お悩み社長
筆者はこのブログに「M&Aいろは塾」と名付けましたが、基本的な内容が書けていなかったことを反省して、今日は初級編を用意しました。
いきなりですが、M&Aで会社を売るなんて一生で一回あるか無いか、なので、これを読まれている方は細かく知らない前提で、できるだけ話し言葉で解説していきます。
M&Aというのは言葉の意味だけ取れば、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」です。
実際、中小企業のM&Aは第三者に株式譲渡や事業譲渡をすることがほとんどなので、合併というので勘違いする方は多いです。
実際M&Aをするのであれば、大事なのは次の2つなので、とりあえずこれだけ覚えておけばOKです。
まずは基本、株式譲渡
読んで字のごとく、「株を譲渡すること」です。
譲渡っていっても、タダであげるわけじゃなくて、対価としてお金を受け取ります。
たまにですが、上場会社だったら上場株式(自社株)をくれたりなんかすることもあります。
ここで大事なのは、
取引するのは、株主(個人が多い)です。
なので、売手側の会社(法人)は契約書でも当事者にはなりません。
中小企業の場合、大体は株主=社長とかだったりしますが、もし、株主が既に引退して会社から離れてしまった存在だったなら、極端な話、売買は会社を絡めず行うことは可能です。
(もちろん、買手企業からしてみたら買うつもりの会社のことを全く知らずに買うことはないので、資料収集などの関係で遅くとも買収監査までには結局絡めることになりますが)
ちなみにM&Aで会社を売ったら大金持ちだ!というイメージを持っている人も多いのですが、あれは個人が株を売って、その対価を現金で受け取るからです。譲渡日をクロージング日とも言うのですが、この日を境にいきなり大金を手にする訳です。
筆者がお手伝いしたM&Aでも、億単位のお金をクロージング日に受け取っている人も多いです。
しばらく通帳を眺めてニヤニヤする方、飲みに行くぞと六本木で散財する方、長年苦労をかけた奥様を旅行に連れていく方色々います。
この金持ちが生まれる理由にもなっているのですが、株の譲渡というのは税率でも給与所得などと比べメリットがあるので、これは覚えておきましょう。
株式譲渡で受け取る場合、
「受け取ったお金-元々出資したお金(資本金)」に20.315%を掛けた金額が支払う税金になります。
一般的には安い税金とされています。
社長がせっせと稼いだお金も何もしないと法人税で33%取られ、役員報酬で支払おうもんなら所得税やら社会保険料をたんまり取られます。
会社に貯まったお金を抜こうと清算したらしたでみなし配当扱いになり、総合課税で上限はほぼ半分税金で持っていかれます。
それと比べたら、20%ちょっとの税金しかからないので、お金持ちになる手段としては適しているとも言えます。
こちらの記事でも取り上げましたが、金持ち優遇だと揶揄される税率だったりもしています。
「金融所得増税される前にM&Aした方が有利!?」手取額に大きい影響を与える株式譲渡の税金
また、株式譲渡によるM&Aは、会社の社名をそのまま使え、取引先との契約や事務所の賃貸借契約、従業員との雇用契約などは締結し直し不要で、そのまま運営できます。
買手企業にとってもよさそうです。
いいじゃん!これ(株式譲渡)でM&Aをやろう!!と思う方も多いと思います。
ですが、注意点です。
それは、あまりにも売手企業の簿外に怪しいものがあり、買手企業が株を買って全責任を負うのが怖いとき、買手企業側から「株式譲渡はちょっと怖いな、、」というリアクションになる場合があります。
具体的にはこんな感じの状態を買手企業は嫌がります。
・社保を未払いでいつ請求されるか分からない
・従業員への未払い賃金があり、いつ労基署に駆け込まれるか分からない
・架空の経費を長年計上していた など
M&Aするのであれば、できるだけこんな状態は避けたいところではあります。
スピード決着、事業譲渡
これも読んで字のごとく、「事業を譲渡する」ことです。
譲渡するものって何?、というと、今譲渡企業で行っている資産や人、契約を譲渡します。
分かりやすく言うと、
運送業なら、車両やドライバー、荷主との取引契約とかです。
製造業なら、工作機械や作業員、工場の賃貸借契約(自社所有なら土地・建物)、納品先との契約とかです。
人材派遣業ならほぼ人だけ。。
なので、「これとこれとこれを譲渡するから、〇〇円ちょうだい」という契約書になります。
会社資産とお金の交換で分かりやすい取引でもあることから、新人M&Aコンサルタントが手始めに事業譲渡から経験を積むこともあります。
以前、M&A会社を選ぶ時のポイントをまとめましたが、この事業譲渡しかできない、というコンサルタントも意外と多いので、気を付けてくださいね。
M&A任せるなら、仲介会社の規模ではなくコンサルタントの質で選べ
ちなみにこの事業譲渡、上の図からも分かる通り、
取引するのは、売手企業(法人)です。
なので、売手側の株主(個人)には1円も入ってきません。
M&Aでお金持ち!と思っている人には残念ですね。
また、この事業譲渡で得た利益は売手企業の益金になるので、普通に法人税がかかります。
赤字だったり繰越欠損金とかあればいいですが、なければ33%くらいですね。。
このような事情から事業承継系のM&Aで「事業譲渡」はあんまり売手は好みません。また、事業の無い法人だけ残ってしまっても使いみちない方もいますしね。
じゃあ、そんな売り方やめようよ、と思う方もいると思います。
ただ、
「売ろうとしている会社で事業とは全く関係ない不動産事業してるので法人は残したい」
「不採算事業を売って、得られたお金で注力すべき事業に投資したい」
「相続の際優遇措置を受けたいので、法人は残しておいて、法人を継がせたい」
などの事情があればあえてこのスキームが取られることもあります。
また、M&Aの手続の中で、売手企業の簿外に何かないかを確認するために、買収監査という調査みたいなものを買手企業が売手企業に実施して、細かく見ていく作業がありますが、この事業譲渡は売手企業に紐づくリスクは買わないこともできるため、この作業が早く終わります。
なので、早期決着する案件というのは、事業譲渡で決まっているケースも多いです。
つまり、良し悪しはケースバイケースということですね。
いかがでしたでしょうか?
それぞれのメリットを考えてスキームを組み立てるのもM&Aのコンサルタントの役割でもあるので、良いコンサルタントと出会いましょう。
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