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「買手が見つからない?成約しない?」仲介会社を途中で変更するには

お悩み社長

今M&A仲介会社にM&Aを依頼してるんだけど、全然成約する見通しが無いから仲介会社を変えた方がいいのかな?

 

こんなお悩みの方も多いです。

 

自分の会社に魅力がないのか、はたまた仲介会社の動き方に問題があるのか。

 

買手に打診をし始めて、時間が経てば経つほどそんな考えが色々浮かんできたりするものです。

 

数字上、上場しているM&A仲介会社のIR資料でも、受託している件数と成約している件数を比較すると半分以下。つまり、M&A仲介を依頼しても成約するのは半分以下、というのが見て取れます。

 

M&Aの検討を始めるときには「M&Aしたらこんないいことがある」というイメージに目がいきがちですが、実はM&Aが実現せずそのまま代表を継続したり、廃業を決意するという会社も相当数あるといえます。

 

M&Aを検討する売手の中には、後継ぎがおらず、M&Aしないと廃業の可能性も考えないといけないという方もいますし、「高く売れればM&Aしてもいいかな」くらいの気持ちで検討を始めたものの、どんどん乗り気になってきたのに肝心の交渉が気持ちよく進まない、なんて方もいます。

 

いづれにせよ、M&Aをしたいと思っている方が成約もしないのにズルズル長引いてしまっても基本的に意味が無いので、仲介会社ごと切り替えて心機一転、一から相手探しをするというのもよいでしょう。

 

今日は仲介会社を途中で変更した方が良いケースとメリット、注意点についてお伝えしていければと思います。

 

それではいきましょう!

 

仲介会社を変更した方が良いケース

 

色々比較検討して信用できるという仲介会社に仲介を任せて、上手く進んでいるような状態であればよいのですのが、次のようなケースでは仲介会社を変えることも検討した方がよいこともあります。

 

担当者のやる気がない

企業概要書を作成するといって長期間放置されたり、連絡がまめに行われないなど、担当者のやる気がないと売主が感じるケースもたまにあります。

 

企業概要書ができないと買手候補先への打診はそもそも始まらないですし、連絡が来なくなるようでは仲介会社が一体何をやっているのか分からないものです。

 

買手探しというのは、仲介会社のやる気と執念が無いとなかなか相手先は見つかりませんので、やる気のない仲介会社に任せていても成約どころかM&Aの交渉すら始まらないということになります。

 

これは、担当者の処理能力やキャパ不足なども原因として考えられますが、間違いなくその担当者の中であなたの会社の優先順位が低いのが原因です。

 

仲介会社によっては、「今期〇〇件案件受託する」とか「着手金で〇〇万円達成する」という案件受託に関するノルマがあるような会社もあるので、受託することが目標になってしまい、受託後ほったらかしになる案件が発生する、なんてことも冗談ではなく本当にあります。

 

やる気のあるなしは個人の感じ方によるところもありますが、売手の感じ方に沿う対応をするのが仲介の役割でもあるので、売手が「うちの依頼している仲介はやる気がないのでは?」と思った時点で、きちんと仲介していないともいえます。

 

このようなケースではやる気のある仲介会社に変更するというのも良いかと思います。

 

打診している候補先があるのかないのか分からない

仲介会社によっては、買手候補先の状況を逐一報告しない会社・担当者もいます。

 

既に具体的に交渉している買手候補先がいれば別ですが、具体的に交渉が進んでいない(トップ面談もしていないなど)状態で、今仲介会社がどういう候補先に打診しようとしているのかを売手が知らないというのは問題です。

 

売手と仲介会社の間では、基本合意に至るまでは買手候補先のリストであるロングリストといわれるリスト常にキャッチボールする感じになりますが、こういったものの共有がなされない、もしくは、売手から依頼されないと共有されない、というのは仲介会社側に問題があります。

 

また、買手候補先を打診する際には何らかの見立てがあるはずなので、買手候補先のリストに社名を挙げた背景やその見立てによって動いた結果どうなった、とかのフィードバックは本来あってしかるべきです。

 

担当者の中には、売手にとって確認しようのないことであるのをいいことに、売手に打診の許可をいただいた買手候補先に打診していなかったり、打診もしていないのに「御社の財務状態を検討されて難しいと言われました」と嘘を付くレベルの者もいます。これは論外ですが、そういう怪しい節があればきちんとしたコンサルタントに替える検討はした方がよいと思います。

 

また、仲介会社が社内の買手リストから何となくピックアップしたということであれば、特定の業種を除きそれほど社数は挙がらないことも多いので、このロングリストのやりとりで仲介会社がどういう買手の探し方をしているのか、自社がニーズを知っている先しか打診をしないのか(新規先へのコールドコールはしないのか)は透けて見えるところだと思います。

 

打診している候補先が適切でない

100社打診して全滅でした、みたいなケースもM&A仲介では全然あり得る話ですが、社数だけみてM&Aの実現可能性を測るのは適切ではありません。

 

ピックアップした100社が、そもそも売手企業とシナジー効果が無かったり、どう考えても買収せんでしょうという会社だったりすれば全滅して当然です。

 

こういう雲をつかむような打診をしていると200社打診しても300社打診しても結果は期待できません。

 

この辺は実際に数多く買手打診をしないと感覚がつかめないところですので、売手がそれを見抜くのも難しいですが、きちんとしたコンサルタントが見れば一発でリストアップした方の能力は見抜けるものだったりします。

 

担当のコンサルタントがやる気があって、たくさん打診したけど具体的な交渉にならない、という場合は、このようなことも疑ってみるのも良いと思います。

 

 

色々お伝えしましたが、これらの他に、仲介会社や担当コンサルタントとの信頼関係が壊れた場合でも、担当替えや、仲介契約を解除して他の仲介会社にした方が良いケースもあります。

 

M&A仲介は、話が始まって最後クロージングするまで全て間に入って情報のやり取りをするのですが、仲介者が信用ならないような人物だった場合は、全てその仲介者の情報が信用できるか分からなくなってくるものですので、交渉も上手くいかないケースも多いです。

 

仲介会社を変更するメリット

 

仲介会社を変更するとどんなメリットがあるのでしょうか。

 

以下に取り上げてみます。

 

変更することで買手候補先の可能性が広がる

買手が見つからないという理由で仲介会社を替えた場合、替えたことによって買手が見つかる可能性が上がります。

 

買手探しというのは基本的に売手企業1社1社分析してそれぞれマッチする会社を仲介会社毎に選定しているので、仲介会社間で買手候補先に違いが出ることが多々あります。

 

また、仲介会社によって打診方法や仲介手数料体系などの条件も違いますので、同じ買手に対する打診でも、以前の仲介会社では打診できなかったけど新しい仲介会社の方では打診できたみたいなことも無くはないと思います。

 

元の仲介会社が買手探しについて、もう打つ手なし、という状態で、最初受託する時の威勢が無くなっているようであれば、間違いなく仲介会社を切り替えて進めた方が良いです。

 

本当は、仲介会社側が自発的にギブアップ宣言をして、他の仲介会社で進めてもらうよう促すのが売手の為ではあるはずですが、担当者の受託件数が減ってしまったり、何かの機会に買手が現れるチャンスが到来するのではないかと望み薄な期待を持っていたりすると、あまり仲介契約を解除しようとしなかったりもするものです。

 

とはいえ、ズルズル引っ張ってもあまり良いことは無いので、買手が見つからないと言っているのであれば、売手から仲介会社に変更を申し出るのがよいかと思います。

 

仲介手数料を見直すことができる

最初の仲介会社選びで、仲介手数料を比較せずに決めてしまったという方も多いです。

 

「御社と資本提携したいというクライアントがいる」という決まり文句の手紙で、まんまと高額な手数料が明記された仲介契約を結んでしまったという方もかなり多いと思います。

 

仲介会社を替えることで、新しい仲介会社の手数料体系でM&Aが行うことができますので、実質コストダウンの効果も出すことができます。

 

仲介会社は買手からも仲介手数料を徴収するのですが、高額な仲介手数料を買手が嫌がって、結果交渉が上手くいかない、なんてこともあり得るので、買手とのマッチング率や成約率を高める意味でも仲介手数料は安い方が良いかもしれません

 

こちらに仲介会社の手数料をまとめた記事がありますので、自分の今契約している仲介会社は他社に比較して仲介手数料が高くないか?他にもっとよいところはないか?という点を確認していただければと思います。

「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!

 

自社の価値をより客観的に知ることができる

M&A仲介というのは売手と買手が直接やり取りすることは基本的に禁止されているので、売手からすると買手から直接生々しい意見を聞くことは無いはずです。

 

良くも悪くもオブラートに包まれた感じで情報のやり取りが行われますが、担当者によってその伝え方はかなり異なります。

 

事実を歪曲して伝えるような担当は論外ですが、結構直球で話をするタイプの担当もいれば、売手の気持ちを配慮し過ぎるあまりリアルな事が伝えらないタイプの担当もいます。

 

後者のタイプが担当になってしまうと、買手がなぜ検討を辞退したのか分からないことから、売手としては「なんで弊社は良い会社なので買手がいないんだ。仲介の動きが悪いんじゃないか」という感情を持つこともしばしばです。

 

担当や仲介会社が替われば、自分の会社は、本当は買手にこうみられているのだ、ということを自覚することにも繋がるケースもあるので、劇的に軌道修正できて成約につながるということもあり得ます。

 

仲介会社を変更する際の注意点

 

最後に仲介会社を変更する際の注意点もお伝えします。

 

違約金が発生する可能性がある

仲介契約の内容によっては解約時に違約金が発生するケースがあります。

 

よくあるのは「合理的でない理由で契約を解除する場合には違約金が発生する」というものです。

 

仲介会社とて、売手の気分で契約が解除にできたりすると、いきなり今までの苦労が水の泡になったり買手への説明がつかなくなってしまうのでこのような条項を設けている仲介契約があるわけですが、「買手が見つからない」というのは常識的には合理的な理由にはなるかと思うので、違約金無しで解除できるケースの方が多いかと思います。

 

悪質な仲介会社につかまってしまうとトラブルに発展しうる内容にはなりますが、「きちんと筋は通す」「仲介会社がおかしなことを言って収拾がつかないようであれば弁護士への相談も含めて検討する」というスタンスで話をするようにしましょう。

 

問題解決には直接つながりませんが、問題のある業者を通報できる仕組みも国では作っているのでこちらの窓口も一応載せておきます。

問題のあるM&A仲介会社は苦情窓口へ通報?情報提供窓口の使い方

 

解約時のトラブルについてもう少し知りたい方はこちらの記事もご参考下さい。

M&A仲介会社と契約解除する際のトラブル対処法

 

着手金など支払済みの費用が無駄になる可能性がある

着手金を払ってしまっている場合においては、たとえ買手が見つからなくて契約解除するケースでも着手金が返ってこないケースも多々あります。

 

某仲介会社では、「着手金を払ったのに全然まともな対応をしてくれない」とクレームが多数発生していたりもしますが、そもそもM&A仲介会社に着手金を支払う、というのはよほど信用がおける方を起用するとかでなければ売手にとってリスクがあることである、と筆者は思います。

 

とはいえ、払ってしまったものは返金させるか諦めるかしかないです。

 

仲介会社の動きが悪く買手候補が出てこない、とかであれば、契約解除で発破を掛ければやる気になる担当もいるかもしれないので、契約解除せず一度そういう話をしてみるのも良いですが、もう仲介会社を信用できないというレベルまでいってしまっているのであれば、返金させるよう交渉して難しければ弁護士に相談するか、捨て金としてキレイさっぱり縁を切るか、ということになると思います。

 

テール条項に抵触するかを考慮する必要がある

M&Aの仲介契約書では「テール条項」という取り決めがされているケースが多いです。

 

テール条項というのは「仲介契約が終了/解除されたとしても、一定期間は、売手と買手がM&Aで成約した際に所定の仲介手数料を仲介会社に払ってくださいね」という条項です。

 

なんやそれ、と思う方もいると思います。

 

これは、仲介手数料を払いたくない当事者(売手・買手)が口裏を合わせて仲介契約満了を待つ、みたいなことを防止する意味合いが強い条項ですが、仲介会社を替える場合も弊害になり得ます。

 

普通のテール条項は「”仲介会社が紹介した”買手と成約したときには仲介手数料が発生する」という文言になっていますが、中には「買手と成約したときには仲介手数料が発生する」という恐ろしい文言になっていることもあるので注意してください。

 

前者であれば、元の仲介会社から紹介された買手を避ければこの条項には抵触しないはずですが、後者の場合はとにかくM&Aしたら何もしていない元の仲介会社にも手数料を払うみたいな解釈もでき兼ねないので、仲介契約を解除する際には覚書を結んでおいた方がよいかと思います。

 

また、テール条項を悪用して、とにかくロングリストに色々な買手の名前を挙げておきさえすれば、仲介会社が替わった後でもその中の一社と成約に至れば手数料よこせといえるんじゃないか、と画策する悪徳業者もいなくもなさそうなので、「紹介された買手」というだけではなく「面談した買手」とか「条件提示を受けた買手」とか、誤解のない、より具体的な表現で覚書をした方が安全な気がします。

 

M&A仲介を規制する法律は現状ないですが、一応、以下の中小企業庁のガイドラインで「テール条項は、最長でも2年~3年以内が目安、紹介した買手と成約した場合のみ、とするのを確認しましょう」と記載があります。

参考 中小M&Aガイドライン(外部サイト)中小企業庁

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

契約解除となると結構骨が折れるかと思いますが、ズルズルとそのまま仲介契約を継続するより良い結果を生むこともあります。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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