お悩み社長
親族内承継や従業員への承継を考えている経営者の方は多いのではないでしょうか?
近年M&Aが盛んにはなっているため情報が溢れていますが、親族内承継などの情報はあまりないのも現状です。
筆者の経験上、最初は親族内承継や従業員承継を考えていたけど、第三者へのM&Aにせざるを得なくなった、という事例も多いため、そういった可能性もあることも事前にお伝えしておいた方がいいかなとも思います。
今日は、M&A仲介者の立場で、親族内承継や従業員承継を希望しているケースはどんなケースか、といった内容や、いざそれをしようとしたときにどんな問題が起こり得るかを取り上げてみようと思います。
今回の内容は、親族内承継や従業員承継をしようとしている方は、「できるだけ早く知っておいたほうがよい内容」だと思いますので、関心のある方は最後までお読みいただけると嬉しいです。
本日の記事を読んでいただきたい方
・自分が経営している会社を他の役員や番頭に継がせようとしている方
・自分が会社を引き継ぐ可能性がある方
それではいきましょう!
親族内承継・従業員承継とは
親族内承継は、子どもや兄弟、甥・姪などの親族に会社株式を譲渡することです。
従業員承継は、役員や番頭など、その会社で次世代を担う人材に会社株式を譲渡することで、既存の株主から株を買い取るのが、経営陣ならMBO(Management Buy Out)、従業員ならEBO(Employee Buy Out)と呼ばれます。
元々日本の中小・零細企業では親族内承継の割合が多いのですが、最近の中小企業のM&Aブームで第三者に会社の株を譲渡しよう、という風潮も徐々に浸透してきています。
親族内承継・従業員承継を希望というのケースバイケースですが、筆者が数多く見てきた中ではこんな感じの理由が多い印象です。
<親族内承継>
・自分の子どもが会社を継げば取引先や従業員も納得感があるし、そもそもそうなると思われてる
・会社のお金の管理などは他人に任せるわけにはいかない
・既に子どもが会社に在籍しているので、素質の有無に関わらず、道は敷いておくのが親心
<従業員承継>
・継がせられる親族はいないが、自分がいなくても運営できるほどに経営陣が育っている
・目を掛けて育てた才能ある社員になんとか継いでほしい
・経営に意識の高い社員が多く、みんなで会社をなんとかしたいと思っている
どうでしょうか?
あなたがこの記事を見ている理由もありますでしょうか?
しかし、既存の会社オーナーにこのような希望があっても実際には上手くいかないケースも多々あります。
親族内承継・従業員承継が出来なくなってしまう事例
その① 「会社が高すぎて親族や従業員が株を買えなくなってしまった」
これは継がせる会社が一定以上の規模感になり、無借金など財務状況が良かったりすると起こり得ます。
会社の規模が大きく財務内容も健全であったりすると、当然株価も高くなり、その株式を買うためのお金が無い(銀行からお金を借りようにも担保余力が無い)という状況になります。
筆者の会社にM&Aの検討でご相談に来られる方でも、
「親族内承継をするときに、株の買取代金を銀行から借入しようと話をしたけど断られて、もう第三者へのM&Aしかないと思った」
と言われる方も多いです。
親心としては無借金の財務がきれいな状態で継がせたい、と考えるものですが、これはこれで困りますよね。時間をかければ徐々に株式を移していくなどもできますが、実際承継を考えるタイミングではあまり時間が無いケースもあります。
こういうケースにおいての最終的な落としどころとしては、M&Aで第三者に経営権を譲渡しつつ、会社にいる親族や現経営陣の主導権を邪魔しない体制(例えば、M&Aの買手は買収後、数字管理のみ行い、運営自体は既存の経営陣に行ってもらうなど)で落としどころを見つけるというパターンです。
あるいは、メザニンなどの議決権を持たない資本を注入して、既存株主の議決権を守るケースなども場合によってはあり得ます。
いづれにせよ、会社規模を大きくし過ぎるとこういった承継のタイミングで問題が発生することもあるので、将来的に親族や従業員に承継しようと考えている方は頭の片隅に入れておくとよいかと思います。
その② 「後継者として考えていたのに退職してしまった」
こちらもよくあるケースです。
創業者が子どもに、立派な後継者になって欲しいあまり厳しいことを言ってしまい、結果会社を辞めてしまったり、子どもの奥さんが「中小企業はあぶない」とゴリ押しして子どもが退職、その後、大企業に転職してしまったりと様々です。
せっかく後継ぎにと考えていたのに、やめてしまい、意気消沈してしまった社長が「もう会社を大きくしようという気が失せた」ということで、M&Aで売却を決意することもあります。
会社の人の移り変わりに比べ、会社のいろはを一から教え込むことに大変な労力と時間がかかる点も、親族内承継や従業員承継が難しくなる一因かと思います。
その③ 「経営環境や金融機関などへの保証を考えると継がせない方が良いと思い直した」
継がせる会社に金融機関などの負債がある場合、株主や代表権の異動に伴って、連帯保証人の変更が伴います。
この「負債を自分の子どもに負わせる」ということに抵抗を感じる経営者の方も非常に多く、債務が原因で親族内承継を思いとどまるケースもよくあります。
また、最近では新型コロナウイルスのような経営環境の大きな変化が起こったり、技術革新のスピードが一層早くなっていることから製品やサービスの寿命も早くなっていたり、と100年以上安心して収益を生み続ける事業を残すということ自体困難な世の中になっていますので、「経営者になるなら、自分で会社を一から作って頑張りなさい」と子どもにアドバイスをする経営者も増えているように見えます。
その④ 「従業員からの反発の可能性がある」
「親族に継がせようと子どもを入社されたけど、全く仕事ができず、他の従業員からも信用されていない。こんな中、この子どもを社長に据えて会社を継がせたら他の従業員のモチベーションが下がるのではないか」、と危惧される経営者の方も多いです。
「会社では実力主義を掲げているのに、そういうところは血のつながりで決めるのか、と言われたくない」などとボヤく社長もいました。
こうなると何を優先させるか、という話にはなってしまいますが、できるだけ皆に歓迎されて経営をバトンタッチしたいものです。
上記のどのケースであってもM&Aは有効な代替策であると言えます。
いかがでしたでしょうか?
会社の財務を良くしても悪くしても引継ぎにくいという点では親族内承継や従業員承継は、タイミングがかなり重要になってくるといえます。
M&Aをした場合でも現経営陣を尊重して資本参加していただくようなことも柔軟に対応できるケースもありますので、色々な道を模索してみましょう。
最後までお読みいただき有難うございました!
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