最近では結構減りましたが「資本提携を模索しているクライアントがいる」というテイストのDMはまだまだ送られてきます。
「迷惑だなぁ」と思う人も多いですよね。
ここでは、もともと大手仲介会社のコンサルタントをしていた筆者が内部者だけが知るそのDMの目的や仕組み、実態について解説していきます。
DMを捨てるかどうか迷っている方などはこの記事を読めば正しく判断できると思います。
DMを送る目的
結論からいうと、M&A仲介会社が資本提携を匂わすDMを送る目的は、「会社を売りそうな先を探すこと」です。
「買収したい」という温度感のいるクライアントがいるとか、具体的にいくらでどういうスキームで提案したいなんて案もなく、単純に「もし、買手見つけたら売ってくれる?」というニュアンスであることが大半です。
だから、DMに何らかの反応をしてくれる会社があれば即M&A見込み客となります。
筆者の記憶では、昔は物珍しさもあったのか、100通DMを送れば概ね2~3通返ってくる返信率だったのですが、近年ではM&A業者が増えすぎてしまったこともあり、1,000通DM送っても何も返信がないのが普通です。
そんなこともあってか、もし反応をしてくれる会社があれば一気に営業モード全開でいくのが通例です。
DMの体裁上は、調査目的や簡単なディスカッションみたいになっていることもあるかもしれませんが、結局のところ民間企業であるM&A仲介会社はお客にM&Aをさせて成功報酬をもらわないと成り立たないので、どんな話をしたとしても「じゃあ会社・事業を売りましょう」という話の展開になります。
逆に、ここで会社・事業を売りましょうという展開にならないのであれば、あなたの会社が売れないと判断された可能性はあります。
株主じゃないとか、赤字債務超過とか、譲渡額目線がめっちゃ高いとか。M&Aできない相手であればM&A仲介会社としては成功報酬を稼ぐという目的が達成できないということになりますので。
いずれにしてもDMに反応しただけでグイグイくる可能性はあるので注意が必要です。
こうしたアプローチで近づいてくる仲介会社について、怪しいと感じてしまう理由については以下の記事で詳しく解説していますのでご興味ある方はご参考ください。
なぜ「資本提携」という言葉を使うのか
M&A仲介会社には「M&A」ではなく「資本提携」という表現を使うことが多いです。
ただ、これについては結論、実際には資本提携という言葉を使っていても、仲介会社側は会社売却案件の発掘を目的としているケースが大半です。
そもそもM&Aと資本提携は一体何が違うのでしょうか。
これは簡単にいうと、「経営権を譲る=M&A」、「経営権までは渡さない=資本提携」と整理できます。
では、仲介会社は資本提携という言葉と使っているのだから経営権まで売りませんかという話ではないよね?と思っているとそうではありません。大半のケースでM&Aを勧めてきます。
その理由としては、会社全部を売却したほうが売買金額が大きくなり成功報酬も大きくなるというような金銭的な理由だったり、マイノリティ出資をしてくれる買手を探すのが難しいという理由だったり、株主間契約を作るなど手間が増えるというような理由だったり、様々です。
筆者が同業のM&A仲介の方に「SHA※株主間契約のこと」と言ったところ「?」という顔をされたことがありましたが、そもそも仲介会社のコンサルタントの中には事業譲渡や株式100%の譲渡しか対応したことがないという者も結構いるので、不慣れだからとっつきづらいというのもあるような気もします。
実務的にはM&A仲介会社が「資本提携に関心があるか」と聞いてきたら、「会社売る気があるか」とほぼ同義であると捉えてよいです。
【実態】M&A業者はどこまで調べているのか
DMが来たときにM&A業者はどこの情報まで調べているものでしょうか?
筆者が大手M&A仲介会社にいた時の話でいれば大体この辺の情報は調べていることが多かったです。
・会社名
・住所
・代表者名
・代表者の住所(最近はそこまでの情報はないこともある)
・業種分類(建設業とか、IT業とか)
・事業内容(〇〇エリアで〇〇向けの内装業をしているとか)
・売上高
・利益
・株主構成
・資本金額
・従業員数
★財務内容
★HPの内容
調べるとはいっても、★マーク以外は商工リサーチなどの外販データで一括してとれるので、M&A業者としてはそれほど労なく取得できます。
財務内容については、決算公告出していれば知られている可能性ありますし、帝国データとか商工リサーチに情報提供していれば調べられている可能性はありますが、DMなんて何千、何万通と送るので、詳細データをいちいち調べるなんてことは普通しません。
調べるとしたら、DMに反応があった場合のみくらいですかね。
企業情報を購入する方法としては、大量の企業数について企業情報サマリーを販売する方法と、特定の会社だけめっちゃ細かい企業情報を販売する方法があり、DMを送るときは前者を使うことがほとんどです。
後者は1件で1万円とかするので、返信が来るか来ないかわからないDMにそこまでしないというわけです。
だから、逆にいうとDMに返信をしてしまうと調べられる可能性があるとは言えます。
ちなみに、よくご相談でもいただきますが「後継ぎがいない」とか「知人に会社売ることをポロっと言ってしまった」とかが情報漏洩して、DM営業が始まるなんてことはかなりのレアケースです。普通はないと思ってよいです。
M&A仲介会社の立場で言えば「売れる会社」に対してDMを送らないと意味がないので、上記の情報の中から「まあ、売れそうかな」という客層を抽出してDM送付先を選定しています。
そして、これはどの仲介会社でも同じようなことをしているので、結局売れそうな会社に大量のDMが集中して送られてくることになります。
DMの送り先というのは公開されてる企業情報をベースに、結構ダイナミックな規模で送るものなので、どこかの業者があなたの会社の特別な情報を握って営業を仕掛けているという可能性はそんなに高くないと思ってよいです。
なぜあなたの会社なのか
結論から言うと、M&A仲介会社は「売れそうな会社」に対して優先的にDMを送っています。
ただ、そうはいっても前述の通りあなたの会社が特別な情報を握られているわけではなく、業種・規模・利益などから機械的に選定されているケースがほとんどです。
じゃあどんな会社が「売れそうな会社」なのか。
ここでターゲットとなる会社にはある傾向があります。あなたの会社が該当していないか見てみましょう。
売れやすい業種
中小M&Aは売れやすい業種とそうでない業種があり、あなたの会社が売れやすい業種だから営業が来ているのかもしれません。
売れやすい業種というのは、例えばプログラマーをかかえるソフトウェア開発業であったり、多能工を抱える工務店といった業種などです。
「技術を持っている」「その技術はある程度汎用性がある」「業務内容もニッチ過ぎない」などのほうが買手のすそ野が広く、仲介会社が開拓先として狙いやすいとされています。
売上規模が大きい会社
筆者の感覚では、業種にもよりますが、年商3~10億円くらいが中小向けM&A仲介会社のスイートスポット、年商10億円以上は国内会社数も大きく減るのでもし売却案件として出れば各社取り合い、という感じでしょうか。
業種業態によっても異なりますが、概ね1億円は超えていないと厳しい部分はありますので、年商に関しては事前に調べてDMを送付することが多いです。
利益が出ている会社
利益は当然のことながら大きく出ている方がM&A仲介会社のターゲット顧客になりやすいです。
M&Aの買手には、赤字の会社を立て直したいというチャレンジングな買手ももちろんいるにはいるのですが少数派です。多くは既に利益の出ている会社を取り込みたいという買手なので、利益を出している会社ほどM&A仲介会社のターゲットになります。
高く売れそうな会社
M&A仲介会社の成功報酬は様々ですが、譲渡金額の5%などという計算で報酬を計算する仲介会社も多いので、成功報酬をたくさん稼ごうと思ったら高く売れる会社が仲介会社としては望ましいです。
教科書的には「営業利益が大きい」「(買手がたくさんいる)人気業種」「利益率の高い業種」「内部留保が大きい」という会社が高く売れる可能性があるわけですが、場合によって、過去事例でかなり高いバリュエーションをつけている買手に持っていく用で開拓することもあります。
基本的には、M&A仲介会社はM&Aが成立してはじめて成功報酬が稼げるので「売れる会社」を探すのが本音ではあります。
場合によって、とりあえず案件を取ってから売り先を考えよう、という営業もあるので、あなたの会社に営業をかけた理由など何もないケースもあります。
よくある質問
M&A仲介会社の迷惑DMについてよくある質問をまとめてみました。
本当に買手がいることもあるか?
本当に買手がいることも無くは無いですが確率はほぼ0に近いです。
筆者も買手企業からあの会社に買収打診してみてよ的な依頼を受けることはありますが、あっても1社や2社の話なので、仲介会社が毎月何千何万という数のDMを撒いているのと比べたら、干し草の山から1本の針を探すような話なので、ほぼ無いと思っていいです。
というか、もし買手が本当にいても、他の買手と交渉もせずにその買手に決めてしまうのは、適正な企業価値で売却できない可能性も上がりますので売主としてあまり良い方法とは思いません。
無視したらどうなる?
何も起きません。筆者がいた仲介会社でも、返信がない会社に対して執拗に追いかけることはほとんどありませんでした。
(やったとしても「お手紙をお送りしたのですが」と電話を掛ける口実にして、電話営業してくるくらいです)
なぜなら反応のない会社を追うより、新しい会社へDMを送るほうが効率が良いからです。
「貴社と資本提携したいクライアントがいる」というようなうたい文句も定型文であることも多いため律儀に反応する必要ないです。
なぜどこも同じような文章なのか?
どこの会社も使いまわしているからです。
仲介会社A社で反響のあったDMを、A社から転職した人がB社でも使い、B社に在籍していた人がC社でも使いまわして・・。という感じで、反響のあったDMは使いまわされます。
実は「貴社と資本提携したい」というDMはこんな感じで仲介会社間で広く流通しているので、全く違う会社なのに同じ文章、ということが起きるのです。
手書きでくる手紙もDMか?
たまに手書きで手紙風のDMが来ることもあります。
手紙っぽいですがただのDMです。しかも実際手で書いているわけではなく機械が書いています。これもDMの開封率を上げる目的であり、「せっかく手で書いてくれたんだから」と律儀に返信する親切心を逆手に取った営業手法です。
本当に手書きかどうかを判断するには、用紙の裏がボコボコしていないか(本物なら筆圧で紙がボコボコする)といったことや、同じ字で全く同じ筆跡がないかを探すというが有効です。
例えば「経」という文字が3タイプくらいのサンプルがあり、その3タイプをランダムで使っているのだとすれば、全ての「経」の字の比較することで全く同じ筆跡があるかもという話です。
とはいえ、よほど暇でないとこんなことしないと思うので、心のこもった手紙じゃないというのが分かればOKです。
社名を隠して送ってくるのはどういう意図か?
筆者は知り合いから、「M&Aベストパートナー」社からのDMに「MABP」と書いてあった封筒を見せてもらったことがあります。
MABPでは何の会社かわからないのが普通ですが、むしろ送り手としてはそれを狙っているものと思います。
最近ではM&Aの会社と察知されると開封すらしてもらえないことも多いので、M&Aの会社だとわからないような記載や送り主無記載で送ってくるという開封率アップのテクニックもあるようです。
DMは開封率をいかに上げるか、というのを試行錯誤していると思うのですが、そもそも自分の会社名も書けない後ろめたさを感じながら営業するのってどんな気持ちだろう、と筆者は複雑な気持ちになるものです。
M&A検討し始めたらDMが届くようになったが、何か情報が洩れているのか
これ、たまに頂く質問ですが、大体はたまたま他の仲介会社がDM送付時期が被っただけのケースが多いと思います(3月とか9月、12月の年末、年度末、半期末は比較的DM増えます)。
普通に考えてM&A仲介を任されている仲介会社が情報を漏らすメリットは無いので、仲介会社が積極的に漏らすことは考えにくいです。
たまにあるのは、その仲介会社から案件情報を聞いた買手が、紹介を受けた仲介会社を通さずに(自社と接点のある仲介会社を通して)売手にコンタクトを取るみたいなことはあり得ます。
仲介的にはタブーな行為ですし、売手もいい印象を持ちませんが、買手として仲介手数料を削減できるなどのメリットがあります。
迷惑な場合DMを止めるよう依頼したほうがよいか?
電話と違ってDMの場合は捨てれば済む話なので放っておいてもよいとは思います。
連絡すれば止める仲介会社もあるとは思いますが、連絡したことで連絡先を知られてしまう可能性もあるので、迷惑だと思うならむしろ「反応しない」が正解かなと思います。
こんな方はご相談ください
M&Aいろは塾では筆者が迷惑DMに対する対処法や、安全なM&Aの進め方についてご相談に乗っております。
この記事を読んで、こんな方はお気軽にご相談ください。
・DMが来たが無視してよいかわからない
・本当に買手がいるのか知りたい
・本当に会社が売れるのか知りたい
・セカンドオピニオンが欲しい
グイグイ営業に来られるのは嫌だな、と感じている方は、まずは気軽に相談できる人がよいでしょう。
筆者でなくともお近くにM&Aをしたことのある方や詳しい方がいれば相談してもよいと思います。
そもそも売却することが良いか、整理してからM&A仲介会社の門戸を叩いても全然遅くはないです。
また、DMに関しては、もっと詳しい内容をまとめた書籍「M&A仲介会社からの手紙は今すぐ捨てなさい」も書いていますのでご興味があればご参考下さい。
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