や警備、技術系など色々な種類がありますが、どの職種であっても比較的M&Aが盛んに行われています。

 

これは、次のような理由で盛んになっていると考えられます。

・人手不足(派遣社員の確保)
・人材派遣業は価値判断やシナジーが分かりやすい
・M&Aのストロングバイヤーが多い
・特定労働者派遣の廃止

 

新型コロナ前ではどの会社も人手不足でした。2019年の有効求人倍率年平均は1.6と高水準で、コロナ後の2020年の年平均でも1.18と1を上回っています。

つまり、多くの会社で人手が不足しており、人材を確保するということが多くの買手企業にとっては最重要課題であり、M&Aを積極的に推し進める動機になっていたわけです。

 

さらに、人材派遣の大手企業は皆M&Aのストロングバイヤーと言えるほど、どの大手企業もM&Aに積極的であることは公表されている中期計画等でも明らかですし、そのような事情を知っているM&A仲介会社であれば、とにかく案件を受託すればそういった会社に持っていけば検討してもらえる、とせっせと案件を探すことになるわけです

 

日本の会社は特にそうですが、買手がM&Aを検討するとき、「売手の会社の従業員がきちんと付いてきてくれるかな」とか「社風がマッチするかな」という点に非常に敏感です。

普段人材を扱っている人材派遣会社であれば、こういった点についてアレルギーが少ないですし、そもそも人材派遣業という業種にあまり社風は関係ありません(派遣社員は当然派遣されるので派遣元の会社というよりも派遣先の社風を気にするから)。

 

また、派遣単価を見れば、シナジー効果が金額としてかなり分かりやすいのも事実です。

例えば、売手の派遣単価の平均が時給1,300円だとして、買手の持っているクライアントの派遣先が時給1,500円だったなら、派遣先の切り替えを順次行うことで、時給+200円の利益が買収後についてくるからです。

 

最後に、規制関連です。

特定労働者派遣が廃止され、一般労働者派遣を取るために純資産や現預金、事務所の広さなどの制限をクリアする必要が出た際、それがクリアできない小規模人材派遣会社が、廃業やM&Aを迫られる時代がありました。その頃から結構小規模人材派遣をターゲットにしたM&Aが行われてきています。

 

また、SESなどでも、現在は一般労働者派遣を取らなくても、準委任のようなグレーな範囲でSES事業ができますが、いづれ規制が厳しくなった時に上の特定労働者派遣のような展開になることは予想できる為、SES関連でも今後M&Aが盛んになってくるかもしれません

 

色々な事情が相まって、人材派遣業でM&Aが盛んに行われている訳ですね。

だから、M&A仲介会社がDMや電話でバンバン営業をかけてくるということです。

 

 

人材派遣業のM&Aの注意点

 

これは他の業種でも言えますが、M&Aが盛んで、M&A仲介会社にとっても人気業種と言われる業種では、売主の気を引くために、あえて株価算定で高い株価を見せて受託しようとする仲介会社が多いので注意してください。

そうした仲介会社の口車に乗って仲介契約を結んでしまうと、最終的にM&Aが成約できないだけではなく、本来は有力な買手となる会社の検討の芽を潰してしまう可能性があります。この点については下の記事でも記載しておりますのでご参考下さい。

「高い株価算定を出すM&A仲介会社には逆に任せない」のが正解な訳

 

また、人材派遣業界では「事務・オフィスワーク系」や「軽作業系」や「技術系」、技術系の中でも「建設系」や「IT系」、IT系の中でもソフトウェア開発の「受託系」や「SES系」・・・など分野が分かれています。

これは上場している大手人材派遣会社でもそうですが、人材派遣には明らかに職種の色があるので、売手企業がどういった色の人材派遣の買手に持っていくべきかを考える必要があります

また、人材確保を考えてM&Aを検討しているのは人材派遣会社だけという訳ではないので、売ろうとしている会社にどういった人材がいるかで、どの買手の人材不足ニーズに対応できるかも分析する必要があります。

 

筆者から見ると、多くの仲介会社が「とりあえずIT系の人材会社を受託しよう!」と、かなりざっくりした目的でDMを送っていたりしているように思えるので、返信をもらったら全然想像と違うことをしている会社だった、なんてことも多いと思います。

 

事実、人材派遣会社の社長のところに届いたDMを見ると、「このDMってなんでウチの会社に送ってきたのかな?」と頭をかしげるような内容になっていることも多々あります。

 

例えば、売手の会社では業務支援系のソフトを開発しており、そのソフトのユーザー利用料がメインの売上で、ごく一部人材派遣をやっているだけなのに、「御社の人材派遣事業について買いたいという買手がいて・・」という内容のDMとかです。何がメインの会社かもわからずにDMを送っているパターンのやつですね。

 

DMの内容がちんぷんかんぷんなのは論外ですが、もし仲介会社と面談する機会があれば、「自分の会社のポジショニングをきちんと理解しているか」、「取引先はどんなところだと思っているのか」、「人材派遣業の雇用体系やビジネスモデルをそもそも理解しているか」「過去どういった内容の人材派遣関連のM&A実績があるか」などは詳しく聞くようにしましょう

 

最後に、選ぶべき買手企業についての注意点です。

 

人材派遣業界であれば、比較的小規模の会社でも大手の上場している人材派遣会社が買収することも多いです。ただし、こうした会社は、毎年何件もM&AをしているようなM&Aのプロなので、法外な株価をつけて買収することはあまり無く、売主の目線が高いまま買手企業に持っていくと見事に玉砕します。

筆者が実際に人材派遣業界のM&Aを進める時には、こうした大手派遣会社も入れつつ、その他の事業会社も織り交ぜて交渉を進めますので、売主にもある程度相場観を感じながら相手選びをすることができよう配慮します。

大手上場会社とM&Aできる、というと舞い上がってしまう方もたまにいますが、こうした買手企業の背景や選び方も理解し、そういう部分に適切にアドバイスできる仲介会社を選びましょう。

 

 

いかがでしたでしょうか?

人材派遣業はDMも多い分、依頼する仲介会社についても考える部分が多いかもしれません。

是非、信用できる仲介会社を探して、満足いくM&Aを実現したいものです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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