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着手金詐欺?中間金詐欺?月額報酬詐欺?M&Aで騙されるポイント

お悩み社長

M&A仲介会社のモラルが低いから詐欺が怖いんだけど・・

 

M&A仲介ではモラルの低いプレーヤーがたくさんいることはこのブログでも度々お伝えしてきました。

 

M&Aを巡る詐欺についても色々な種類が出てきていますが、M&A仲介者の目線で、実際に起こり得る問題なのか、起こってしまう場合というのはどういうケースなのかちょっと筆者なりに考えてみたいと思います。

 

それではいきましょう!

 

着手金時に起こる詐欺

 

これはかなり前から言われている詐欺で、実際に多数発生していると思われます。

 

売手も買手もどちらも詐欺に遭う可能性があるものですが、要は、「成約しないのに、成約をちらつかせて金銭だけを取る」というものです。

 

売手と買手で少し分けて説明します。

 

売手の着手金詐欺の場合

 

以前、このような意見もありました。

 

主に売手が遭う詐欺ですが、「御社は高く売却できる」とか適当なことを言って仲介契約を締結、着手金を受取り、いざ買手を探す段階になってみると「なかなか条件が合う買手がいないですね」とか適当なことを言ってM&Aが成立しないという話です。

 

本当に条件が合う買手がいないのか、単純に買手を探していないのかは売手からは分かりません。実際仲介会社内で買手探しをきちんとしていないケースもあります。

 

買手を探していないということであれば、始めから着手金を騙し取るのが目的なので詐欺も疑う余地はありそうです。当たり前ですが、買手を探さなければ100%成約しないのは明らかだからです。

 

ただ、本当に探したけれど条件が合う買手がいないというのは普通にあり得ます。探し方などに問題はある可能性は否めないので、非常に抽象的な話になってきます。

 

ちなみにですが買手は高ければ買いません。そもそも売手の金額目線を上げるということ自体が成約率を下げていることと因果関係があるとも言えるので、ある意味仲介会社の不手際によって買手が付かない状況になってしまったと捉えるられるケースも皆無ではなく、その結果売手の支払った着手金が払い損になってしまうという悲劇も起こってしまいます。

 

場合によっては仲介会社の落ち度があることもあるので、返金要求する等の対応を検討するのも一つだと思います。

 

そもそも、仲介者の立場でありながら売手に売買金額を上げるというような買手にとって不利益のある利益相反行為をしている時点で仲介者として問題です。

 

近年ではM&A業者が急増している状況ではあるので、売手から選んでもらいたくて、仲介者の立場を忘れてリップサービスしてしまうということが横行しています。

 

「会社を高く売りたい」という売手の心理につけ込んだ手口ではあるので悪質ですが、着手金を無駄にしたくなければこうした違和感にも気づく必要があります。

 

着手金無料という仲介会社を選べばこういう詐欺は防げるとも言えますが、「完全成功報酬」と謳っている仲介会社の中には最終の最低報酬額を高額に設定しているような会社もありますので、着手金無料という言葉に踊らされないのも重要だと思います。

 

買手の着手金詐欺の場合

 

これも某仲介会社の営業で話題になった事例です。

 

買手がM&Aの検討を始めるタイミングというというのは、既に売手が仲介会社が仲介契約を締結して、仲介会社が買手とコンタクトを取ったときが多いです。

 

このときの買手と仲介会社のやり取りは、企業概要書という売手の企業情報が細かく書いてある資料の提供から、売手との面談設定、基本合意を締結して売手・買手の一対一の独占交渉開始、と続きます。

 

買手から着手金を取るのは、企業概要書の提供時点や売手との面談設定時のときが多いです。

 

売手と買手が基本合意を締結するまでは、買手としてはその売手と交渉できるかどうか分からないものなので、仲介会社に騙されて着手金だけを取られる詐欺もあります。

 

例えば、仲介会社が企業概要書を提供するも、実際にはそんな案件がないか、もしくは、買手を募集している状態ではない案件だった、というケース。あるいは、本当に案件は存在して買手を募集しているのは事実だけど、既にほぼ買い先が決まっているというケースみたいな感じです。

 

誰が見ても良い案件(事業が魅力的、財務状況に対して希望条件が割安とか)に多いですが、始めからその買手が交渉に進む可能性は無いのにも関わらず、それを隠して着手金を騙し取るという手口と言えます。

 

買手からしてみても、一番最初に仲介会社と秘密保持契約を結ぶ際に「売手との直接交渉禁止」という制約を受けてしまうので、案件が実際にあるのか、決まった買手がいるのかどうかなんて売手に直接聞けず、嘘か本当か分からない仲介会社の話を真に受けて着手金を捨てる、みたいなことになってしまいます。

 

仲介会社としては、着手金を払うかどうかで本気度を確認するみたいな論法で話すことも多いですが、それはあくまで仲介会社の立場の論理なので、「払いたくなければ払わない、その案件は仲介会社が悪いから検討しない」という判断でも良いと思います。本当に買手探しに困っているなら仲介会社側が折れることも営業上あると思うので。

 

 

基本合意時(中間金)に起こる詐欺

 

着手時ではなく基本合意時に起こる詐欺についても触れてみます。

 

このような話が以前上がりました。

 

売手もグルで買手を騙して金銭を奪うという詐欺のようです。

 

仲介会社だけでなく売手が共謀すればできなくもない内容かと思いますが、基本合意というのは売手と買手の間で具体的な金額条件等も明記して締結するものなので、どうやってブレイク(破談)させるのかなど正直筆者はあまりピンときていません。

 

基本合意で得られる買手の中間報酬は多くても数百万円というくらいなので、そのために売手は自分の会社の情報(企業概要書)を出して、両者面談の時間を作り、揉めること必至の基本合意後の破談を心労かけてやるかというとどうかなという気がします(さらにこの数百万も仲介会社と分ける感じですし)。

 

あと、仲介会社としても、「こんなスキームで金銭を奪い取りましょう」という売手に持ち掛けた時点で「なんや、この仲介会社、ヤバいな」と売手に言われるのは間違いないので、仲介会社が自社の信用を考えるとあまり起こり得ないかなと筆者は思います。

 

どちらかというとこういう感じの中間金詐欺の方が現実的な気がします。

・致命的な瑕疵(反社と関わりがある、労働組合があり反対必至、株の買い集めが不可能、など)がある売手の案件

・売手はその瑕疵を致命的だとは思っていないけど、仲介会社はそれに気づいている

・その致命的な瑕疵を買手には隠して案件紹介

・買手もその瑕疵を基本合意前に知らずに、売手と基本合意、仲介会社に中間金を支払う

・買収監査時にその致命的な瑕疵が発覚

これなら仲介会社単独でやることができてしまいます。

 

これをやられてしまうと、買手としては「案件を破談にさせて中間金を捨てるか」「致命的な瑕疵のある会社を買収するか(成功報酬まで支払う)」どちらになってしまいます。

 

当然仲介会社は、買手が買収監査でこの瑕疵に気づかなければそのまま買収してもらって成功報酬を得ようとします(株の買い集めができない場合はM&Aできないですが)。

 

同時に売手としても、中間金を支払うケースというのは多いのでここでの被害者とも言えます。

 

基本合意してようやく話が前に進むかと思ったのに、重大な瑕疵を隠していたのかと買手に言われたり、話が破談になるわ、仲介会社に支払った中間金は返ってこないわ、で踏んだり蹴ったりです。

 

こうした状況は、仲介会社の善管注意義務違反に当たるような話ですが、モラルの低い仲介会社は致命的な瑕疵があることを気づいていなかったと言い張るような気もします。

 

致命的な瑕疵に気づかないようなレベルの低いコンサルタントを選んではいけませんし、瑕疵に気づいてもそのまま進めてしまうようなモラルの低いコンサルタントを選んでもいけません。

 

 

ちなみにM&Aというのは、終盤に近付けば近づくほど売手と買手の情報格差が無くなっていきます。なので、仲介会社主導の詐欺というのは単独ではしにくくなります。

 

何度も売手と買手が面談していけば、お互いに相手の人柄なんかも分かってくるので、仲介会社がおかしなことをすれば気づかれてしまうリスクが高まるからです。

 

なので、M&Aの初期段階では仲介会社を慎重にみて、話が進んできたら取引の相手方を慎重にみる、というのが良いのかもしれません。

 

 

月額報酬(リテーナーフィー)に起こる詐欺

 

これは実際にM&Aいろは塾にご相談にこられた方がおっしゃっていた話です。

 

とあるM&A専門家に月々数十万円という月額報酬を支払い、買手探しからその後の段取りまで進めてもらっているという売手の方でした。

 

M&Aは途中から進みが遅くなり、「月額報酬を取るためにわざと間延びさせているのではないか」「会社の状況もあまり良くないので、買い叩くために会社がもっと傷むまで待っているのか」という疑念を抱かれていました。

 

多くのM&A仲介会社は月額報酬は取らずに成功報酬で徴収するスタイルですが、その仲介会社(大手上場仲介会社の関連会社)は月額報酬で受けているようでした。

 

全てが詐欺に該当するわけではないですが、M&A仲介は売手と買手の段取りを調整する役割も担っているので、スケジュールも仲介会社でコントロールできる余地が無くはないことを考えると、ちょっと危険かなと思います。

 

悪意のある仲介会社であれば、売手には「買手の決定機関(取締役会)が月に一度でそれまでは何も話が進まない」とか「銀行と買収資金の調達について話をするから」みたいな話をして時間稼ぎをすることを考えるでしょう。

 

M&Aでは買手が検討する時間というのも当然発生しますが、この間売手は待つのみなので、何も仲介会社に依頼するわけでもないのに報酬だけ発生するというのは腑に落ちないと感じる方も多いと思います。

 

M&Aの進め方が分からない売手が月額報酬のある仲介会社を選ぶと、「必要以上にスケジュールを先延ばしさせられて、その分費用が発生する」というリスクはついて回るので、成功報酬で依頼するか、透明性のある形でタイムチャージで管理するなどを依頼するのもよいと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

M&Aでは、詐欺に遭わないように、よほど信用がおけなければ「M&Aについて分からないから専門家に全部任せる」というのは辞めた方がよいと思います。

 

何か違和感を感じるようなことがあれば、他のM&A専門家に聞いてみるのがよいです。

(中小企業のM&Aではガイドラインもあり、セカンドオピニオンを他のM&A専門家に聞くというのもしやすくなってきました)

 

また、M&A仲介会社についておかしいと思うようなことについては中小企業庁が設置しているこちらの通報窓口もあるので、M&A業界から悪質な業者を排除するために連絡してもよいでしょう。

問題のあるM&A仲介会社は苦情窓口へ通報?情報提供窓口の使い方

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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