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「相手と連絡取れなくなった?!」 実は多い音信不通M&Aの実態

お悩み社長

M&Aのやり取りをしている相手方と急に連絡取れなくなったんだけど・・

 

こうしたご相談がたまにあります。

 

筆者は仲介業をしておりますので、売手企業さんとも買手企業さんのどちらともやり取りをしますが、音信不通になるという状況は過去何度もありました。

 

納得して進めているはずなのに急に音信不通になるというのは、交渉が進んでいるのであれば相手方にも迷惑をかけますし、一発で信用を失う行為ですので絶対やめてほしいところですが、今日は相手方が音信不通になる実態についてお伝えできればと思います。

 

連絡が取れなくなる買手とは

 

買手と連絡が取れなくなる、というのは、だいたい「買うつもりが無い」か「買う気が無くなった」という時に起こります。

 

筆者は仲介の立場で案件紹介をするケースもありますが、最初は「ノンネーム情報で興味があるから」とNDA(秘密保持契約)を締結した上で情報開示するのですが、その後音沙汰がなくなります。

 

ひどい会社だと興味あると言っておきながらNDAの案内の時点で音沙汰がなくなります。。(一体何がしたかったのかと思いますが)

 

こちらから何度も連絡してようやく繋がって事情をうかがうと「この案件は興味がない」「見送りとさせていただきたい」といわれることがほとんどです。

 

売手企業さんが買手企業さんと直接やり取りしているケースでも、資料を一式提出してから、2カ月経っても3か月経っても何の連絡もないということもあります。

 

筆者の経験上、そのM&Aを進めたいという意欲があるにも関わらず数カ月音信不通というのはよっぽどのことが無いと起こらない気がするので、あまり待たされる場合には事情を聞いて、その連絡にも音信不通のようであれば切り替えて他の買手を探索するなどを考えた方がよいのでは、と思います。

 

直接交渉をしている場合、売手側としては「この資料機密資料だけどM&A検討の目的だけだよね」という信用のもとで買手側に資料を渡しているところもあるので、資料を渡したタイミングで音信不通になった、となれば、「この会社、もともとM&Aが目的じゃなかったんじゃないか」と疑心暗鬼になる人もいたりします。

 

実際、情報収集の目的でM&A検討をしている人がいないとは言い切れないと思うので、初期段階ではあまり込み入った情報は出さない方が無難でしょう。

 

例えば、顧客リストとか、従業員情報とか、ノウハウに関する情報などです。

 

顧客の横取りとか従業員の引き抜きといったリスクを減らしたいのであれば、同業であれば特に、初期的には基本合意できる程度の情報で留め、基本合意書に競業避止の項目を設けて、買収監査時に詳細情報を出す、など工夫ができます(ただし、この辺の匙加減はM&Aの実務に不慣れだと難しいかもしれません)。

 

一方、基本合意以降に音信不通になるケースというのは筆者も経験が無いのですが、これは買手側が買収監査で費用を捻出するという事情もあるかと思います。

 

よりM&Aが具体的になってきた段階で行う買収監査では、会計士や弁護士などに業務を委託するので、その費用を負担している分、交渉が流れてしまうようないい加減に対応できなくなってくる抑止力が働くというような効果です。

 

これは仲介手数料で着手金や中間金を取るケースもそうなのですが、お金が絡むと買手は真剣になるという点は無くはないです(だからと言って着手金や中間金を積極的に取るべきとは言ってません)。

 

買手の中には、マッチングアプリのように気に入らなければ流して終了、という感覚で譲渡案件を選別している方もいたリするので、「理由もなく断って!」と思う売手とはどうしても折り合わない部分もあります。

 

本来、お見送りの場合でもきちんと理由も添えて連絡をいただける買手の場合は、仲介会社などもより買収ニーズを理解できるようになってくるので、自然とニーズにマッチした譲渡案件が集まってくるようになるものですが、あまり買収ニーズを深堀しない仲介会社が何でもかんでも紹介していることもあるので、買手側も興味のない案件にそこまで労力掛けたくない、と思ってしまうものかもしれません。

 

業界としてあんまりいい傾向とはいえませんね。

 

売手からしてみたら、音信不通になるような相手とは普通の取引すらできないかと思うので、変に長引かせず、切り替えて新しい買手を探してみましょう。

 

連絡が取れなくなる売手とは

 

売手と連絡が取れなくなる、というのは、相手が買手の場合は「他の買手と交渉を進めている」「M&Aの検討を辞めた」「問題が発生した」などが考えられます。

 

一般的には、売手は基本合意までは複数の買手候補先と交渉していたりしますので、基本合意までは他との交渉によって進むペースが変わったり連絡頻度も変化します。

 

例えば、買手A社とはトントン拍子で進んで金額提示まで済んでいるものの、買手B社とはじっくり何度も面談して金額提示までどのくらい時間がかかるのか分からない(でも感触は良い)ようなケースでは、A社を待たせてB社の提示を待ってみる、ということはよくあります。

 

A社からしてみたら「全然連絡来ないな」と思うこともあるでしょう。

 

A社が売手に「今どうなっていますか?」と売手に聞いて何も返事が返ってこなければ音信不通だと思うこともあると思いますし、A社の意欲が冷めてしまうこともあるでしょうから、売手がいざB社から金額提示があったけどA社より条件が悪かった、となったとしてもA社に切り替えて進めることが難しくなるケースもあります。

 

この辺は他の買手とやり取りしていることをきちんと伝えた方が誠実な対応と言えるでしょう。あと、そもそもあまり買手への提案時期をバラバラにせず一気に提案した方が待たせることも減るので良いと思います。

 

また、売手側の場合も「やっぱりM&Aするのやめようかな」と心変わりすることもあります。

 

理由は様々なのですが、例えば「業績が回復してきてやっぱり自分でもう少し経営を続けたいな」「このくらいの提示額だったら自分で今まで通り稼いだ方がいいな」といった個人的な考えであったり、あるいは「継がないと言っていた息子が急に継ぎたいと言ってきた」「取引先と揉めてM&Aどころではなくなった」などということなどがあります。

 

買手からしたら、売手がただ最初の決意が甘く「やっぱりやめた」くらいの対応をされたら、やはり納得いかない部分もあるかと思います。仲介会社としても完全成功報酬などで対応していたら「正直勘弁してほしい」という感じです。

 

また、買手側に買収監査などでM&A検討のために既に支出があるような場合では、売手に対して損害賠償を請求されるという事例も無くはないので、売手としては交渉終盤で不義理な形で一方的に交渉を終わらせる場合にはリスクが伴うと思っていた方がよいかもしれません。

 

仲介会社としても売手と連絡が急に途絶えることがあります。

 

筆者の場合、業者選定の段階で音信不通になったら「他の仲介会社で進めるのかな」とか「M&Aを進める決意に時間がかかるのかな」と思ったりするものですが、買手候補先と具体的に話を進めている最中に連絡が途絶えると何かあったのかなと心配になったりもします。

 

以前、筆者が交渉終盤で急に連絡の取れなくなった売手社長は緊急入院していたこともありました。。

 

これは特殊な例かと思いますが、仲介会社としてもあまりに音信不通になるような売手は信用できなくなってくる(当然、売手も音信不通になる仲介会社は信用できなくなってくる)ものだと思うので、営業する側される側という関係でなく、信頼関係を築くのが大切かと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

M&Aを検討するのも結局人なので、色々心替わりしたりするのはあるとは思いますが、誰かに迷惑をかけるような辞め方だったり、一方的な自己完結は好まれません。

 

どちらかが連絡して相手がそれに反応しない、というのはコミュニケーションとして成立してないですし、相手に変な誤解を与えることも多々あるので気を付けたいところですが、運悪く自分がやり取りしている相手がそういうタイプであれば、自分の許容範囲を超えるくらいのところまでいったら他の相手と交渉するという切り替えも大事です。

 

M&Aを初めて行うと「M&Aは色々検討することもあるだろうしこんなものかな」と納得してしまいがちかもしれませんが、無駄な時間を割かないためには、きちんと連絡を密にするというのも大切かと思います。

 

ご参考いただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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