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「悪質なM&A仲介会社15社に再発防止指示?」公表されていない仲介会社って一体どこ?

お悩み社長

M&A仲介会社に再発防止指示が出たらしいけど、一体どこの仲介会社に出たの?

 

2024年10月30日に、経済産業省が中小企業のM&Aで悪質な買手企業をへの仲介を繰り返した事業者15社に対して再発防止策を取るよう指示したと報道されました。

 

これに対してネットの反応は、

「中小企業庁が公式認定したんだから処分した15社の実名は挙げるべき」

「公表されないのはなぜなんだろう?正直意味が分からない」

という反応もあるようです。

 

筆者も、これは公表してもいいのではと思いました。ただ、M&A支援機関制度が始まって依頼、登録取り消しという話が出なかったのを考えると、ほんの少し行政も動き出したなという印象ではあります。

 

M&Aに関するガイドラインも強化はされてきていますが、まだまだヤバい業者はたくさんいます。

 

ここでは、形骸化するんじゃないの?というM&A支援機関制度についても考えてみたいと思います。

 

 

中小企業庁がついに登録機関取り消しに乗り出した?

 

今回の報道は、以前こちらの記事でも取り上げた売手を騙す買手について、この買手の仲介を繰り返した仲介会社に対して再発防止策を講じるように指示した、ということみたいです。

ルシアンホールディングスのM&A詐欺?手法とその対策

 

仲介会社が詐欺をしたわけではないものの、詐欺をするような買手を紹介したという紹介者責任はあるので、かねてから「仲介会社の責任は?」と非難される状況ではありました。

 

このブログではずっとM&A仲介業界ってヤバいよ、ヤバい業者いるよ、って言い続けていますが、国の方では徐々にそんなヤバい業者を統制するために中小M&AガイドラインやらM&A支援機関制度やらを作って縛るようにはなってきました。

 

このM&A支援機関制度の意味合いとしては、国内でM&A仲介業をするのであれば中小企業のM&A支援機関制度に登録(中小M&Aガイドラインも遵守)しないとお客さん側(M&Aの売手や買手)が補助金を申請できないようにしよう、というものです。そして、業者が何か問題を起こすとこの登録が解除されるというペナルティを課すことで、業者にきちんとM&A支援させよう、という趣旨のものです。業者の立場としては、お客さんが補助金使えないとなると営業に不利なので、とりあえずM&A支援機関に登録しておこう、という流れになります。

 

とはいえ、M&A支援制度ができて以来、登録を解除されたという話は出ていませんし、悪質な業者として社名が公表されたことも筆者の記憶では無いです。

 

筆者としては、「この制度は形だけなのかな?」と思っていたくらいです。

 

そんな中で今回の「再発防止策の指示」ですが、「登録解除」とまではいかないまでも一応動いているのかな、という報道になります。

 

どうして時限的にでも登録解除をしないのか、については筆者も理解に苦しみますが、大手仲介会社だから影響が大きいとみたのか?直接的な詐欺の加害者ではないから?なのでしょうか。

 

買手が売手のみならず仲介会社も欺いているのであれば、仲介会社は気付けずに仲介して成約させてしまう、ということもあるかもしれませんが、それでも業者に対して注意で終わるのだとすれば被害にあった売手としてみたら納得いかないのではと思います。

 

 

ちなみに、「国は詐欺事件に関わったとされる仲介会社を全部知っているの?」と思う方のために一応補足しておくと、国は全部把握しているはずです。

 

というのも、業者がM&A支援機関の登録をすると、年に1回実績報告をします。

 

この実績報告では、どの売手とどの買手がどのような財務状態の会社をどのくらいの譲渡金額でM&Aしたのか、という情報を実名で報告するため、その報告内容を確認すれば、ルシアンホールディングスのような買手の仲介をした業者はすぐに割り出せます。複数回同じ買手に買収してもらっている、という事実もこの報告内容で分かります。

 

こちらの記事のように、自ら自分の会社が事件に関与したと公にする仲介会社もいる一方で、隠そうとする仲介会社もいる状態なので、登録解除までいかずとも、関与した仲介会社の実名は公表した方がよいのでは?と筆者は思います。

「ペアキャピタルがルシアン事件の仲介?」報道され始めた詐欺事件

 

 

公表されていないM&A仲介会社は一体どこ?

 

では今回報道されている「M&Aで悪質な買手企業をへの仲介を繰り返した事業者15社」とは一体どこでしょうか?

 

筆者は数社ほぼクロだと確信のある仲介会社と、グレーだなと思われる数社の仲介会社は把握しています。

 

ここで実名を記載すると筆者が訴えられる可能性もあるので敢えて記載しませんが(M&A業界はそういうスラップ訴訟が多い風潮があります)、大手・中堅仲介会社及び大企業の資本の入ったアドバイザリー会社、あとは某金融機関でも紹介しているのではと思われる情報はあります。気になる方は個別に筆者にお問合せ下さい。

 

1名のコンサルタントが1年で成約できるのは0~数件程度、というところの中で、悪質な買手企業に当たる確率は成約件数の絶対数が多い大手・中堅仲介会社の方が実績としてそこに入り込む可能性が上がるというのもあるでしょう。

 

ただ、筆者の感覚からすると構造的な部分やモラル的な部分で大手・中堅の方が問題が起きやすいと感じます。

 

大手・中堅仲介会社の方が、ノルマが厳しく、成功報酬にインセンティブ設計がされており、成約こそ全てという成果主義が根強いため、どんな買手でも買ってもらえるならゴリ押しするというのは、実務上どうしても発生してしまいます。筆者が聞いているこの手の問題の原因は「他に買手がいなかったため(詐欺を働く怪しげな買手を推してしまった)」というケースがほとんどです。

 

加えて、仲介会社は一定規模になると、買手ニーズの情報を集約して社内で共有することも多く、「〇〇系の案件は△△(買手)に持ち込みする」とルーティン化することもあります。一度、詐欺を起こすような買手でも社内データベースに登録されてしまうと、他の案件でも自動的に買手リストに上がってくるなんてこともあるでしょう。とりわけ今話題になっている詐欺を起こすような買手というのは、立て直しが得意な小規模なプライベートエクイティファンドのような体裁を取り繕って売手案件を物色していた傾向があるため、どんなジャンルの案件でも紹介を欲しがる、いわゆる雑食系の買手であり、どのような案件でも社内で作成される買手リストに名前が載ることもあります。その結果、意図せず、問題のある買手を色々な売手に紹介してしまうこともあり得るのです。

 

 

筆者が把握している、今回悪質な買手企業をへの仲介したとされる仲介会社の手数料は、売手側の最低報酬額でも数千万円と設定している会社もあるため、全仲介業者の中では高い部類に入る仲介会社も多く入っています。

 

売手からしたら高い手数料を払ってまで、問題のある買手を紹介してきたわけですので、まさに踏んだり蹴ったりでしょう。

 

筆者はこのブログで「高い手数料払ったからといってよいM&A支援になるとは限りませんよ」とは常々伝えていますが、具体的な仲介会社名と起こしている問題が紐づかないと売手にとってはあまり参考にならないところもあるので、やっぱり問題が起きるたびにどの仲介会社が問題を起こしたか、を実名で公表する方が顧客保護に繋がるものと思います。

 

 

登録解除してもいい不適切行為はまだまだある

 

今回は詐欺事件に関連して中小企業庁が動いたということですが、M&A業者の不適切行為はまだまだあります。

 

営業がしつこすぎる業者、架空の情報で顧客を誘引する業者、恣意的な想定株価を出す業者、勝手に買手に打診し始める業者、着手金取っても動かない業者、手数料を安く見せるために誤解を招く説明をする業者、仲介契約を解除しようとしてもごねて解約金を請求してくる業者、コンサルタントが横領している業者、など様々です。

 

以前こういう書籍で業者の問題行動についても取り上げていますので、興味がある方はご参考ください。

【お知らせ】「ヤバいM&A仲介会社にはもう騙されない!逆引き50選」を出版しました

 

ルシアンホールディングスの詐欺事件は巻き込み事故なのかもしれませんが、上記のような問題は確信犯的にやっている内容なので、むしろこちらの方が罪深い気もします。

 

こうした問題で中小企業庁には苦情の報告がたくさん来ているものと思いますが、そういったことに対して業者への処分は特に行われていないです。注意喚起のメールのみだと思います。

 

なので、筆者は行政も現場で起きている問題に対する対策は本気でやっているのか分からないですし、不十分だと思っています。

 

少なくとも野放しになっている悪質な業者は多数いますので、特に売主にとっては「自分の身は自分で守る」という意識で、色々な情報を収集しつつM&Aに取り組んで欲しいなと思います。筆者の方では、セカンドオピニオン的にヤバい業者に引っかからない方法や考え方もレクチャーしていますので興味があればお問合せ下さい。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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