お悩み社長
昨今、M&A業者が色々とやらかしているので、中小企業庁の管轄でM&A支援機関登録制度ができ、業者に関する規制が強化されています。
そんな中、「M&A支援機構」というところから営業を受けたという方がいました。
M&A業界では、結構似た名前を使うことも多く、営業を受けた側からすると「これって社名?一体どういう会社なの?」と感じることも多いでしょう。
本記事をお読みいただければどのような会社なのかも確認できますので、参考にしていただければと思います。
また、企業活動において、似た名前を使うことはリスクも伴うのでそのあたりも含めて考えてみたいと思います。
M&A支援機構とは?
M&A支援機構のホームページを見てみると、特に前株や後株の表記がありません。
会社概要を見ると「株式会社プレックス」という表記があるので、実態としては株式会社プレックスという民間の会社のようです。つまり、M&A支援機構という会社ではなさそうです。
よく似た名前で「M&A支援機関」というのがありますが、これは中小企業庁管轄の「M&A支援機関登録制度」で登録されたM&A業者を総じて「M&A支援機関」と呼び、全国に数千社(者)存在します。少し分かりづらいですが、株式会社プレックスもM&A支援機関の内の一社です。
そのため、「M&A支援機構から営業が来た」といっても、それはサービス名であって、要は民間のM&A業者から営業という捉え方が正しいと思います。
似たような話で、リクルートもM&A支援事業をしていますが、彼らが運営している「事業承継総合センター」というのも社名ではなくサービス名であり、これと同じようなイメージです。
ちなみに、全国に登録しているM&A業者は登録支援機関データベース(中小企業庁)で確認できるのですが、似たような名前で「事業推進支援機構」「承継支援機構」「日本事業承継支援機構株式会社」などの会社も出てきました。
「〇〇機構」といわれるとなんだか国の運営する組織っぽく感じる方もいらっしゃると思いますが、そういう訳ではないことに注意が必要です。
株式会社プレックスのホームページを見ると、2018年設立の物流や建設、製造領域におけるHRテックの会社のようで、M&A専業の会社という訳ではなさそうですが、M&A支援機構のホームページではM&A支援機構に関わる従業員数が28名と記載があり、公的な機関であるM&A支援機関の登録支援機関データベースでもM&A支援業務専従者の従業員数は25名とあり、M&A業者としての規模感は一定規模以上のようにも見えます。
M&A業者は少人数の会社も多いので、相対的にはこれはなかなかの数と思います(実際このうちコンサルタントの数が何人かまでは把握できませんが)。売却企業への人材紹介とか?HRテックを活かしたM&Aサービスなのかも気になるところです。
また、手数料については登録支援機関データベースで確認できる手数料は以下の通りです。
【売手側手数料】
・株価レーマン方式で最低報酬額2,000万円
・着手金、中間金、月額報酬、タイムチャージ無し
【買手側手数料】
・移動総資産レーマン方式で最低報酬2,500万円
・中間金有
・着手金、月額報酬、タイムチャージ無し
売手側は、完全成功報酬となっている点は、売手としては成約するまで手数料が発生しないので比較的利用しやすいと思います。一方、最低報酬額が2,000万円となっているため、株価が4億円を下回る可能性のある売手であれば、最終的な支払手数料がレーマン料率の計算によるところの5%よりも高くなってしまう可能性がある点は注意が必要です。
買手側は、売手側とは異なり移動総資産レーマンを採用しています。移動総資産レーマンの場合、借入の割合が大きく総資産が大きい会社のM&Aの場合は、譲渡金額に対して手数料が割高になる可能性があるので、売手目線では買手からの提示金額が低くならないか気にした方がよいでしょう。
この手数料が高いのか安いのか、については大手・中堅や、そのた仲介会社の手数料分布をまとめた記事がありますので、こちらをご覧ください。
「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!
ちなみに最低報酬金額で2,000万円や2,500万円という金額は上場仲介会社の水準と同水準です。
よく似た名前で起こるトラブル
以降は株式会社プレックスの話ではなく、業界全体の話をします。
M&A業界ではこれに限らず、よく似た名前が存在します。
例えば、このようなケースです。
株式会社日本M&Aセンター
株式会社岡山M&Aセンター
広島M&Aセンター株式会社
有限会社長野県M&Aセンター
M&A業界で「センター」という社名は割と使われています。
M&A業者間で「センター」というと「日本M&Aセンター」を指すことが多い気がしますが、それと似たような社名の会社もあります。
「日本M&Aセンター」は日本各地の税理士・会計士とのネットワークを構築してきたため、各地に「日本M&Aセンター」と連携している税理士・会計士がいますが、そうした繋がりから「地域名」+「M&Aセンター」という社名の会社もあるものと思います。
こうした税理士・会計士系の会社は、自社でM&A仲介やFAをすることもあれば、実務は「日本M&Aセンター」にトスアップしているというケースもあるでしょう。
なお、公的機関である「事業承継・引継ぎ支援センター」も「センター」とついていますが、これは商工会議所に設置されている公的機関なので、民間企業とは全く別物です。
また、このようなケースもあります。
M&Aキャピタルパートナーズ
M&Aベストパートナーズ
M&A業者に「〇〇パートナーズ」という社名が多いことはご存じの方も多いかと思います。
上記の場合は、社名は似ているのですが、「M&Aベストパートナーズ」の創業者が、M&Aキャピタルパートナーズに在籍していたという経緯もあったのか、前職の社名を新しい会社に用いているというケースです。
M&A業界では独立するコンサルタントも多いですが、こうした前職の社名の一部を用いて会社を設立することもたまにあります(許可を取ることまでしているかは分かりませんが)。
その他、こうした社名の会社もあります。
経営承継支援
経営承継
企業承継支援
事業承継支援センター
事業承継パートナーズ
事業承継総合研究所
M&Aは「事業承継」というワードと密接に関係しているので、社名に「承継」といった形の名前を用いるケースもあります。
どれも非常に似ているので、仮にDMで営業が来ても、どこがどの会社なのか分からなくなるようなことも起こるような気もします。
実際筆者が聞いた話でも、売主が面談したといっていた仲介会社が別の似た名前の会社だったこともありました。
M&A業者は数も近年増加しており、営業も盛んなので、「〇〇社だと思ったけど、△△社だった」というのは顧客側が混乱する可能性があるので気を付ける必要があります。
こうした中で、仲介会社が表示する社名(名前)をめぐるトラブルもあります。
例えば、意図的に著名な会社と勘違いさせるような営業をしていたり、安心感のある会社のように誤認させつつ実は違うといった事例です。
以前、某仲介会社が大手仲介会社へのお問合せと誤認を招くようなサイト設計をして問題になっていたり、本当はM&A〇〇という会社なのにその社名を伝えると最初の段階で連絡をもらえなくなるからと会計事務所の名前をDMに記載して送付していたりということもありました(今でもやっているかは分かりませんが)。
また、公的機関と思わせて懐に入り込む手法も試されていますが、ここまでくるとなんだか「市役所の方(方角)から来ました」と言って要らないものを売りつける訪問販売みたいな印象さえ受けるものです。
M&A業界では営業が激化しているので色々な営業が行われていますが、場合によって受け手の顧客側の誤解を招いてしまっているという点も否めないので、顧客側は相手が誰なのかはきちんと確認する必要がありそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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