お悩み社長
何を基準に業者に依頼するかって正直難しいです。
なぜなら、「弊社は連携先が多く広いネットワークで相手を探せる」「弊社は専門家揃いだから高度な案件にも対応できる」とか、情報がネット上に有象無象に散らばっていて、何がM&Aにとって必要なのか分からないからです。
こういうの基本ポジショントークなので、いちいち真に受けていると逆に混乱します。
M&A業界に長くいる筆者ですら、よい仲介会社を選んで!といわれても困ります。
筆者は自分が仲介者なので、どこよりもよい仲介ができると自信をもって言えますが、それって自分がどういう仲介をするか知ってるからそう言えるわけであって、他の業者を自信をもって紹介できるか、というと、かなり一緒に仕事した人くらいしか自信をもって紹介できないというのもあります。
ただ、間違いなく言えることが一つだけいえます。
それは、「仲介会社ではなくコンサルタントで選んだほうが後悔が少ない」ということです。
今回はその理由を説明していきます。
仲介会社の名前で選びがちな人の罠
上場大手の○○にM&Aをお願いしよう
大勢コンサルタントを抱えている仲介に依頼しよう
そう思って仲介会社で依頼先を選ぶ売主って結構多いです。
これは必ずしも間違いではありません。
大きい会社に仕事を依頼したほうが安心感もあるでしょう。
でも、M&A仲介の仕組みを知っている人からすると、「大手だから安心」といって、比較せずに高いお金を払う約束をするのは、正直もったいないと感じます。
これは同様に「会計士や税理士がいっぱい在籍してるから大丈夫」とか、「本社が立派だから大丈夫」とかも一緒です。
いくらすごそうな会社だったとしても、それはあなたの受けるサービスの質とは別だからです。
仲介会社にたくさんのコンサルタントが在籍してたとしても、あなたの会社の主担当で動いてくれるのは何人ですか?
主担当は普通1人で、後は部分的に関与する買手担当や管理職、士業専門家くらいでしょう。
事務所が立派だったとして、実際そんなに行く機会ありますか?
普通は両社面談やクロージングくらいで使うことがある程度でしょうし、Web面談や電話をするほうが早いでしょう。
買手をたくさん紹介してくれそうって思っても、本当にたくさん紹介してくれるのでしょうか?
最初の段階で紹介数をコミットするケースは普通ないですし、紹介先だって業界でよく名前の知れた買手や、誰でも使えるM&Aマッチングプラットフォームで拾ってきた買手なんてこともあるので、自分で探すことができる先かもしれません。
大手に依頼すればトラブルは起きないのでしょうか?
近年問題になってる売手が買手の詐欺被害に遭う事件だって、関与したと報道されている仲介会社は大手や大手の関係会社の名前も多く挙がっています。
※意図的に事件を起こしたとは筆者は思いませんが、大手だったら特別安全か、と言われると、それを立証できるだけの仕組みはまだM&A業界にはないと筆者は思っています。
実際進めてみないとどう進めるか分からない、仲介会社側がどうやって作業してるのかも分からない。
それなのに「何か」に期待して、何千万円も支払う契約を結んでしまう、というのは実に不思議なものです。
実際にその期待した「何か」が得られなかったとき、納得できるM&Aではなくなるくらいなら、最初に後悔しない業者選びをすべきでしょう。
M&A仲介の商品はコンサルタントの時間
高級レストランに高いお金を払うのは、上質な空間で美味しい料理を食べるから。
高級車に高いお金を払うのは、安全で快適で一定のステータスが得られるから。
だとすると、M&A仲介に高いお金を払うのは?
M&A仲介が提供できるのはコンサルタントの時間です。
高いお金を払う価値のあるコンサルタントなのかを見極めなければ割に合いません。
ではどうやって見極めるのでしょう。
弁護士や会計士のような高難易度の資格制度があるわけではありません。
これまで多くの成約実績があるといっても、そのコンサルタントが主担当で動いた案件かわかりません。
立派な肩書がついていたとしても、そんなものは会社が自由につけているだけかもしれません。
つまり表面的には高いお金を払う価値があるかわからないということです。
ここがM&A仲介の選びにくいところです。
M&A仲介というサービスの成果物はM&A成立であり、これはM&Aを検討し始めた段階で確約できるものではないという構造もこの問題を一層難しくしています。
そうなると合理的な人はこう考えます。
「仮に、高額な費用を払うなら、確証ができる材料で判断しよう」
「不確定なものに対して高額な費用を払うのはリスクがあるので、確実性のある手数料をもとに業者選定しよう」
世の中には、「こいつは気が合いそうだからM&A任せよう」という感性のようなもので人選する経営者もいるので、そういう方とは違う考え方かもしれませんが、合理的に考える方にとってはM&A業者選びというのは、判断材料が少なすぎると思うはずです。
金を払う価値のないコンサルの特徴
多くの仲介会社は「コンサルタントの有能さ」をアピールします。
筆者も自ら主担当として売手・買手双方を担当した成約件数をアピールしてはいますが、じゃあ成約件数がコンサルタントの有能さを正確に示すか、というと不十分だと思います。
運よく魅力的な会社の担当ができれば、仲介者として未熟でも普通に成約することがあるからです。
なので、イメージしやすいよう、逆に「金を払う価値のないコンサル」を同じ仲介者の筆者目線で解説しつつ、コンサルタントの価値とはどんなものか想像していただければと思います。
人の話を聞かないコンサルタント
コンサルタントとは相談に乗って、進むべき方向へ導く役割です。
にもかかわらず、「自分の喋りたいことを喋るコンサル」がいます。
売手や買手が喋ろうとしているのにそれを遮り、「俺の考えるべき論」を押し付けてきます。
押しが強いタイプなので、仲介会社の中では「営業ができる人」、売手からは初見は「頼りがいがありそうな人」に映ることもあります。
でも、仲介を紹介屋くらいで見る買手から見たら実にうっとおしい存在に映ったり、買手側の立場のようにふるまい説得してきたら売手としてもうんざりするでしょう。
さらに、買収監査で買手側の専門家と衝突しようものならもう目も当てられません。
取引の相手方といかにコミュニケーション上の摩擦を生じさせずに調整するかが仲介の付加価値でもあるのに、それがないのであれば高いお金を払う価値はないでしょう。
自分の味方だけのアドバイザーという意味では、仲介ではなくFAを選択する場面であるともいえます。
引き出しが少ないコンサルタント
M&Aのコンサルタントを名乗っているのに引き出しが少ない者がいます。
M&Aスキームのレパートリーが少ないため、知っているスキームで対応しようとする者。
質問してもその場で回答できないことが多い者。
売手側または買手側のどちらかの立場しか物事を見れない者。
いろいろです。
M&Aは関わる専門分野も多いので、全ての分野で即答は難しいものですが、場数を踏んでいるコンサルは、それなりに広い専門分野で起こる論点にも即座に対応できますし、総じてレスも早いです。
経験や知識がないコンサルは「確認します」が多くなりますが、できるだけ早く正確な回答をしようと奔走する者はまだ可愛げがあります。
ただ、知識不足からその場しのぎの適当な回答をしてしまう性格なコンサルは本当に辞めたほうがよいでしょう(筆者は管理職としてそういうコンサルにも出会ったことありますが、これは個人の性格や人格に近いところもあるのではと思います。そして、会社という組織にとっても危険人物です)。
買手企業のピックアップにセンスがないコンサルタント
売手からすると、仲介会社から「この会社は買収意欲があります」と言われたら、それを信じるしかないかもしれません。
でも、経験のある同業が何かの拍子に他社の候補先リストを見たりすると、その仲介のレベル感が分かります。
「確かにこの案件ならこういうところ挙げるよね」もあれば、
「なんでこの会社挙げたんかな?売手企業を見誤ってるんじゃないの?」とか
「とりあえずストロングバイヤー挙げただけだよね」とか。
分かるのはどれだけ色々な買手を知っているかだけではないです。
どれだけ真剣に売手企業のことを知ろうとしたかの熱意も、同業ならわかります。
そして面白いのは、ただ名前を挙げただけの候補先リストを出してくる仲介会社は、アウトプットも雑です。
「打診しました」「ダメでした」、以上、みたいな。
できるコンサルはこのフローが違います。
少なくとも
「売手企業をどういう会社だと分析したのか」「そういう会社を買収している会社はどういう会社か」「その業界にどういうトレンドがあるのか」「名前を挙げた買手にどんな経営方針があり、今回の案件になぜ興味を持つと思ったのか」「打診してダメだとしたらそこから何を分析してどう修正するか」
くらいは、何も資料を見ずに言えるくらいがまともな仲介です。
買手探索についても、「仮説」→「検証」→「分析」→「仮説」をする仲介としない仲介はいろいろだと思いますが、当然前者を選びたいところです。
なお、仲介会社としてAIなど自動で会社が買手を選定するという会社もありますが、そうなると担当者としては、「とりあえず売手から情報もらって社内に投げればいい」と営業効率重視の動きになりがちになる可能性もあります。
そうなると、売手企業のことをよく理解してないのに、両者面談に参加し、買収監査で買手が聞きたいことも正しく咀嚼できず他人事のように右から左に質問や資料依頼を投げるだけになる、など、まともな仲介者の自覚を持って進めなくなる可能性も上がると思うので、筆者は買手選定を他人や機械任せにするのは危ないと思います。
まとめ
とは言え、売手にとってはM&Aなんて初めて行うことなので、コンサルを見極めましょう、といっても難しいところはあると思います。
そういう時は、比較が一番です。
たまたま出会ったコンサルを優秀かどうか見極めるのは難しくても、何人かコンサルと話して、誰が一番優秀かはまだ判断しやすいと思います。
買手探しなど仲介会社に依頼してからでないと見極めしにくいことであれば、別に複数の仲介会社に同時に依頼してもOKです。
常に売手に主導権があるようにすることで、想定と違う方向に行きそうになったときに方向修正しやすいですし。
また、当然ですが、手数料も同時に比較しましょう。
以下に”本当のM&A仲介手数料の実態”をまとめた記事もありますので、ご一読いただけると「業者によって全然料金違うじゃん」「安かろう悪かろうじゃないんだな」と気づいてもらえるはずです。
と、筆者の考えも色々お伝えしましたが、何か参考になればと思います。
筆者に相談したいことがあれば下のお問い合わせフォームより連絡ください。

