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「みんな役職持ち?」未熟なコンサルタントに騙されない方法

お悩み社長

私の会社を担当してくれる人はマネージャーらしいんだけどなんだか頼りないな

 

M&A仲介会社内の役付に対して疑問を持つ人は結構多いと思います。

 

肩書が「マネージャー」となっているのになんだか新人みたいな立ち回りをしている人がいれば、「この人本当に役職ある人なのかな?」と思ってしまいますよね。

 

筆者やこの業界に長くいる人でも「この人にこんな役職与えて大丈夫かなぁ」と感じている機会は結構多かったりします。

 

今日はこんな「分不相応な役付」について取り上げてみたいと思います。

 

本日の話題が参考になる方

・M&A仲介会社の役付に疑問を持っている方
・役付に惑わされずコンサルタントの質を見極めたい方

 

 

それではいきましょう!

 

 

「みんな役職持ち」その実態

 

仲介会社として歴史の長い会社についてはあまりみられませんが、短期的に人員を急増させているような仲介会社では、「みんな役職持ち」状態になっている会社も少なくありません。

 

筆者はこれを「役職インフレーション」と名付けようと思いましたが、ネットで調べたら既にそんな言葉はありました(笑)

 

役職というのは、会社が従業員に与えるものなので、どんな役職を与えようがその会社の勝手ではあります。

ただ、お客さんに対して「役が付いていたら能力も高そう」という連想をさせてしまうことから、「肩書に見合った実力ではない」と失望させることにもつながり、お客さんの立場からしてはあまり歓迎できないものになってしまうかと思います。

 

実際、「肩書に見合った実力ではなかった」と口にされる売手オーナーの方も結構いらっしゃいます。

 

筆者が業界歴の長い同業者と話をするとこんな話になることもあります。

「●●(仲介会社名)の●●さんって、転職して管理職になってるけど、一人でM&A成約させたことあったっけ?」
「●●(仲介会社名)ってみんな役がついているけど、平社員っているの?」

 

これは特定の仲介会社だけでなく、割といろいろな仲介会社で同じような現象が起こっているので、業界自体が「役職インフレ」なのかなぁと思ってしまう部分もあります。

 

こんな「役職インフレ」が起こる原因ですが、こんなことが考えられます。

 

役職者に担当させることで集客につながる

役職者に担当させることで、「他の仲介会社では平のコンサルタントに対応してもらっていたけど、この会社では役が付いた方が我が社を担当してくれるのか」と自分の会社に興味をもってもらいやすくなる、という効果はあるかと思います。

 

「実力が無い人なら見抜かれるでしょう」と思う方もいるかもしれませんが、M&A自体に知見のある売手オーナーの方などほとんどいないので、その人がどんなM&A仲介をするのかなんて想像もつかないことが多いです。

 

最近では、どこの会社も役が付いている人が出てくるので、あんまりこの作戦は使えなくなってきているかもしれませんね。

あと、実力以上の役を与えてしまうことで、会社全体が低く見られてしまうというデメリットもあるような気がします。

 

従業員の獲得につながる

M&A業界では、採用段階で「業界経験者」と「業界未経験者」は明確に分けられます。

M&A仲介という仕事は、とにかく担当コンサルタントとして成約させた経験の有無・件数の多さが「能力の高さ」として評価されますので、採用の段階でもここは分けて募集することが多いです。

 

ここで面白いのが、「業界未経験者」で入社した方が、その会社でたくさんのM&Aを成立させ、メキメキと実力を上げたとしても、会社としては「業界未経験者の●●さん」というレッテルが張られているため、後から入社した「業界経験者」よりも立場が下になってしまうという現象が起きることがあります。

 

若い経営者が運営している仲介会社ではそんなこともないかもしれませんが、古めの仲介会社だと経営者の考え方も古かったりするので、こういう人事をすることが実際あります。

 

メキメキと実力を上げた「業界未経験者」としては当然その会社にいても面白くないので、転職を考えるようになります。

他の仲介会社に転職すれば、そこでは「業界未経験者」ではなく「業界経験者」として扱われるようになるので、望むような立場で仕事ができ、自尊心が保たれるということになります。

 

M&A業界では引き抜きが結構盛んなので、「あなたは業界経験者なので役職を与えるよ」みたいな甘いささやきが、人材獲得に有効な手段になったりもするのです。

ただ、こんな引き抜きばっかりやっていると役職者だらけになってしまうということも起こってしまうわけです(笑)

 

 

残業代の節約

これはあくまで想像レベルですが、残業代の節約の観点でも役を与えることで仲介会社側にメリットが出るケースがあります。

 

M&A業界に関わらずどの業界でもあるのですが、残業が多い業界では「名ばかり管理職」という人々が生まれます。

経営者側の立場になって働く管理監督者は、深夜割増賃金以外の残業代を支払われないので、会社側から見ても、残業の多い仕事をしている人は経営者サイドに入れた方が人件費が抑えられるというケースもあり得ます。

 

M&Aはそもそも顧客との折衝以外にもやるべき業務が多いですし、成約率100%の案件なんてないので大抵は複数案件を同時並行で進めていたりします。

また、先々のことも考えて集客もしていかないといけない、など残業が増える要素はたくさんあるので、そういった部分については「名ばかり管理職」の方が都合が良い可能性もあります。

 

ただ、この辺りは監督署にも実態と比較して近年厳しく見られる部分なので、あまりこの目的で「みんな役職持ち」にしている、というケースは少ないかもしれません。

 

 

役職のついたコンサルタントをどう見たらいい?

 

M&Aコンサルタントの役職についてはこのように解釈してください。

 

他社との比較で役職はあくまで参考レベルでアテにならない
・その仲介会社内では正しい序列になっているはずなので、その仲介会社内だけでコンサルタントの実力を図る指標として見て良い

 

こういう「役職インフレ」をしている業界では、複数の仲介会社を比較する時に担当コンサルタントの役職を鵜呑みにするのは危険です。

平のコンサルタントでも複数件成約しているような仲介会社もあれば、1件成約させただけでシニアコンサルタントにしている仲介会社もあるからです。

 

なので、「仲介会社Aの部長よりも、仲介会社Bの主任の方が優秀なんじゃないかな?」と感じる機会は結構あると思いますし、その直感は当たっているケースも多いです。

 

 

一方で、その「役職インフレ」を起こしている仲介会社内においては正しい序列になっているはずです。

(でないと、部下が上司より実力がある状態になってしまい、部下が離職してしまうからです)

 

部長がレベル10なら、課長はレベル5、主任はレベル3、平はレベル1みたいな感じですし、

シニアマネージャーがレベル10なら、マネージャーはレベル7、シニアコンサルタントはレベル4、コンサルタントはレベル1みたいな感じです。

 

部長がレベル10なのに課長がレベル15とかはないです。

 

なので、部長と会話して「なんだかこの人に会社を任せるのは不安だな」と感じるようであれば、もうその仲介会社に依頼するのは辞めた方が良いとも言えます。

 

 

こうした役に惑わされない実力の測り方は非常に重要になってきますので、例えばこんな質問を初期の段階で投げかけてみるのも良いと思います。

・あなたはM&A業界に入って何年?(「長いの?」と聞くと「長いです」で会話が終了するのでちゃんと年数を聞きましょう)
・あなたが主担当で成約まで至った案件って何件?

(シンプルに「成約件数何件?」と聞くと会社全体の成約件数や他のコンサルタントを手伝った分までカウントされるケースがあるので注意)

・その成約した案件のエピソードを教えて(具体的な話が聞けるか、と、同じ案件の話ばかりしないか、で、経験値の厚みが分かります)
・あなたの部下は何人いるの?(名ばかり管理職なら部下は少ないはずです)
・あなたの部内での役割は何?(人材管理をしていないと管理職とはいいづらいです)
・前職の仲介会社ではどういう役付だったの?(これを聞くと仲介会社間のレベルの差が分かります)

 

M&A業界はまだ新しい業界で、行っているのもコンサルティングという形の無いものなので、「実力はないけど弁が立つ」というコンサルタントも少なからずいます。

 

未熟なコンサルタントの口車にのせられないよう、きちんと最初の段階で見極めましょう。

 

なお、中小企業庁が公表しているM&A仲介業者のデータベースで、M&Aコンサルタント(M&A支援業務専従者)の従業員数も公表されているので、会社毎のコンサルタント総数を確認する用でお役立ください。

参考 登録機関データベース(外部サイト)中小企業庁

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

同業者であれば結構「そうだよね」と感じる部分もあるかと思います。

 

優秀なコンサルタントが増えることは世の中にとっても良いことですが、お客さんから「分不相応の役付けだ」と思われることは、その仲介会社の評判が落ちるだけでなく、M&A業界の不信感にもつながることにもなりかねないので、業界で共通した指標なんかができるといいなと個人的には思ったりします。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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