2024年10月1日付けの公表資料で、上場M&A仲介の名南M&Aが「MAfolova(マフォロバ)」を買収する旨の公表がありました。
M&A仲介会社がM&Aのマッチングサイトを買う、という話ではありますが、こういった動きについて少し考えてみたいと思います。
MAfolova(マフォロバ)とは
マフォロバ株式会社は創業2018年5月、設立が2020年12月のM&Aマッチングサイトを運営するプラットフォーマーです。
元々は人材系の大手であるエン・ジャパンという会社が一事業として運営していた「MAfolova」ですが、M&Aアドバイザリー会社であるピナクル社に売却する際、新設分割したため、M&Aプラットフォームを運営するマフォロバ株式会社という法人が新設されました。
今回の名南M&AのIR資料をみる限り、さらにマフォロバ株式会社が新設分社型分割のような形でMAfolova事業を持った株式会社マフォロバ準備会社という子会社を設立して、これを名南M&Aに売却するようです。
形式的にはどうであれ、要は、エン・ジャパン⇒ピナクル⇒名南M&Aという変遷で事業主体が変更しているというところかと思います。
Mafolovaがリリースされた時代背景としては、人材系の会社が自社のクライアントがもつ買収ニーズを生かしてM&Aプラットフォームに参入していた時代で、同時期にビズリーチがM&Aマッチングサイト「ビズリーチ・サクシード(現:M&Aサクシード)」なども出来ていました。
それより前から「トランビ」などのM&Aマッチングサイトはありましたが、いわゆるオープン型のマッチングサイトが主流でした。MAfolovaやビズリーチ・サクシード(現:M&Aサクシード)というのはクローズドのマッチングサイトで、一般のサイト閲覧者がどんな売り案件があるのか見れない仕組みが特徴です。
オープン型でもどこの会社か分からないようにはしていますが、案件を掲載する側としては身バレ防止の観点からはクローズド型の方が安心できる部分もあったのもあって広がりを見せました。また、これらのマッチングサイトは買手側が基本的に法人で、よくわからない個人の買手からの興味本位オファーをもらわなくて済むという部分からも、M&A業者が利用し始めた感は実際あったと記憶しています。
ただ、M&Aマッチングプラットフォームの運営は利用者獲得のための先行投資や監視(利用者が問題行動を取っていないか、中抜き行為など規約違反が無いか、など)も必要になるので、どのプラットフォームとも中々運営は厳しい状況は決算公告などを見ていても感じる部分があります。
そんなことから、途中で買手やM&A業者から月額の利用料を取るような設定に変えるプラットフォームも多かったのですが、MAfolovaは成功報酬型(月額は無料)を維持していたところもあり、買手やM&A業者に一定のファンはいるように思います。
名南M&AがMAfolovaを買収するメリット
M&A仲介をする会社がM&Aマッチングプラットフォームを買収すると色々なシナジー効果があると考えられます。
名南M&AのIR資料では、「アドバイザーの対面支援」などもその構想として入っているようです。
一般に、買収するプラットフォームがどのようなサイトかにもよりますが、MAfolovaのようなサイトの場合、既にたくさんの買手・売り案件の登録があると思いますので、買収する側の会社としては、例えばこんな買収メリットがあります。
・買収ニーズを一気に獲得できる
・どんな売り案件の登録があるか把握できる
・M&Aコンサルティングにつなげられる
MAfolovaについては買手が買収ニーズを登録する仕組みでもあるので、どの買手がどんな会社が欲しいかも分かる情報がたくさんあります。これを獲得することで、例えば自社の仲介案件のマッチングに利用できるなどのメリットがあります。
もちろん買収までせずともMAfolovaを業者として利用すれば同じことですが、胴元なので利用料がかからないとか、非公開の情報などがあればそれが利用できるということがあるかもしれません。
また、M&Aプラットフォームの運営側は当然どのような売り案件が登録されているかも知ることができます。多分やり取りしているメッセージとかも見れるでしょう。
どのような会社がどういう条件で売却を希望しているのか、IMなども見ることができれば事業内容や財務内容まで知ることができますので、もし自社で保有している買手のニーズがあればそれを提案するということもできるのかもしれません。もちろん、他のM&A業者が掲載している売却企業に、プラットフォームを運営している会社がM&Aの営業なんかをしていたら問題になると思いますが、運営側から買手FAとして提案させていただけないか、という打診はあるのかもしれません(以前、筆者もM&Aプラットフォームを利用していて似たような話が来たことがあります)。
前述の通り、M&Aプラットフォームというのは、ものすごい利益率が出るかというというと必ずしもそうとは言えない現状があります。その点、基本的に利益率の高い仲介サービスを提供ことでグループとして利益率が改善することもあるのかもしれません。例えば、なかなかマッチングしない案件に仲介を入れてみてはどうか、と営業し、グループの仲介会社のリソースを投入するとかです。
実際、仲介が入ると仲介手数料もかかるので、顧客からは嫌がられる可能性はありますが、運営側としてみれば新規営業しなくてもプラットフォームを運営しているだけでリードを獲得しているようなものなので有効活用したいと思うでしょう。
あんまりM&Aプラットフォームに仲介会社の色を出すと、そもそも仲介会社を使いたくないからプラットフォームを使っているという層が離れてしまう可能性もあったりするので、バランスを取りながら利益率を上げていくという難しい舵取りもあるのかもしれません。
今後求められる取り組み
近年では、初めから売手を騙すつもりの買手の存在も確認されているので、買手からオファーを貰える仕組みのM&Aプラットフォームは特に対策が迫られています。
詐欺師は自らカモを探すものという前提であれば、売手側から能動的に買手を探すということであれば詐欺に遭いにくいと思いますが、買手側から売手にオファーを出すという仕組みの場合、どうしても売手がオファーをもらった買手の中から交渉する相手を選ぶことになってしまいリスクは高くなります。また、売手が能動的に買手を探す、といっても、間に仲介会社がいる場合、その仲介会社が買手からオファーを貰うタイプのM&Aプラットフォームを使っていたら同じことなので、ここもやはり注意しないといけないです。
以前ビズリーチ・サクシード(現:M&Aサクシード)でM&Aアドバイザーアワードを発表していましたが、金融機関やそれなりの規模のM&A仲介会社もこうしたM&Aプラットフォームを利用して買手を探していることは公表されています。
M&Aプラットフォームでは、最初の段階でプラットフォームに登録する買手の審査を行っているところが多いですが、この点についても今後はより厳密に行う必要が出てきます。
買手の会社名だけでなく、代表者や役員が過去にM&Aに関係する問題を起こしていないか、詐欺などの犯歴が無いかなども確認が必要なのかもしれません。
不審な買手の登録を許してしまうことで、図らずもM&Aプラットフォームが犯罪に加担しているような感じに受け取られてしまうのは運営としてリスクと考えるべきでしょう。
以下のような事例は、初めから買手が約束を守るつもりが無く損害を与える悪意があったとも捉えられる事例なので、契約書上でどれだけ縛っても危険な買手を排除することは難しいでしょうから、ここはプラットフォームを利用する側としても安心しきらずに、M&Aを進める上での不審な点(例えば、何を目的で買収するのかが極めて曖昧な説明だったとか、買手の資金力に不安な言動があったとか、幹部が急に入れ替わったとか、色々です)があれば、一旦立ち止まるのがよいでしょう。
ルシアンホールディングスのM&A詐欺?手法とその対策
売手側はM&Aの検討が初めてという方が非常に多いので分からないことも多いと思いますし、割と性善説で進めてしまう方も多いので、自分が思っている以上に注意してこうしたサービスを使った方がよいと思いますし、仲介会社などを使うにせよ、ノルマに追われているようなM&Aコンサルタントに依頼せずに、本当に信用できそうなコンサルタントを探すのがよいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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