書籍「M&A仲介会社からの手紙は今すぐ捨てなさい」好評発売中

「案件の囲い込みをするM&A仲介とは契約解除すべき?」解除方法についても解説

お悩み社長

M&A仲介会社に依頼したのに買手の紹介がないんだけどどうしたらいいの

 

こういったご相談をいただく機会が多いのですが、結論からいうと、躊躇せず仲介契約を解除しちゃって問題無いです。

 

だって、そのまま契約していても時間の無駄だからです。

 

筆者は仲介の立場でこれまで活動していますが、ご相談者さんの話を聞けば聞くほど、今依頼している仲介会社が特に何もしていないことが露呈していき、「それって、仲介会社の動きを待っていて何か状況に進展ありますか?」(実際はもうちょっと柔らかい表現でいいますが)という話になることがほとんどです。

 

仲介の立場を知っているから、仲介会社内でどういう扱いになっているか分かるんですよね。

 

仲介会社側も、律儀にギブアップ宣言する仲介会社もあれば、「もう少し解約は待ってくれないか」と食い下がる往生際が悪い仲介会社もいます。

 

いずれにしても、仲介会社を選び直した方が良いタイミングにきているケースも多いです。

 

ここでは、そもそも「M&A案件の囲い込みってOKなの?」ということに触れ、売主が取るべき具体的な対策について考えてみます。

 

横行するM&A案件の囲い込み

 

「案件の囲い込み」とは、売主から預かった情報を独占して、自社で買手を見つけることで両手取引を狙うことです。

 

M&Aとビジネスモデルが似ている不動産業界では度々に問題になる行為です。

 

不動産の場合だと、売主から物件を預かった不動産会社に登録が義務付けられている不動産流通情報プラットフォームの「レインズ」に登録はするものの、実際にそれを見た買手側の不動産会社がコンタクトできないようにする(ステータスを購入申込有とか一時紹介停止中、といった虚偽記載にする)ことで、自社で買手も見つけて、両手取引(売手からも買手からも手数料を徴収する)という、ことが問題となる案件の囲い込み行為です。

 

より多くの買手側の不動産会社がその案件にコンタクトできるようになることで売主の機会損失を低くすることができる、というのが「レインズ」なのに、悪質な不動産会社が両手で手数料を取るために行う不正行為とされています。

 

ただ、2025年1月からこれも厳しくなり、売主がレインズのステータスを確認することができるようになったので、売主が「あれ、まだ買手も紹介してもらってないのになんで購入申込有ってなってんの?」と不正に気付けるようになったようです。

 

では、M&Aはどうでしょうか?

 

M&Aの場合は、こういう意味では案件の囲い込みが当たり前のように行われています。

 

そもそも「レインズ」のような業者を跨いで売却情報を共有するプラットフォームはありませんし、宅地建物取引業法のような業者を縛る法律が無いです。あるのはガイドラインだけ。

 

なので、一方的に仲介会社が作った専任条項の入った仲介契約書を売主と結び、他の業者と仲介契約を締結させることを禁止して、競合仲介を排除しつつ自社で買手を探して、成約したら仲介手数料を両手でたっぷり取ることもできます。さらに、仲介手数料の上限を制限する法律も無いので、2,000万円、2,500万円といった高額な最低報酬額を設定していたりもします。

 

会社は不動産よりも秘匿性の高い情報だから同じような仕組みは難しい、という人もいますが、だからといってもこの仕組みは売主にリスクがあり過ぎに感じるのは筆者だけでしょうか。

 

最近では、完全成功報酬だからと気軽に仲介契約を結んでしまうケースもありますが、専任条項があると他の業者と同様の契約できなくなってしまい、結果仲介契約を結んだ仲介会社から勧められる買手とM&Aせざるを得なくなってしまう、という状況に陥りがちなので、「他の買手との接触機会がもっとあったならもっとよい条件で売却できたのに」なんてことも普通に起きていると思います。

 

M&A業者目線で言えば、一度囲い込んでしまえば1年かけても2年かけても買手さえ見つけてくれば売上にはなるわけなのでこのうまみは当然あるわけです。

 

そりゃ毎日電話なりDMなりで営業してしまいますよね。営業が激しいのはこういう背景もあるといえます。

 

 

ギブアップ宣言しない=囲い込み

 

M&A業者の「案件囲い込み」について定義づけするのであれば、「これ以上買手が見つけられないのにギブアップ宣言しない」という状態をいいます。

 

ギブアップ宣言というのは、M&A業者が売主に対して「もうこれ以上買手探せないから他の業者さん経由でも探してみては」と促すことです。

 

M&A業者にとって、「ここまで打診してみてどことも交渉が進まないようならこの案件難しいかも」というラインは大抵存在するので、そのラインまで到達したら、売主に対してもギブアップ宣言をするのがお互いの為です。

 

でも、こうしたことをしない業者もいます。

 

「いつか買手が現れるだろう」という受け身の姿勢で買手を待ちつつ、仲介契約については「どこか買手を連れてくるので」と適当なことをいって間を持たせるやり方です。

 

業者側が能動的に買手を探さないのでいつまで経っても買手候補先の提案もないですし、かといって仲介契約が解除されたわけでもないので他のM&A業者を使って買手探しをすることもできない、と売主はヤキモキする状況になってしまいます。で、大抵は時間を無駄にします。

 

なんでこんなことをするのかというと、多くのM&A仲介会社の社内では「成約件数」以外に「受託件数」もノルマ化されていて、これが減ることを嫌がるからです。

 

上場しているM&A仲介会社はIR資料でもこの受託件数を公表する傾向があり、投資家的にはこの受託件数を将来の売上の先行指標とする見方をするものなので、大きい仲介会社ほど体裁は重要視されている印象はあります。

 

でも「受託件数」のまま放置してても仲介会社とて売上に繋がらないので成約させる気も無いなら早くリリースすべきです。

 

売主としては、仮に「今色々と調査しているので」と業者に言われたとしたら、「どういう方法で」「どういう基準で」「いつまでに候補先を出し」「いつまでに打診結果を得るのか」と深く突っ込みましょう。多くの業者は聞かれないと答えないです。

 

あと、着手金を最初に払うようなM&A業者の場合、売主側が「最初に金払ったんだから契約解除するのもったいない」と感じてしまったり、業者側が「最初に着手金もらったのに何も具体的な話に進んでいないからギブアップ宣言しずらい」と感じてしまったりと、変なバイアスがかかっていつまでも契約がズルズルと継続してしまうこともあります。

 

 

さっさと解除しないと次にも進めない

 

M&A業者に囲い込みされてるな、と売主が感じたのであれば仲介契約を解除するのが良いです。

 

これは、現在依頼している仲介会社に解除の旨を申し出てもいいです。

 

また、そもそもの仲介契約に「専任条項」が無いのであれば、既存の仲介契約は有効だったとしても、他の業者を探し始めてもいいです。

 

よくある売主の感情として、「また新しい業者を探すの面倒だな」とか「また資料とか色々出すのが大変だな」とか思うものですが、買手候補先のアイデアというのはそれが無い業者にいくら期待しても叶わないものなので、むしろ「最初に選ぶ業者を間違えたから次はきちんとしよう」と気持ちを切り替えて取り組むのがよいでしょう。

 

実際のところ、資料類についてはどの業者でも大抵似たような資料が必要になるものなので、前回出した資料をそのまま新しい業者に出せばよいだけです。

 

もし、仲介契約を解除することについて業者が抵抗する姿勢を示した場合、先ほどの「どういう方法で」「どういう基準で」「いつまでに候補先を出し」「いつまでに打診結果を得るのか」を追求してみてもいいと思います。

 

囲い込みをする業者にとって嫌なのは、囲い込みしているだけなのに工数が発生することですので、囲い込みするよりも仲介契約解除する方がメリットあるなと思わせるわけです。

 

中には、着手金を払ったのに結局全然買手を連れてこなかった、というケースの場合は着手金の返金を要求するケースもあるでしょうが、ここについては結構反発する業者も多いです。「契約書に返還しない旨の記載があるでしょ」と主張され、泣き寝入りする売主も少なくないですが、弁護士を通じて返還を求める売主もたまにいます。

 

そもそもM&Aは成果が最初に約束できるようなものではないので、着手金を払うこと自体筆者は危ないものですよ、とお伝えしていますが、次の業者探しのときには同じ間違いをしないようにしましょう。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

M&Aについても、業者の利益と顧客の利益が異なることから顧客のリスクに繋がる行動を業者が取る可能性は普通にあります。

 

業界の仕組みを知っていないと対処が難しいケースもありますので、困ったことがあれば業界に詳しい方に相談してみましょう。

 

筆者へのご質問、ご相談も下のフォームより受け付けておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

お問合せ

    お名前任意

    メールアドレス必須

    お問合せ内容必須

    スパムメール防止のため、こちらにチェックを入れてから送信してください。