お悩み社長
本記事は前回の続きです。
「事業承継引継ぎ補助金って令和3年版と令和4年版があるの?」
売手オーナーがM&A仲介会社を使うときにもらえる補助金として使える「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」に絞って解説しています。
令和3年度補正予算(2回目募集)と令和4年度当初予算の申請時期が重複するということで混乱もあるようで、事業承継・引継ぎ補助金のホームページにも次のような相違点が掲示されました。
※令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金 概要
結局どっちを申請しようか迷っている方もいると思いますので、申請する方のシチュエーション別に以下の通りまとめてみます。
割とすぐにM&A仲介会社に費用を支払う場合は「令和4年度」
今回申請を受け付けているR3年度(2~4回目募集)とR4年度は事前着手が認められていないため、交付決定日以降に経費を支払わないと補助金が認められません。
R3年度(2回目)とR4年度は申請開始時期はだいたい一緒ですが、締め切りはR4年度の方が早く、交付決定もR3年度(2回目)に比べ1か月程度早いという予定で公表されています。
なので、経費支払が発生しそうな時期が早い場合にはR4年度の方がよい可能性もあります。
M&A専門家に支払うのは、概ね、着手金・中間金(基本合意時)・成功報酬(クロージング時)あたりかと思いますが、中間金と成功報酬はそもそも買手が現れないと発生しない費用なので、申請時点でよっぽど具体的な買手が想定できるような場合でないといつ費用が発生するのか判断が難しいのもあると思います。
その場合は、基本合意で仲介手数料が発生し、かつ、既に買手の募集を開始していて、トップ面談なども数社行っているくらいの状態であれば、R4年度の申請で急いでもいいのかなという気がします。
また、着手金については、M&A専門家との契約時期を調整すれば支払時期もコントロールできるかと思いますので、「今すぐに売らないといけない」という状態でなければ、この補助金を申請しつつ、じっくりM&A専門家を吟味して選び、交付決定されてから契約→着手金の支払いを行うのも良いのではと思います。
成約時期がだいぶ先になりそうなら「令和3年度」
補助事業期間の期限(=この日までにM&Aを実施して補助対象になる費用を支払ってね、という期限)が、R3年度(2回目)とR4年度とでは全然違います。
R3年度(2回目)は2023年4月30日まで、R4年度が2022年12月16日までです。
※R4年度の方が新しいから期限が後ろだろう、と勘違いしがちなので注意しましょう。
一般的なM&Aでは半年以上かかるケースも多いので、R4年度の2022年12月16日までというのは結構スケジュールがタイトかもしれません。
もし、まだ何もM&Aを進めることについて着手していない、ということであれば、R3年度(2回目)の方がスケジュール的には余裕を持った進め方ができそうな気がします。
業績が悪化している場合は「令和3年度」?
R3年度とR4年度では、加点事由が異なります。
R3年度の方が売上や利益等についての加点項目があるようで、直近決算期で赤字であるとか売上が下がっている売手については、そうでない売手に比べて補助金採択される可能性が上がるかもしれません。
ちなみに売上高について、公募要領では以下のような説明になっています。
2020 年 4 月 1 日以降に決算が行われた任意の事業年度の売上高が、2020 年 3 月末日までに決算が行われた事業年度のうち、最新の事業年度の売上高と比較して減少していること
ちょっと分かりづらいので補足すると、例えば3月決算の会社であれば、2021年3月期決算または2022年3月期決算の売上高のどちらかが、2020年3月期決算の売上高よりも減少している、ということです。
直近では新型コロナウイルスの影響を受けたような会社も多いかと思いますが、直近の業績が悪化しているなという売手の場合は、加点を貰いにR3年度の補助金を申請するのもよいかと思います。
加点事由については、経営力向上計画や経営革新計画などの認定を受けていれば加点されるなどもあるので、該当している項目があるかどうかも公募要領を確認しつつ、有効活用していただければと思います。
補助内容が充実しているのはR3年度だけど・・
直近で筆者が会話をした方で、「補助内容はR3年度の方が良いけど、申請時期が被るならR3年度をみんな申請するだろうから、私はR4年度を申請する」という方がいました。
そういう考え方もあるのかと思いましたが、絶対どっちがいいとも言い切れないので、結局どちらの補助金も「採択されたらいいな」くらいの温度感で申請するのがいいかなと思います。
R3年度(1回目)の採択結果はこの度公表されていましたが、
「専門家活用事業については申請がありました790件から407件を交付決定いたしました。」
とのことでした。
確率にして51.5%ということなので、およそ2人に1人が当選するという、そんなに高くない当選率です。
補助金はあくまで補助金なのでそんなに期待せずに淡々と申請をしておく、くらいで取り組むのが良いかと思います。
いかがでしたでしょうか?
補助金については必ず公募要領をお読みいただき、不明点があれば補助金事務局に確認するようにしましょう。
※当サイトでは読者様が補助金申請をするにあたり参考になる情報を掲載しておりますが、内容については保証するものではなく、いかなる責任も負い兼ねますのでご了承願います。
最後に、そもそも仲介手数料の高いM&A専門家の利用を再度考え直してみるというのが、確実にM&Aコストを下げることに繋がるので、補助金申請をする前にまずはこちらの記事も参考にしつつ、依頼するM&A専門家を考えてみることをお勧めします。
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