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【2023年10月版】「事業承継・引継ぎ補助金の採択率ってどのくらい?」グラフ付きで解説

お悩み社長

M&A手数料にも使える事業承継・引継ぎ補助金に申請したらどのくらいで採択されるの?

 

こんな質問をよくいただきます。

 

「事業承継・引継ぎ補助金」とは、国の補助金で、M&Aを行う際に発生する「M&A専門家への費用」や「M&A後の経営改革」や「M&A後の廃業費用」などに使える補助金です。

 

M&Aしてしまってからでは使えないので、「これからM&Aしよう!」という方がとりあえず申請をしておいて、M&Aが成立したら払った費用の一部について補助金をもらう、というものです。

 

世間一般では、M&Aは業者の手数料が高い、という声もあるわけですが、そこに使える補助金でもあるので、とっても優れものです。

(但し、上限600万円程度の補助金なので、M&A業者によっては焼石に水程度かも・・)

 

こんな、優れものの「事業承継・引継ぎ補助金」ですが、結構「申請したけど落ちてしまった」という話も聞かれたりします。

 

落ちてしまった方は、結構採択率低いんじゃないか?と思う方もいるかもしれませんので、今日は勝手に採択率をまとめてみました。

 

6次公募までの採択率は60%前後で推移中

 

本記事作成時点(2023年10月)では、過去の採択率について、「事業承継・引継ぎ補助金」公式ページにて公表されています。

 

この補助金は過去何度も受付をしている定番の補助金となりつつありますが、最近は一年の内に申請時期が何度もあり、使いやすさもアップしているような印象です。

 

時系列に沿ってその採択率をまとめてみるとこんな感じになります。

 

 

表だとちょっと見にくいので、グラフにしてみるとこんな感じです。

 

最近では、どのタイプの補助金でも、概ね採択率60%程度で推移しているような印象です。

 

令和4年度当初予算のデータはなぜか記載が無かったのですが、以前こちらの記事でもご紹介しましたが、概ね80%程度の採択率と高かったようです。

「事業承継・引継ぎ補助金に採択されなかった?」採択率まとめ

 

実は、令和4年度当初予算の申請期間と、令和3年度補正予算2次公募の申請期間が時期として被っていたので、申請する側としては「どちらに申請しようかな?」という状態でした。

 

令和3年度補正2次が上限600万円で補助率2/3に対し、令和4年度当初が上限400万円で補助率1/2と、令和3年度補正2次の方が手厚い内容でした。この結果、令和3年度補正2次に申請者が流れた可能性もあり、人気のなかった令和4年当初の方がかなり高い採択率になった?ということもありました(これはあくまで推測)。

 

審査基準は明確に示されていませんが、あまり申請者が殺到すると採択率が落ちるという可能性があるのかもしれません。予算は限られているはずですからね。

 

とりあえず、採択率は60%程度なので、

「とりあえず申請しておいて、採択されたらラッキーなもの」

くらいの認識で取り組まれるとよいかと思います。

 

ちなみに、どのタイプの申請が適しているかは、補助対象となる取り組みの内容や経費の種類に応じて異なります。

「経営革新事業」→M&Aを契機とした設備投資・販路開拓などに利用できる補助金

「専門家活用事業」→M&Aで使うアドバイザーや専門家などに利用できる補助金

「廃業・再チャレンジ事業」→譲り受けた事業の一部を廃業する場合や、M&Aで事業を譲り渡せなかった事業者が再チャレンジする際などに利用できる補助金

詳しくはこちらの公式ホームページに動画付きで詳細が記載されているのでご参考ください。

参考 (外部サイト)事業承継・引継ぎ補助金事業承継・引継ぎ補助金

 

採択されやすくなるにはどうしたらいい?

 

どうしたら採択されやすくなるのでしょうか?

 

採択されるかどうかの審査基準は細かくは開示されていないので、運任せで申請するしかないと思われる方もいるかもしれませんが、公募要領を読むと対策を練ることができます。

 

考えられる対策としては次の3つです。

・補助金の趣旨に沿ったM&A等をする

・加点事由を満たす

・業績が悪化している会社のM&Aを優先?

それぞれ解説していきます。

 

補助金の趣旨に沿ったM&A等をする

この補助金は税金から賄われていますので、きちんと理由のつくようなM&A等でないといけません。

 

公募要領を見る限りこんな感じの観点で補助金を考えるのがよいかもしれません。

 

「経営革新事業」で申請するのであれば、行おうとしている経営革新が現実的かつ、効果的に、顧客や市場において新たな価値を生み出しているかいるかどうかという観点。ただ漫然と、たらればで計画を立てるのではなく、どういった顧客や市場をターゲットにしているのか、事業内容やスケジュール、コンセプトや実施手順が明確にして計画を立てる方が良いと思います。

 

「専門家活用事業」で申請するのであれば、買手側は、買収の目的・必要性があることや、買収によって雇用が守られる、取引先との取引が継続できるなど地域経済へのよい影響が見込めるかという観点。売手側も、譲渡の目的・必要性、地域経済へのよい影響が見込めるかという観点。買手の財務内容は健全である方が望ましいようです。

 

「廃業・再チャレンジ事業」で申請するのであれば、廃業に伴う自社社員の再就職方針や取引先への支払い方針が明確かどうかや、これまでの技術やノウハウを踏まえて再チャレンジは実現可能かどうかという観点。

 

M&Aの方法としては「事業譲渡」というスキームが度々取られますが、従業員が異動しない、取引先の引継ぎも発生しないような「これって事業の引継ぎって言わなくない?」というようなケースは本補助金の対象にならない点注意です。

 

飲食店の居抜き物件だけ引継ぎます、など事業を引き継いでいると言いづらいケースは補助金の回を重ねるごとに対象から外れるなど厳しくなっている印象があります。

 

加点事由を満たす

本補助金には審査上の加点事由というものが設けられています。

 

準備は大変ですが、クリアできれば採択に近づくようなものかと思いますので、該当するようであれば可能な限り提出しておきたいものです。

(中には顧問会計士がハンコを押すだけのようなものもあるので一度相談してもよいかもしれません)

 

例えば、申請件数の多い「専門家活用事業」では以下のようなものが加点事由とされています。

必要な資料も併せて記載します。

【加点事由(7次・専門家活用事業)】※⑦~⑨は買手のみ

①「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けている場合
 ✓中小企業の会計に関する基本要領のチェックリスト※顧問会計専門家印のあるもの
 ✓中小企業の会計に関する指針のチェックリスト※顧問会計専門家印のあるもの
②経営力向上計画の認定、経営革新計画の承認又は先端設備等導入計画の認定書を受けている場合
 ✓(経営力向上計画)経営力向上計画の認定書および申請書類
 ✓(経営革新計画)承認書
 ✓(先端設備等導入計画)認定書
③地域未来牽引企業である場合
 ✓地域未来牽引企業の選定証
④中小企業基本法等の小規模企業者に該当する場合
 ✓直近期の法人事業概況説明書の写し
⑤(連携)事業継続力強化計画の認定を受けている場合
 ✓交付申請時に有効な期間における、(連携)事業継続力強化計画の認定書および申請書類
⑥ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組みに該当する場合
 ✓交付申請時に有効な期間における、基準適合一般事業主認定通知書の写し
⑦健康経営優良法人の場合
 ✓健康経営優良法人の認定証
⑧サイバーセキュリティお助け隊サービスを利用している場合
 ✓独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が登録・公表した「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用が確認できる書類(申込書及び請求書等
⑨賃上げを実施する場合
 ✓賃金引上げ計画の誓約書
 ✓従業員への賃金引上げ計画の表明書
 ✓交付申請時点での直近の給与支払期間における賃金台帳の写し

 

2023年10月現在、申請受付中の7次公募であれば、公募期間が2カ月程度あるので、時間に余裕がある人の方が有利といえるかもしれません。

 

もし、採択率を少しでも上げたいのであればできるだけ早く着手することをお勧めします。

 

業績が悪化している会社のM&Aを優先?

これは、審査基準に記載されていない内容なので「?」マークでの記載としました。

 

「専門家活用事業」の補助率の内容としては、以下のようになっています。

 

売手側が得られる補助金の補助率を見ると「補助対象経費の1/2か2/3以内」となっています。

 

補助金をもらう側としてみたら当然2/3の方がたくさん補助が得られるので2/3で進めたいところですが、2/3が適用されるためには以下の条件があります。

【売り手支援型の補助率に関して】
以下①②のいずれかに該当する場合は、補助率を 2/3 以内とする。

① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者
―具体的には、直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度において、
(1)直近の事業年度(申告済み)と 2 期前の事業年度(通年)
(2)直近の事業年度(申告済み)及び交付申請時点で進行中の事業年度のうち、それぞれ任意の連続する 3 か月(当該期間の前年度同時期)の平均
上記(1)(2)のそれぞれの期間における営業利益率を比較した場合に、低下していること。

② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者

※上記①②に該当しない場合、売り手の補助率は 1/2 以内とする。

※抜粋:事業承継・引継ぎ補助金「専門家活用事業【公募要領】7次公募」

 

つまり、物価高等の影響で利益率が下がっている、赤字になっているなど財務資料を見ても分かるような会社については、たくさん補助が得られるという方針になっているということです。

 

M&Aをすると売手というのは現金を手にすることができます。

 

業況の良い会社ほど、たくさんの対価を得られることから、そういった売手には少ない補助率にしましょうということなのかもしれません(その分、必要としている人に補助金が回るのであればそれは良いかもしれませんね)。

 

先ほどの補助金の趣旨の話とも繋がるのですが、業況が悪いけど会社が倒産してしまっては従業員が路頭に迷ってしまう、という会社をM&Aで救えれば、地域経済を守ることにも繋がったりしますので、そういった方がM&Aをするのであれば是非利用したいところですね。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

採択されるか採択されないかは分かりませんが、もしM&Aをするのであれば申請を検討してみたらよいかと思います。

 

この補助金は費用負担型の補助金なので、利用者が得するのではなく負担が軽減されるというものです。

 

なので、元々の費用負担を減らしつつ、さらに補助金を使うというのが効果的です。

 

M&A関連業者の手数料は本補助金で上限としている600万円程度の額をゆうに超えるような設定をしている業者も多いので、まずはこちらの記事なども確認しつつ、良心的な手数料設定をしているような業者に依頼されることをお勧めします。

「M&A手数料って平均はどのくらい?」中央値は500万円という事実

 

最後までお読みいただき有難うございました。

ご意見、ご質問等あれば下のお問合せフォームよりお問合せ下さい。

(補助金に関する内容については事業承継・引継ぎ補助金事務局へお問合せ願います)

 

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