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モラルの低いM&A仲介会社の問題行動②

 

今回は前回の続編でモラルの低いM&A仲介会社の問題のある行動について取り上げてみようと思います。

 

念のため、前回の記事もこちらに貼っておきますので最初から読みたい方はこちらもご参考下さい。

モラルの低いM&A仲介会社の問題行動①

 

ここでは同業の中で話が出ているような問題行動について触れ、M&A業界のコンサルタントの中でも「ヤバい仲介」とされる人がどんなことをしているのか背景も踏まえてお伝えしていきたいと思います。

 

M&Aで会社を売却しようという方の大半は初めてM&Aに取り組まれると思いますので、どんな行動が同業の仲介会社からみてのおかしな行動かを見抜くのはとても重要になってきますので、是非最後までお読みいただけると嬉しいです。

 

それではいきましょう!

 

既に仲介契約を締結している案件にゴリ押ししてくる他の仲介会社

 

最近割とこういう仲介会社も増えてきています。

 

「なかなか案件受託できないから、新規で会社を売却したい人を探すのではなく、他の仲介会社で受注している案件を取ってしまおう」という発想ですね。

 

例えば、買手が見つからずにっちもさっちもいかない案件なのであれば他の仲介会社に切替えて進めるのが当事者としてもよいと思いますが、普通に進んでいる案件に対して変な吹き込みをして既に締結している仲介契約を解除させようとする者もいるので注意しないといけません。

 

「弊社が紹介できる買手の方が高い金額で譲渡できます」

とか、甘い言葉をささいてきたりしますが、買手に打診をしてみないと高い金額で譲渡できるかどうかなんて誰にも分からないので、安易に信じてはいけません。

 

成約しないと仲介手数料が発生しない、いわゆる「完全成功報酬」の仲介会社であれば、何度仲介会社を替えても金銭的な実害は無いとは思いますが、今契約している仲介会社との契約違反になってしまわないかはきちんと確認した方が良いでしょう。

 

普通、仲介会社の場合、仲介契約に「専任契約」なのか「非専任契約」なのかは明記されています。

※1社の売手に対して仲介会社が1社なのが専任、仲介会社やその他のアドバイザーが複数つくのが非専任

 

専任契約なのに他の仲介会社と同じような契約を結ぶのはもちろんアウトですが、仲介契約は結ばないまでも、その仲介会社の紹介で買手企業と交渉することも専任契約の仲介契約に抵触しますので注意しましょう。

 

世の中には、他の仲介会社と仲介契約を締結していても、「社長、とりあえず水面下で弊社の買手と会ってみませんか」みたいな打診をしてくる仲介会社もいます。

 

こういうことをした場合、契約違反のリスクがあるのは常に売手です。けしかけた仲介会社が責任を負ってくれるわけではありません。

 

なんならこの他の仲介会社が変な動きをした場合(例えば、情報漏洩して、今交渉をしている買手と揉めてしまうなど)でも、なんにも責任を取る事なく、逃げに転じる仲介会社もいます。

 

良い条件で会社を売りたいという気持ちは分かりますが、きちんと筋を通して動かないと思わぬリスクを負うこともある事を覚えておきましょう。

 

 

取引相手やそのアドバイザーを批判する仲介・FA

 

これはコンサルタントの性格みたいなところもありますが、あまり経験値が無い割にプライドが高い系のコンサルタントだとこういうことになったりします。

 

要は、「自分が悪くない」ということを言いたいが為に、M&Aの取引相手方を悪くいうコンサルタントですね。

 

例えば、仲介者がいい加減なタイムスケジュールをしていて、売手からの資料の提出が遅くなった時に、買手に対して「売手の資料の出が悪くて・・」と説明するようなイメージです。

 

M&Aでは、売手と買手が直接やり取りをしないということをいいことに、相手方に正しくないことを伝えることができてしまいます。

 

そういうことをするコンサルタントは、「常に自分は完璧なことをしている」と思いたかったり、「自分の非になることで仲介手数料を減額されたら嫌だな」と思ってそういう対応をするものですが、単純にM&A仲介者としては未熟な部類です。

 

M&Aというのは基本的に当事者である売手と買手の信頼関係が崩れた時点で破談になります。

 

それゆえ、成約して初めて商売になる仲介者にとっても、売手と買手の信頼関係を壊すようなことは何のメリットもありません。

 

筆者も元々大手の仲介会社にいましたが、こういう売手と買手の為ではなく「自分のコンサルティング」を最優先してしまうコンサルタントは一定数います。当然、お客さんより自分を優先してしまうので、成果も出ず、会社としてはお荷物社員になります。

 

でも、何度注意しても治らないので、どちらかというと性格上の問題だなと筆者は解釈していますが、そんなコンサルタントもM&A経験者ということで他の仲介会社に転職することで、世の中では立派な肩書で営業していたりもします。

 

こういうコンサルタントに担当されてしまうと、お客さんの立場としては本当に不幸なんで、「自分の非を認めない」性格を感じたら警戒するようにしましょう。こういう性格は最初はむしろ自信があって頼りがいがあるように見えてしまうので見極めが難しいかもしれませんが。

 

 

ちなみに、仲介ではなく、売手も買手もFAが付くケースでは、片側のFAが相手側のFAを批判することもあります。

 

FAが介入する場合は、前提としてアドバイザーがクライアントの為だけに戦うという構図なので、FA同士がやりあうことと売手と買手の信頼関係とは本来別の問題ですが、そのFAが言っていることが合理的な内容なのかどうかは常に冷静にみた方が良いです。

 

先程の経験値が無いけどプライドは高いコンサルタントの場合、ただ相手側のFAと売り言葉に買い言葉でギクシャクすることもあったりするので、これは非常に危険で、M&A取引にも悪影響が出る可能性もあります。

 

筆者が以前対応したFA案件でも、相手側のFAがまさにこういうタイプだったので非常に苦労しました。。

 

当事者としては間に入る人が多くなる分取引の相手側が本当はどう思っているのかが分かりにくくなってしまうので、そもそもドライに条件交渉してM&Aしようという方でなければ、FAを選ぶのはミスマッチになってしまう可能性もあります。

 

仲介でもFAでも変なコンサルタントは使わない方が良いのは当然ですが、それぞれの交渉イメージをきちんと理解した上で、どちらが自分のしたい交渉に合っているか考えるようにしましょう。

 

 

片側に著しく不利な内容を平然と依頼してくる仲介会社

 

これも仲介会社としての問題行動です。

 

最近よく聞くのは、「まだクロージングしていないのに、従業員にM&Aの話を公開する」よう促す仲介会社です。

 

株式譲渡の場合は、包括的に雇用契約も買手に引き継ぐ形になるので、通常はクロージング(株式譲渡、資金決済)をした後に従業員などにM&Aをした旨を開示します。

 

M&Aは最終契約を締結していようが最後の最後まで白紙になるリスクはあるので、「従業員にM&Aの話をした後、白紙になる」という売手にとって最悪のケースを回避する為、従業員への開示はM&Aの成就を確認してから行うよう段取りを組むよう促すのが仲介者の役割です。

 

M&Aを行うにあたって買手は「従業員が辞めちゃったら困るし、M&Aする前に意思確認してほしいな」と思うものですし、売手は「従業員に内緒で譲渡しちゃっていいの?」と思うのは自然な感情ですが、その流れに任せて、売手がいいなら事前に従業員に対して情報開示してしまうよう促してしまう仲介会社は問題です。

 

情報開示については常に最悪の事態を考えて双方にきちんと理解してもらってから動いてもらうのが大前提なので、そういった説明ができない仲介会社を使うのはリスクでしかないです。

 

知識と経験が未熟でメッセンジャーボーイ的に動く仲介会社はこうなりがちなので、最初の段階できちんと見抜くようにしましょう。

 

実際のところ、売手も買手も紳士的であれば、M&A仲介は実際メッセンジャーボーイ的に動いていてもきちんと成約することもあるので怖いところですが、こういうどちらかが致命的なリスクを負う可能性のある瞬間というのはあるので、そういう場面できちんと仲介者が立ち回れるかというのが重要になってきます。

 

 

ちなみに、従業員に株主がいたりするケースについては、ちょっと話が別です。

 

株主はM&A取引の当事者でもあるので、事前にM&A検討チームに入ることもありますが、持分や会社での役割などによっても絡ませ方も異なります。

 

この辺も、オーナー家族が100%株式持っている案件しか経験の無いコンサルタントと、従業員持ち株会で従業員がそれなりに株を持っている案件を経験したコンサルタントでもアドバイスの正確さが異なったりしますので、過去携わった案件についてもきちんと確認し、反対株主に対する対策やそのリスクについても知識があるか聞いてみるようにしましょう。

 

 

ここでは「まだクロージングしていないのに、従業員にM&Aの話を公開する」よう促す行為についてお伝えしてきました。

 

他にも「最終契約書で補償上限を定めないことを一般的であると説明する」とか「詰めの甘いアーンアウト条項を飲ませようとしてくる」とか、将来的に揉める可能性が高い事項を目先の成約の為に平然と飲ませようとしてくる仲介会社もいるので注意してください。

 

成約ありきでノルマに追われているとそういうことをする動機は常に仲介会社にはあるわけなので、どういう想いで・どういうスタンスでM&A仲介業をしているかも共感できる仲介会社を使うのがいいかもしれないですね。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

仲介会社やコンサルタント個人の事情で、売手や買手が不利益を被るような問題行動はまだまだあります。

 

仲介会社側の都合や利益、という背景を理解するとどうしてそうなるのかが良く分かることも多いですが、よく分からないM&Aでそこまで調べるのも大変だと思いますので、本当に知識と経験があり信頼できそうな人を探す、ということが重要かもしれないですね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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