お悩み社長
このほど、M&Aで使える補助金こと「事業承継・引継ぎ補助金」(令和3年度2次公募、令和4年度)の採択率が発表になりました。
M&Aをするのであれば、売手であっても買手であっても使った方が良い補助金なのですが、今回はちょっと特殊で「令和3年度2次公募 事業承継・引継ぎ補助金」と「令和4年度 事業承継・引継ぎ補助金」の申請期間が被りました。こちらの記事でも取り上げた通り、両方使うことができないのでどちらか選ばないといけないのですが、補助率や補助金上限なども異なっていたので迷われた方も多かったのではと思います。
【簡単比較】令和3年版vs令和4年版の事業承継・引継ぎ補助金
ここでは、現在採択率が各補助金毎にどうなっていたかを取り上げ、採択率についてこのブログでもログとして残しておければと思います。
採択率が低い?公表されている採択率について
まず、2022/10/10現在で公表されている採択率はこんな状況です。
※読みずらい方は画像をクリックしていただければ拡大できます。
現在採択率が分かっているのは、交付決定が済んでいる令和3年度補正予算の1次と2次、それから令和4年度当初予算になります。
令和4年度当初予算は公表されている内容では今回の1回のみです。今後補正予算などの公募がかかる可能性はあるかもしれませんが、まだ何とも言えません。
令和3年度補正予算は年4回の募集となっており、記事執筆時点(2022/10/10)現在では令和3年度補正予算3次公募の申請期間中で、それが終わると4次公募が始まるという計画のようです。
売手が使うのは「専門家活用」か「廃業・再チャレンジ」(おさらい)
売手がこの補助金を使う場合はこのようなケースがほとんどかと思います。
・M&Aで会社/事業を売却した時にかかる仲介手数料などに対する補助金を貰う(専門家活用)
・M&A(事業譲渡)して、残った事業を廃業する際の費用に対する補助金を貰う(専門家活用+廃業・再チャレンジ)
・M&Aできなかったため、新たなチャレンジをするために既存の事業を廃業する場合(廃業・再チャレンジ)
統計を見てても専門家活用での利用が非常に多いです。
この補助金の補助額上限は、令和3年度補正で600万円、令和4年度当初で400万円という規模感なので、仲介手数料の高い仲介会社を使ってしまうと、仲介手数料だけで枠いっぱい使ってしまうという方も多いかと思います(それでも自腹で払う残った仲介手数料は数百~数千万くらいになるケースもしばしば)。
ただ、使わないよりかは使った方が当然お得なので皆申請しているというのが一般的です。
「令和3年度補正2次」よりも「令和4年度当初」の方が採択率が高かった
今回「令和3年度補正2次」と「令和4年度当初」の申請期間が被った為、「どっちに申請した方がいいのかな?」と迷われた方も多かったと思います。
令和3年度は補助金上限が600万円以内、補助率が費用の2/3に対し、令和4年度は補助金上限が400万円以内、補助率が費用の1/2でした。
令和3年度の方が手厚い補助だったので、普通に考えれば令和3年度を選びたくなってしまう感じではありましたが、直前に発表されていた令和3年度補正1次の採択率が結構低めだったのを見て、令和4年度の方が人気が無い分採択されやすいのでは?と勘ぐって、令和4年度を申請された方もみられました。
また、直近決算の利益が赤字などの加点要件が令和3年度にはあったため、業績の良い会社は令和4年度に流れた可能性もあります。
結果を見ると明らかに令和4年度の方に申請者が流れた様子もみられ、また、採択率も令和4年度の方が高い結果となりました。
今後、今回のような同様のM&A補助金の申請期間が複数重複するということが起きるかは分かりませんが、若干の腹の探り合いみたいな要素も考えるに越したことは無い印象はありますね。
年中どのタイミングでもM&Aが始めやすくなっている
令和3年度補正予算で年4回の募集が事前にアナウンスされていることもあり、「いつM&Aを始めようかな」という方にとっては恵まれている環境といえます。
とはいえ、この補助金の難しいのは、いつM&Aができるか(もしくはできないのか)が分からない状態でスタートするのに、どの期間内で成約するかを想定しながら補助金を申請しないといけないケースが多いということです。
こればかりは、既に買手がいる状態でない限り、M&Aの仕組み上、スケジュールを確実にコントロールするのは困難なので、「取り合えずM&A検討を始めるから出しておくか」という感じで出すしかないかなと思います。
※ちなみに「買手がいる状態」というのは、M&A仲介会社が買手がいるのでM&Aしましょうと営業してくるような曖昧な話ではなく、知り合いの会社とM&Aしようと内々に決めているくらいの確度を指します。
現在も令和3年度補正予算3次公募が始まっているので、M&Aを検討されているという方はこの補助金を利用してみるのもよいかと思います。
補助金が出ても仲介手数料が安い仲介会社の方が利用者のメリットが大きい
この補助金が出ても仲介手数料が安い仲介会社の方が利用者のメリットが大きいです。
例えば、仲介手数料2,000万円の仲介会社を使った場合、令和3年度で600万円、令和4年度で400万円の補助になるので、残額である1,400万円や1,600万円は自腹になります。
一方、仲介手数料500万円の仲介会社を使った場合、補助金は令和3年度で333万円、令和4年度で250万円の補助にはなってしまいますが、自己負担分は167万円や250万円の負担で済みます。
補助率100%ではないので必ず自己負担分が発生するのと、補助金上限も600万円や400万円と高額な手数料を設定する仲介会社の手数料をカバーできないくらいの補助金額上限であるということもありますが、そもそもM&A仲介会社の手数料相場というのはかなり高いので、補助金では賄いきれない部分が多く発生してしまうというのが現状です。
また、忘れてはいけないのは、この他にかかる費用(例えば、顧問税理士に請求されるアドバイス料だったり、弁護士による契約書のチェック費用だったり)は、仲介会社の仲介手数料は含まれていませんので、仲介手数料にプラスアルファで考えておく必要があります。
さらに、今回お伝えした通り、補助金採択率もそれほど高くないので、満額もらえると思ってたのに採択されなかったダメージは、設定されている仲介手数料が高ければ高いほど大きいです。
つまり、補助金有り無しに関わらず、補助金が出るからといってわざわざ仲介手数料の高い仲介会社を利用するメリットはない(仲介手数料は安いに越したことはない)ということです。
M&A仲介会社においては、仲介手数料が高いからといって質が良いサポートをするというわけでは全くないのですが、その仕組みが知りたい方はこちらもご参考下さい。
「小規模な仲介会社は頼りない?!」会社の規模で選ぶ売手の勘違い
また、仲介会社の手数料を比較したい方はこちらもご参考下さい。
「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!
最後までお読みいただきありがとうございました。
(補助金に関するご質問は特設ページより補助金事務局に直接ご連絡下さい)
参考 令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金(外部サイト)事業承継・引継ぎ補助金事務局 参考 令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金(外部サイト)事業承継・引継ぎ補助金事務局