お悩み社長
お気持ち分かります。
なぜなら、「うちは上場会社で規模が大きい」「うちはコンサルタントの数が多いの情報量が圧倒的」「うちは専門家揃いだから高度な案件にも対応できる」とか、情報がネット上に有象無象に散らばっていて、何がM&Aにとって必要なのか分からないからです。
それに加え、会社の譲渡など頻繁にするようなものでは無いので、何にも分からない中でどこかにお任せしないといけないからです。
今日は仲介会社の選び方について解説します。
そのM&Aに対して何を求めるか、にもよるところですが、仲介会社を選ぶ際の優先順位は、結論から申し上げますと次の通りです。
① ”担当する”コンサルタント自体に経験値があり優秀であり共感できること
② 手数料が計算上安いこと
③ 紹介できる買手が既にいること
※優先順位は上記の番号順
一つずつみていきましょう。
“担当する”コンサルタントが経験値があり優秀であり共感できること
やはりこれが一番大事です。
そもそも、M&Aにおけるコンサルタントの役割としては、売手企業の希望を適切に理解し、最適なスキームを組み立て、適切な買手企業に打診し、交渉中も感情的な当事者に対して冷静に説明を尽くして、結果取引を成立させるという役割です。
もちろん、財務・税務・法務・労務・ビジネス面などで専門知識があることも重要ですが、取引全体を俯瞰して、必要性に応じて必要な人材をアレンジする力の方が必要だと筆者は思います。
話を分かりやすくするために、こういうコンサルタントはやめておいた方が良いという例を挙げます。
「私に任せておけば大丈夫」と豪語し、あまりこちらの話を聞いてくれないコンサルタント
これは最悪です。
M&Aのコンサルタントは売手と買手の両方の話を丁寧に冷静に聞き、事の正当性を俯瞰してみる能力が求められるのにも関わらず、こういうタイプは「それよりも俺はこうした方が良い」ということを優先させます。
そして、よく買収監査の段階で買手企業の会計士や弁護士と喧嘩します。最悪の場合、買手企業との交渉の段階でブレイクしたり、いきなり今までの話と違うことを売手企業に押し付けてきたりします。
売手企業・買手企業の為に自分の感情を殺すことができる、というのはコンサルタントとして最低限のスキルです。
大抵こういう自身満々なコンサルタントは最初は優秀そうに見えたりするものですが、だんだん誰と交渉してるか分からなくなってくるので注意しましょう。
自分の会社の大きさや、ネットワークの広さ、専門家の数などしかアピールできないコンサルタント
これは新人コンサルタントに多いです。
大抵はこういうコンサルタントに任せると杓子定規に話が進んでいきます。
自分の経験値で話すことができないので、「次はこういう工程を経るべき」という固定観念で案件を進め、当事者の意図する方向からずれていきます。
中小企業のM&Aは理屈よりも当事者の意向を尊重するケースも多い為、基本を知りつつ、場面に応じた臨機応変な対応ができる方でないと取り返しのつかないことにもなりかねません。
近年大手のM&A仲介会社を中心に大量に未経験の人材を採用しているため、こういうコンサルタントも増えているように筆者は思います。
仲介会社の規模や実績数、ではなく、担当してくれるコンサルタントの今までの成約件数や取扱ったことのある案件の規模や実例をもれなくチェックするようにしましょう。
買手企業のピックアップにセンスがないコンサルタント
これは新人コンサルタントや士業系のコンサルタントに多いです。
コンサルタントの行う買手企業のピックアップはセンスと経験がもろに出る場面です。
ただ単に大きい会社に打診して欲しいというのであれば事は簡単ですが、実際のところは、具体的に検討してくれる先、に打診する必要があるのは言うまでもありません。
センスがないコンサルタントは、「車関係ならトヨタに打診してみましょう」とか「新規性があるのでとりあえずソフトバンクに打診してみましょう」とかあまり考えずに安直にビッグネームを出している者もいます。笑い話みたいですが。。
誰でも知っている会社を挙げられると売手企業としても気分は悪くないと思いますが、なぜ本件がその買手企業が合うと考えるのか、は常に聞くようにしましょう。
筆者が考える「買手企業を本当に理解している」というのは中期計画でも記載されていないことを知っていたり、株価算定の方法まで理解していたり、というレベル感です。
上記のようなコンサルタントにお任せすると成約に至らないばかりか、無駄に労力を要してしまい、本業にも悪影響が出てしまう可能性もあります。
色々書きましたが、最後にそのコンサルタントに共感できるかということも見て下さい。
基本的にはM&Aは仲介会社を通してやり取りすることになるので、そのコンサルタントを通して相手企業の話を聞くことになります。
そのコンサルタントで変なフィルターがかかるようであればきちんとした交渉もできなくなるので、「このコンサルタントが言っている〇〇というのは、話し方や温度感から〇〇ということだろう」と察することができる、というのが大事です。
手数料が計算上安いこと
今まであなたがやったことのないM&Aにおいて、最初の段階で得られる判断材料で裏切られないもの、それは「手数料」です。
M&Aの現場では、「レーマン方式」と言われる、取引価格や会社規模に応じた手数料の料率が存在します。
ただ、各社このレーマン方式の料率だけは採用していますが、何に対する%なのかの解釈は会社によって異なり、好き勝手に「株式譲渡代金の○%」とか「移動総資産の○%」と言っている訳です。この業界には報酬を取り締まる法律も無いので、やりたい放題といったところでしょう。
「そんなもんかなぁ…」と丸め込まれる前に、「○○○万円で取引した場合、手数料はいくらになる?」と聞いてみて下さい。複数社並べると意外と大きな差が出ることが多いです。
こちらで各社の手数料をまとめていますが、本当に会社によって設定金額が違います。参考にしてください。
「M&A仲介会社の仲介手数料ランキングでどこが一番高い?」見極め方についても解説
あと、多くのM&Aの仲介会社では、最低報酬金額という下限も設定されています。上場している仲介会社などでは2,000万円以上の設定がなされていたりもしますが、数十~数百万円という設定をしている会社もあります。
最低報酬2,000万円というのは、普通の中小企業にとっては高いと感じることが多いと思いますがその感覚で正しいです。中小企業庁の公表している中小M&AガイドラインでM&A登録機関の最低報酬額の分布も公表されていますが、業者全体からの比較でいっても間違いなく高いです。
報酬が高い方が良いサービスを提供できる、というのは間違ってはいないようにも聞こえますが、実際のところ仲介会社がM&Aを成約させるために必要なコストはほぼ人件費のみで、しかも経験値の低いコンサルタントをアサインしていたりもしているので、「報酬が高い方が良いサービスを提供できる」というワードはまず疑ってかかってください。
仲介会社の原価については以下を参考にしてください。
M&Aの費用が高額な理由【原価を大公開!】
さらに、不動産屋と一緒で、買手側からも報酬を受け取るので、1件成約すれば上記の例では4,000万円もM&A仲介会社に入る訳です。
大抵の上場しているM&A仲介会社ではコンサルタントへのインセンティブも案件毎にあり、上記の4,000万円の内、10%である400万円がコンサルタントに支給される、というようなことも珍しくないです。
こんな感じなんで、みんな金稼ぎの為にM&Aをさかんに営業する業界になってしまっている、と筆者は思うわけです。
是非、比較検討をしてから、納得してアドバイザリー契約を締結しましょう。
紹介できる買手が既にいること
敢えてこれを最後にしています。
なぜなら、焦って売るわけではなければ買手企業は一から探せばよいからです。
こういうDMに騙されない為にも是非覚えておいてください。
「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実
いくら紹介できるといっても、買手企業にとって、M&Aをするかどうかの判断はあなたの会社のホームページや帝国データバンクなどの情報だけで下せないのが普通です。決算書などの財務関連の資料はもちろんのこと、設備の状況や従業員のスキルや年齢、取引先との契約関係などM&Aを判断する上で必要な情報はたくさんあります。
だから、仮に最初の時点で仲介会社が”買うかもしれない会社”を知っていたとしても、実際進める上で、買手企業から「なんか違うな、やっぱりこの話は無しで」ということでお断りをくらうケースは実は非常に多いです。
なので、M&Aの仲介会社を選ぶという判断をするときにこの要素はあまり役に立たないと思った方がよく、あれば良い、というくらいの心持ちで臨んだほうが、後々後悔も少ないものと思います。
いかがでしたでしょうか?
今回は仲介会社にお願いするケースを前提にお伝えしてきましたが、銀行や税理士の先生が仲介になるケースなども別のトピックで触れたいと思います。
M&Aに関する素朴な疑問や、M&Aを進める上で不安なことがありましたら下のボックスから筆者に非公開で質問もできますので是非ご活用下さい。