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「M&A手数料って平均はどのくらい?」中央値は500万円という事実

お悩み社長

最低手数料の全社平均っていくらくらいなの?

 

M&Aの最低手数料については各社あまりオープンに出さず、業界平均って分かりにくいと思います。

※最低報酬額とはM&A会社が設定している手数料上の取決めのことで、例えば成功報酬の最低報酬額が1,000万円だとしたら、M&Aが成就したらその取引額がいくらで、どんな資産規模の会社を売却したかに関わらず「最低でもこれだけはもらうよ!」というものです。

 

また、手数料が高額か、低額かということは、みる人や金銭感覚の違いによって異なるものでもありますので、今日は客観的な情報を示しつつ、業界で設定されている手数料の実態はどのくらいなのか、について説明していきたいと思います。

 

それではいきましょう!

 

M&A会社の最低報酬額の中央値は500万円

 

M&A仲介手数料の最低報酬額とはどのくらいが妥当なのか、を考える際に、現在全国のM&A業者ではどのくらいの最低報酬額が設定されているかを考えてみます。

 

ここで参考になる客観的な資料として、中小企業庁の公表している「M&A支援機関登録制度実績報告等について」(令和5年3月16日)を引用します。

 

ここでM&A支援機関についての説明なのですが、M&Aを仕事にする会社はほとんど中小企業庁のM&A支援機関に登録しています。

(M&A支援機関に登録していないとお客さん側が「事業承継・引継ぎ補助金」などのメリットのある補助金の申請ができず営業的にデメリットしかないから取り合えず登録しているというのが実態に近いです)

 

で、このM&A支援機関というのは毎年中小企業庁に実績報告をしており、その結果をまとめたものが公表されています。M&A支援機関としては嘘の報告をすると登録が取り消される可能性もあるので普通の会社は正直に回答すると思います。

 

なので客観的かつ信憑性の高いデータとして見ることができる、という訳です。

 

じゃあ、それらのM&A会社はどのくらいの最低報酬額が設定されているのでしょうか?

こちらをご覧ください。

 

M&A仲介会社なのか、FA会社なのか、金融機関なのか、士業なのかなどでばらつきはありますが、概ね言えることは、

 

・M&A専業会社の最低報酬額の中央値は500万円

・士業関係者の最低報酬額の中央値は200万円程度

※とても手数料の高い会社に全体の数字が引っ張られないよう、会社毎の手数料に関する実態を把握するためには「平均」ではなく「中央値」を見ます

 

ということです。

 

士業関係者の手数料が安いのは、あくまで筆者の想像ですが、M&A以外の収入(顧問報酬など)があり別の形で便益を得られているのでサービス的に安く対応していることや、大きい案件はM&A会社に斡旋し自分の事務所で対応するのは小規模案件なので最低報酬を高く設定できない、などの理由があるのではと思います。

 

で、この図から分かる重要なことは、最低報酬額についていえば「1,000万円でも高い方」「2,000万円以上は明らかに高額な部類」という客観的事実です。

 

このグラフの方が分かりやすいかもしれません。

 

M&Aの手数料は法律で上限が決められているものでもありませんし、最低報酬額の設定も自由に決められます。だからこんなばらつきも出るのです。

 

あなたの話しているM&A会社の最低報酬額はこのグラフと見比べていかがでしょうか?

 

高いでしょうか?低いでしょうか?

 

このグラフだけ見ると高額な最低報酬金額を設定しているM&A会社というのは少数派に見えますが、概ね大手・中堅のM&A会社が多いと思われます。

 

これらの会社は多くの広告宣伝費を投じ、多くのコンサルタントを営業に走らせている関係上、顧客側の接触機会の面から考えると、「最低手数料の高いM&A会社とばかり話をしていた!」と気づく方もそれなりに多いのではないかと思います。

 

高いM&A手数料は売手と買手の金額上のミスマッチに繋がり、破談になるリスクを上げる要因になり得ます。だから筆者は積極的にこれらを使う必要もないと言っています。

(筆者はそんなに手数料を払わなくても満足のいくM&Aをたくさん実現させてきたのでなおさらそういえます)

 

もしこれから手数料も気にしてM&A会社を探すのであれば、確実にこの相場感は抑えるようにしましょう。

 

ちなみに、今回のデータは登録FA・仲介業者2,823者のうち、実績報告のあった719者にアンケートを実施し、460者が回答ということで、さらにそこから最低報酬額の設定をしている会社に絞り母数が根拠になっているようです。

 

報告年である1年間のうちに成約した件数が1件でもあると実績報告を求められる(それ以外は実績報告を求められない)ものなので、逆に言うと、2,823者の内、2,104者は成約実績がない業者であるといえます。

 

「M&A支援機関です!」と言われても1年でM&A成約実績1件もあらへんがな!という方も結構いるということですね。

 

また、460者中385者が最低手数料を設定しているということなので、裏を返せば最低手数料を設定していない(例えば完全固定とか)M&A会社も結構あると読み解くこともできます。

 

統計データを読むことで、M&A会社における本当の実態を読み解くことができるので、営業してきたコンサルタントが言っているのは本当かな?と思った時にはこういう情報を参考にしてみましょう。

 

もし「最低報酬2,000万円が業界標準です!」と畳み込んでくるコンサルタントがいれば、その人は単に業界標準を知らないか、騙して丸め込もうとしている人だといえますね。

 

支払う手数料が譲渡額の5%?それって嘘かも

 

M&A会社のコンサルタントと会話をすると、手数料の説明の時にこんなことを言ってくるかと思います。

 

「弊社は成功報酬をレーマン方式で計算するので、5億円以下の部分については5%です」

 

これを聞いて、「あー、じゃあM&Aで売却した5%くらいが手数料なのか」と思う方もいるかもしれません。

 

それ、間違っています。

 

ちゃんといくらになるかシミュレーションを出させましょう(言わないと出さない会社も多いです)。

 

筆者の知る限り、仲介契約書上前述した最低報酬額が設定されていれば、「成功報酬は最低報酬額もしくはレーマン方式で計算した手数料のいずれか高い方」となっていることが多いです。

 

つまり、最低報酬が2,000万円で設定されていれば、M&A売買金額1億円の案件であれば5%の500万円でなく2,000万円になり、M&A売買金額2,000万円だったら手数料で全額消えて、売主には1円も入ってきません(厳密にいえば株式譲渡なら消費税分は持ち出し…)。

 

その実態を示したものがこちらの図になります。

※元資料では、株式譲渡額をベースに報酬額計算をした時のデータの他、株式価値+ネット負債をベースに報酬額計算をした時のデータもありましたが、概ね傾向は一緒です。

 

この図は、M&Aで売却した時の株式譲渡額に対して、M&A手数料が何%あるかを示したものです。

 

例えば、株式譲渡額が500~1,000万円の場合は、中央値として43.1%がM&A手数料として持っていかれるということです。

 

株式譲渡額が5,000~1億5,000万円の範囲での中央値は約10%となっています。

 

そして、前述の5%くらいの手数料感で収まるのは概ね4億円を超すくらいの規模感になってきた時、ということも分かります。

 

シンプルに言うと、規模が小さいM&Aでは手数料5%よりももっと取られるし、受け取る金額の大半を手数料で取られることもあり得る、ということです。

 

コメントではM&Aプロセスにかかる工数という記載もありますが、単純に、最も大きく影響しているのは先ほど説明した最低報酬金額の設定だと筆者は考えています。

 

国内で高額な最低報酬額を設定している仲介会社では2,000万円~2,500万円くらいの設定ですが、これを5%のレーマン料率を基に割り戻すと4億円~5億円くらいのM&A売買金額ということになります。

 

まさにこの図の通りですが、4億円~5億円くらいのM&A売買金額を超すくらいの規模感になってきて初めてレーマン料率で言われるような売買金額の5%、4%、3%とかの話になってくるというのは図からも見て取れます。

 

あなたが会社を売却しようとしているのであれば、想定売却金額から統計的に皆が支払い手数料金額をどのくらい払っているのか見た上で、M&A会社を選んだ方がよいと思います。

 

会社を売却する理由はひとそれぞれと思いますが、単純に経済合理性という観点で言えば、会社を売却してかなりの割合を手数料で持っていかれるくらいなら、会社を清算して手元にいくらか残す方がメリットあるのでは?と考えるのも売手の合理的な行動だと思います。

 

また、もしM&Aをした方が良い、という判断になったとしても、M&A会社に依頼するのではなく、M&Aマッチングサイトなどで手数料を掛けずに買手を自分で探してM&Aした方が手残りが多くなる可能性があるのでは?ということも頭の片隅に入れておくとよいと思います。

 

見せかけで安く見せて仲介契約を獲得する、というテーマで動いているM&A業者もいるので、客観的なデータをきちんと理解して動かないと大抵損をします。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

M&Aの手数料については法律上の制限がなく、業者側もエイヤで決めている部分が少なからずあるので、1社のM&A会社としか話をせず業界標準がどのくらいかも調べずに仲介契約を締結すると後悔することに繋がるかもしれません。

 

こちらでも手数料を基にしたM&A会社の選び方についても説明しておりますのでご参考ください。

「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!

 

中小企業庁は当然どこかの仲介会社に肩入れするようなことは無いはずなのと、今回のような実績報告や苦情などの情報も徐々に蓄積されているはずなので、公に公表されているデータを参考にすると満足度の高いM&Aに繋がると思います。

 

M&Aいろは塾では、こうしたデータを基に筆者の見解を述べたりしていますが、なかなか業者側の立場でないと理解できないような内容をできるだけ一般の方にも分かりやすい形でお届けできればと思って色々な情報を発信しております。ご参考いただければ嬉しいです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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