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M&Aしたら会社名が変わってバレちゃう?!

お悩み社長

M&Aされたら会社名も変わっちゃう?他の会社にバレる??
 

 

たまにこういう方いらっしゃいます。

 

M&Aでは、売手社長のこのような偏見も結構あるので、今回の回で説明していきたいと思います。

 

今回のお題

・M&Aしたら社名が変わる?!
・M&Aしたら従業員給与のコストカットが始まる?!
・うちの会社はすごいノウハウがあるので高く売れる?!
 
それではいきましょう!

 

 

 

M&Aしたら元の法人は無くなる?!

 
結論から先に申し上げますと、無くならないことが多いです。

 

 

株式譲渡を前提としてM&Aをすると、買手企業が売手企業の新しい株主となります。

※ここで「株式譲渡って何?」という方は下の関連記事をご覧ください。

株式譲渡?事業譲渡?どっちがいいの?

 

新しい株主としては、子会社となった売手企業をどうしようと勝手なのですが、すぐに合併しないことが多いです(ここでの合併とは親会社が子会社を丸呑みする吸収合併のケースで話します)

 

理由はそれぞれですが、例えば以下の理由があります。

・M&Aした直後に合併すると、社員の籍も異動したり、取引先との契約書も場合によって締結し直しになるため、経営環境に影響が出る可能性があるから
・合併すると、売手企業の従業員の給与水準も親会社である買手企業と同水準にする必要があるから
・買手企業にとってまだ詳しく理解していない売手企業を合併することで、潜在債務も同時に引き継ぐことになり、リスクがあるから
・異業種や同業種でも異なるビジネスモデルをしている売手企業を合併して、買手企業の社名で営業すると、買手企業本体のブランドイメージに影響を及ぼすから
・事業承継系のM&Aであれば、社名を引き継ぐことがそもそもの条件であるから など

 

もちろん、買手企業としては、繰越欠損の引継ぎなどの税務メリットや管理面の簡略化、などで合併は本来メリットはあるのですが、いきなりこれをやるとインパクトが…、ということやが合併するにあたって税制適格になるかどうかという問題もあるので、普通はしばらく売手企業の法人格を残した状態で経営を行うことが多いです。

 

どうしても「〇〇株式会社という社名の後世に残したいんだ!」と主張されるのであれば、交渉の初期の段階でそう伝えておけばOKです。別に「この売手はなんて傲慢なんだ」ということにはなりません。

 

ただ、通常は売手企業よりも買手企業の方が規模が大きく信用力もありますので、その看板を使って営業したら、この会社はもっと成長するのではないか、という視点は持っておいてもよいのではと筆者は思います。

 

筆者の経験では、買手企業に「M&A後に合併したい」といわれたケースと「合併したくない」といわれたケースの両方を経験しています。

 

「M&A後に合併したい」という買手会社は、人材派遣の大手でしたが、彼らの戦略上M&A後概ね数年で吸収合併を行います。
 
 
人材派遣の会社というのは、通常、人しか資産がないので、吸収合併も容易ですし、間違いなく親会社である買手企業のネームバリューで派遣先の企業と交渉した方が都合が良いという訳です。

 

一方、「M&A後に合併したくない」という買手企業は、教育関連の大手でしたが、ブランド戦略も上手くいっており高額な授業料が獲得できる仕組みが整っていました。

 

M&Aで買収しようとしていた会社は授業料は安いが生徒の回転率もよいというビジネスモデルだったので、これを買手企業の社名で営業すると買手企業本体に安売りしているイメージが付き具合が悪い、ということでした。

 

また、雇っている先生の給与水準もかなり差があったので、合併によって給与水準を上げるとそもそも経営が成り立たない、という事情もありました。

 

買手企業によって様々ですが、社名を変えたくないのであれば、買手にそのような話も初期の段階で伝えておくとよいでしょう。

 

それほど長期でなければ、契約書上でも当面は社名を変えないことを握ることもできます。

 

M&Aしたら従業員給与のコストカットが始まる?!

 

これはまずないです。

 

理由は簡単で、給与を下げることで多くの従業員が離職する可能性があるからです。

 

従業員が離職した後は、事業について何も知らない新しい株主兼経営陣ということになるので、これで会社がうまく回る訳がないですからね。

 

ただ、役員については少し事情が異なるケースがあります。

 

役員でも会社にインパクトのある方は、M&Aの交渉の過程で売手企業の株主とセットでこの会話に参加するケースもあります。

 

更に、その役員が株式を持っていれば、いくらで買手企業に株を譲渡するか、という交渉について、一定の発言力を持つようになります。

 

そういった過程で、「株は高く買うが、今後の役員報酬は少し下げさせてもらう(もちろん一般の従業員の給与は変わらず)」という条件が、買手企業から出るケースもあります。

 

こういう話であれば、役員としては、M&Aの実行時にそれなりのお金を手にできるので、納得しやすく、引き続き頑張ろうとなることもある訳です。

 

筆者が対応した案件でも、買手企業側の会話として、

「ここの会社(売手企業)は魅力的だけど、現職の役員の報酬が高すぎる。子会社の役員が親会社の社長よりも高い報酬なのは示しがつかないので、ここは調整しないと…」

という話が出たこともあるので、買手企業のバランス感による調整もありそうですね。

 

うちの会社はすごいノウハウがあるので高く売れる?!

 

本当にきちんとしたノウハウがあれば、、ですね。

 

筆者がこれまで譲渡のご相談を受けているとき、たまに、ドヤ顔で

「うちの会社には画期的なシステムがあるから高く評価されるべき」

「特許を持っていてこの分野の第一人者だから、この知財は安く売らない」

とおっしゃられる売手企業の社長さんがおられました。

 

自社に自信があるのは大変結構なことだと思うのですが、本当に他社が買いたいと思うほどのものかは冷静に考えていただくことも必要かと思っています。

 

もちろん中には、本当に技術力があり、それがコアコンピタンスとなり、海外からも評価を受けて毎年過去最高益を更新しているような会社もあります。

 

こういった会社が譲渡を考えるのは、

「ビジネスが拡大していく中で、設備投資がどうしても必要になり、それが個人の信用力では投資資金が引っ張れない」

「他の会社の〇〇という技術と化学反応させることで、世界に革命を起こせる」

とかの前向きなものが多いような気がします。

 

「うちのこのシステムはすごい」と言っておきながら、実際それが商売に結び付いていないことは多くのケースで見られ、そういった方々は、今まで自分の投じてきた投資資金は回収せねばと高い価格で会社を売りたがる傾向の方もいらっしゃいます

 

筆者は割とそういう矛盾点に敏感なので、売手社長と話していて、「お前はうちの技術は理解できないから、もういい!」という話になったこともありますが、こういう社長に乗っかって買手企業に持ち込むのはコンサルタントとして失格とも思うところでもあります。M&Aにおける企業評価は買手を無視するわけにはいかないので、独りよがりであっては成約に繋がらないのです。

 

どうしても、売手企業は自社の技術やノウハウを過大評価しがちになってしまうので、一度冷静になり、以下の事項が論理的に説明できるか考えてみましょう。

・その技術やノウハウは、競合他社の何と比べてどういう点が優れているのか
・今までに全くないものであれば、それはどういう市場のどういう顧客に対して価値を提供するものか
(また、その市場はそもそも大きい市場、成長する市場か)
・その技術やノウハウは、具体的にいくらお金を生み出したのか、また、その収益の生み出し方は再現性があるか
・その技術やノウハウはなぜあなたの会社にしかないのか、マネができないものなのか
(もしマネできないものだと思っていた場合、それはマネできないのではなく、マネする意味がないものではないのか)

M&Aの過程で、技術やノウハウという無形資産を評価してもらおうと思ったとき、こういった質問にも的確に答えないといけないです。
実績があれば、この説明への裏付けがある、という証明にもなるので、可能な限り見せられる実績を付けて、得たい評価を得るようにしましょう。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

M&Aを納得したものにするために、そもそもの勘違いを理解した上で進めるようにしましょう。

 

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