お悩み社長
事業承継やM&Aについて、民間の会社は手数料も高額で基準もよくわからないし、何よりも怪しい。だから、もし公的な機関で相談できるところがあれば、その方が安心して話せる。という方、意外と多いのではないでしょうか?
そこで本日は、公的機関で相談に乗ってもらえる窓口を紹介したいと思います。
日本は来たる大廃業時代に先駆けて、公的なサービスとして「引継ぎ支援センター」(現在は、「事業承継・引継ぎ支援センター」)という相談窓口を商工会議所に設置しています。
■事業承継・引継ぎ支援センター
参考 トップページ(外部サイト)事業承継・引継ぎ支援センター
この引継ぎ支援センターでは、「後継ぎがいないけど会社を残したり従業員の雇用を守りたい」といういわゆる事業承継のサポートをしてくれています。
ここは、”相談所”という感じで、株価を算定することは公的機関の為NGで、交渉をがっつりサポートしますという感じではないですが、手数料などは一切かからず、利害関係もないので売手よりに相談に乗ってくれます。
相談員は、その地域で会計士や税理士、司法書士をやっている先生だったり、中には銀行のOBをやっていたという方などもいます。彼らは国からお金をもらっているので、相談者からお金を徴収することもないので、かなりフラットな意見がいただけることが多いと思います。
「お国の政策って微妙な政策が多いよね」と仰る方も多いですが、この引継ぎ支援センターについてはよい取り組みだなと筆者は思います。
M&Aは案件の規模に関わらず仲介にかかる工数は一緒という側面もあるので、中小企業の中でも大きな会社(年商数億以上くらいのイメージ)に仲介会社の営業が集中します。そうなると、年商1億円以下の規模の会社でM&Aが浸透しない、ということになります。
日本には従業員が概ね5名以下程度の小規模な会社が全体の9割程度を占めるのですが、、
実際に後継者がいない会社の多くは、そういった年商1億円以下の規模の会社なので、何も支援しないとそのくらいの会社がバタバタ廃業していってしまう訳です。
ここは市場原理に任せず公的機関でカバーするのがよい部分で、実際良い働きをしています。
ただ、筆者の感覚では、どんなに小規模の会社でも最初から最後まで動くアドバイザーがいないとM&Aは難しいかと思うので、そこは民間のM&A仲介会社も関わる必要がある部分と思います。
・公的機関ではM&Aの仲介手数料を請求されることは無い(これは安心!)
さて、少し前置きが長くなりましたが、引継ぎ支援センターに相談するとどうなるなるか、を見ていきましょう。
各引継ぎ支援センターによって対応方針は若干異なりますが、こんな感じで進みます。
※引継ぎ支援センターは各都道府県に1か所(東京は2か所)設置されているので、基本的には会社が所在している都道府県のセンターに相談するのが一般的です。
② 会社の状況の相談、相談員からM&Aなどの進め方などについての説明
③ 第三者へのM&Aを希望する場合は、引継ぎ支援センターへデータベースへの登録の為に決算書などを提出
④ データベースに登録している買手企業からのオファーがあったら引き合わせ
もし、仲介会社へお任せすることも検討しているようであれば、データベースを見て問合せしてきた仲介会社と面談
⑤ 紹介された買手や仲介会社と話を進める
(ここまでくると引継ぎ支援センターはあまりタッチせず、何か相談事があれば、セカンドオピニオン的に相談できるイメージでしょうか)
相談者の会社名や決算書なども開示するのですが、情報漏洩的な部分は公的な機関なので安心して提出したらよいと思います。
※引継ぎ支援センターは、買手企業やM&A仲介会社にもいきなり売手の会社名を伝えるようなことをせず、必ず、秘密保持義務を情報受領者が負うような書面を提出し、情報開示する流れになっています。もちろん、引継ぎ支援センターのデータベースというも会社名が特定されない程度の情報なので、そこから会社名が分かることはありません。
引継ぎ支援センターは、何が何でも成約させよう、という機関ではないので、相談内容を聞いて「社長、そういう話だったらもうちょっと頑張ってからM&Aした方がいいんじゃない?」とか、「借入が重すぎるので、M&Aもいいけど債権カットとかの話を早急に進めたほうがいい」という親身なアドバイスもくれたりもするようです。
※幸い、再生支援を行っている再生支援協議会も同じ商工会議所の中に入っていたりします。
M&A仲介会社だったら、「社長今が売り時です!」とか適当なことを言って、すぐに売らせようとしてくるので、こういうフラットな意見を聞けるのが良い点かと思います。
④の買手と直接交渉するか、M&A仲介会社を通すかは、売手企業の希望で決めることができます。
買手企業と直接交渉する場合
買手企業と直接交渉をする場合は、M&Aは割と買手企業主導で進められることが多いです。買手企業がM&Aに慣れている会社だったらなおさらです。引継ぎ支援センターは公的な機関なので、適正株価がどのくらい、という話はしてはいけないことになっていますので、特に条件面については、”自分の身は自分で守る”くらいの覚悟で交渉に臨むのがよいでしょう(ただし、あんまり心を閉ざしていると進む話も進められないことになりますので、塩梅が難しいですね)。
売手側にとって交渉力を維持する上で一番重要なことは、複数の買手候補と同時に交渉することです。
基本合意に至るまでは、売手1社に対して、買手複数社という構図になりますので、買手を1社に絞るまでにいかに良い条件で交渉できるかが、売り手としては良い条件で譲渡するポイントになります。
M&A仲介会社を通して相手探しをする場合
M&A仲介会社を通す場合は、引継ぎ支援センター内でM&A仲介会社と面談することになります。
どんなM&A仲介会社が来るかというと、売手企業に買手を紹介できそうな仲介会社が来ることが多い(かも)です。
M&A仲介会社が引継ぎ支援センターに登録する場合は、引継ぎ支援センターの審査が必要になるため、あんまり変な仲介会社は来ないですが、最低手数料で1,000万円、2,000万円というような仲介会社も登録している為、M&A仲介会社の方と会って話を聞いてみたら手数料高いなぁと感じることもあります。
仲介手数料についての希望がある場合には引継ぎ支援センターの相談員の方に相談してみましょう。
ただ、普段高額な仲介手数料を取っている仲介会社も、引継ぎ支援センター経由であれば手数料をディスカウントしています、という会社もあるので、そのあたりも聞いてみると良いです。
相談員の方は、日々色々な仲介会社を見てきているので、丁寧に仕事をする仲介会社はどこかとか、仲介手数料の取り方で過去トラブっていないか、成約実績はどうかなど結構シビアに判断できる立場にあります。
上記ディスカウントの話もあるので、規模の大きい会社でも、もうM&Aをする気持ちまで固まっている会社でも、まずは一度引継ぎ支援センターに相談するメリットはあるように感じます。
・専門家から公平な意見が聞ける
・引継ぎ支援センター経由で仲介会社を探すと普通に探すよりもメリットがあるかも
最後までお読みいただきありがとうございました。
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