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買手がいないのに買手紹介しますDMを送る仲介会社の本当の目的

お悩み社長

買手いますってDM、どこの仲介会社も同じ文面なんだけど、これってどういう仕組みなの?

 

M&Aいろは塾では度々取り上げている「御社を買収したい会社がいるので紹介したい」というDMですが、こんな風に思われる方もいらっしゃいます。

 

 

仲介会社名は違うけど、あまりにも内容が一緒だから、仲介会社が同じDM業者を使ってるんじゃないの?と勘ぐったりする人もいます。

 

実際のところ文面は仲介会社で考えて、印刷・封入・発送は外部業者に委託していることが多いのですが、DMのドラフトは色々な仲介会社で使いまわしているので似たような文面になることが多いです。

 

M&A仲介業は離転職も激しい上、前の会社で比較的反応率の高かったDMの文面を転職先の会社でも使う、みたいなことは頻繁に行われるので、会社名は違うけど中身は似たようなものになる、ということはよくある訳ですね。

 

 

こんな買手紹介しますDMですが、「そんなに我が社は買手が殺到するような会社なのか?」「なんでこんなに必死にDMを送ってくるのか?」という疑問を持つ方も多いようですので、今日は仲介会社がこのDMを送ってくる背景と本当の狙いについて説明していきたいと思います。

 

こうしたDMの具体的な対処法についてはこちらで詳しく説明しておりますので、対処法が知りたい方はこちらをご参考ください。

「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実

 

それではいきましょう!

 

他にアピールするものが無い仲介会社

 

例えば、飲食店であれば集客するために「当店おすすめのメニューはこれです」とインスタ映えするような料理を出すようなことができます。

 

また、Webサービスの会社であれば、「このシステムを導入することで御社の問題を解決することができます」と提案することもできます。

 

一方、M&A仲介業はどうでしょう。

 

そもそもM&Aについてどんなものかイメージ付かない人がほとんどなので、受け手としては何をアピールされてもあまりピンとこないはずです。ましてや、「組織再編も絡めたスキームが得意で」とか「スクイーズアウトを実施したことがあります」とか普段聞きなれない専門用語を出してこられても、「はぁ・・そうですか。。」となってしまいます。

 

さらにM&Aはどんなに良い会社でも最後の最後まで成約するかどうかは分かりません。なので、「絶対成約させます」ということは絶対言えず成果物すらコミットできない業種なわけです。

 

それでも、「会社・事業を売る」というニーズを掴み、受託をして、買手を探して、成約させることで高額な報酬を得ないといけない、というミッションで仲介会社は動いているので、何かをアピールして会社や事業を売る人の気を引くか、売らせる気持ちにさせないといけないわけです。

 

こういう点では、M&A仲介業の営業というのは結構難しいところがありますね。

 

 

こんな中多くの仲介会社はイメージ戦略に走り、「専門コンサルタントを〇名擁しています」とか「M&Aをスムーズに行うために〇〇という仕組みを導入しています」とアピールしたり、また、上場している会社では「弊社は上場企業です」とかをアピールしたりと、”ちゃんとした会社感”を出すことを重要な戦略と位置付けることが多いd。

 

でも、どれだけ「うちの会社は専門家集団なんです!」と言っても、同じようなアピールをしている会社ばかりなので「結局どこにお願いしたらいいの?」という状況は変わらず、案件受託するということに直接つながりにくい部分もあるので、こういったアピールをして待っているだけでは仕事が来ないのが現状です。

 

 

そんな中流行っているのがこの「御社を買収したい買手がいる」というDMです。

 

会社を売却する可能性のあるオーナーの中には、「買手がいるなら売却を考える」という方も結構多いので、こういうDMを受取ると、聞いたことの無いような仲介会社だったとしても一回話だけでも聞いてみようかな、と思ったりします。

 

なので、あんまり知名度が無くても、強みが無くても、アクティブに営業をかけることができるという点では当時は画期的だったのでしょう。

 

今ではどこでも同じような文言で毎週毎週届くので見飽きているという経営者の方が多数ですが、出回り始めた当初は物珍しさもあり結構な方が反応してしまったのではないでしょうか?

 

最近ではこういったDMの反応率は年々落ちているとも言われますが、それでも減らないのはこんな理由があります。

・他にアプローチの手段が無い

・狙った顧客層(業種、売上等)にアプローチできる

・期待利益から言えばまだ採算が合う

 

一番大きいのは、こういったDM(同じような電話やメール営業も含む)よりも効果的に案件発掘する手段が無いということでしょう。

 

税理士や銀行からの紹介で案件受託する会社や、Webなどから案件受託する会社もありますが、拡大路線を取って従業員を大量に雇った瞬間、固定費負担が重くなり、安定的に案件受託→マネタイズする仕組みが必要になってくるものなので、いままで紹介メインの営業だった仲介会社も結局短期的に成果が出やすいこういうDM・電話・メール営業を始めるケースが多いように見えます。

 

コスト的にも、手の込んだDMでも1通200円とかそういうレベルで送れるので、最低手数料で数万円も取るような会社は死ぬほど送れてしまいますね。

 

こんな感じで、お客さんに飽きられようが、迷惑になろうが、1,000通送って1通でも当たればいい、くらいの感覚で送っているというのがこのDMの実態です。

 

DMを送る真の目的は「専任の仲介契約」を取ること

 

ちょっと前置きが長くなりましたが、この買手いますDMの真の目的は、売手企業と「専任で仲介契約を締結すること」です。

 

専任っていうのは、「M&Aをやるならどんな買手だったとしてもこの仲介会社を必ず通します」ということで、他の仲介会社を入れない約束をするということです。

 

売手からすると拘束されるだけの文言なので最近では嫌がる売手オーナーさんもいるのですが、仲介会社としてはこの契約さえ取れれば、あとはM&Aを成約さえすれば最低報酬額が約束されるわけなので、そりゃ何としても欲しくなるわけですね。

 

で、ここで一番のミソは、「そもそも特定の買手がいるって営業したのに、その買手ではない他の買手とM&Aをしても成功報酬が発生する契約内容である」という点です。

 

どういうことかというと、仲介契約の中で、その「買いたいと言っている買手」である〇〇社と成約とした時に成功報酬が発生します、という風には書かれておらず、仲介会社が紹介した買手とM&Aしたら成功報酬が発生します、という風にざっくり書かれているという話です。

 

仲介会社サイドから見ると、最初に買手がいますっていうエサを見せて→包括的な仲介契約を締結して→他の買手も広く打診してそのうち1社でもM&Aする買手がいればそことくっつけて成功報酬を徴収する、という作戦なので、平たく言うと、別に最初に持ち掛けた買手とM&Aさせなくてもいいわけです。

 

売手としては、きっかけはどうあれ、最初の段階で会社の資料を提出したりヒアリングされたりで手間をかけている分、最初に動いている仲介会社に他の買手の打診も動かせてもよくなってくるという心理も働くので、こんな契約であっても疑問を持たずそのままM&Aを進めてしまうケースが非常に多いのです。

 

こういう心理を逆手にとって、まずは仲介契約を取ることを目的に、「買手いますDM」というエサをバラ撒いているということになります。

 

実際には買手がいないのに送っている仲介会社がほとんど

 

「買手がいる」という意味が、「〇〇社(売手企業)を既に知っており、名指しで買収したいという買手企業がいる」という意味だとすると、確率的には99%以上本当の買手なんていません。

 

例えば、人材派遣業界を例にとると、仲介会社は過去の案件で接点を持った買手から人材派遣業の買収ニーズを聞いていることはよくあります。

 

でも、そのDMを送っている先の会社がどんな人材派遣をしているか理解して、ピンポイントで買いたいという個別の買収ニーズは普通持っていません。

 

買手だって、詳しい財務内容も分からずに「買いたい」なんてオファーは出しませんし、ましてや聞いたことのないような会社をピンポイントで買いたいなんてことはあり得ないです。

 

 

筆者はM&A仲介業を今までやってきましたが、買手企業から「業界の集まりで〇〇社が廃業を検討してる、みたいな話を聞いたんだけど本当に売却したいのか聞いてみてくれないか?もし、売却を検討してるなら、調査の上ではあるけど検討したい」みたいな感じで、買収打診をお願いされたことはあります。

 

ただ、こういう時って、買手が明らかに売手と近い位置にある(場合によっては直接接点がある)ケースがほとんどなので、打診をお願いされたとしても数社程度です。

 

仲介会社が十社以上広く打診するケースというのは、仲介会社が外から買ってきた企業リスト(業種や売上規模などで絞った打診先リスト)を作って、「今からここに打診しますけど、もしM&Aに興味あるっていったら御社の方で検討していただけますか?」と買手に聞いてOKをもらったケースが多いですが、これでもまだ丁寧な方です。

 

多くの仲介会社は、「過去同業種で買収の実績のある買手を知っているので、もし弊社と契約いただけたらそこに打診しますよ」というレベルの状態で送ってきます。

 

当然、買手とそのDMを送ることについて了承を取っている訳ではないです。

 

それでもDMの中では、さもピンポイントで買収したがっている風の記載がされており、「関東地方で年商〇〇億円で〇〇業をしているお相手様です」みたいな表記がされていることもあります。

 

この手のDMやメールや電話というのは、丁寧に数社宛に打診するよりも、無差別的に数千、数万件打診をした方が確率的には成果が出る可能性があるので、買手と入念に詰めた上でDMを送るよりも、無差別な営業で、売手側が「ピンポイントでの打診を受けている」と勘違いしてくれたらラッキー、みたいな感覚で行われています。

 

こんな感じで、丁寧な本物の打診は数社程度にしか出さないので、売手企業の手元に届くDMやメールのほとんどは、「買手に相談もしてない、当然ピンポイントでもない、意味合いとしては”仲介を任せてくれたら買手を一から探しますよ”」という意味合いのDMやメールとなるわけです。

 

筆者が上で、99%と記載したのはそういう意味です。

 

 

相手に誤解をさせるような行為をさせる人にM&Aを依頼するのは辞めた方が良い、というのが筆者のそもそもの考えですが、もし、どうしても本当に買手がいるか気になるという方は仲介会社にこのように言ってみるのも一案です。

 

「御社とは専任契約はしない。その手紙の買手企業だけ紹介してもらう形でも問題は無いか?(もちろんその買手で進む場合は御社が仲介で良い)」

 

仲介会社側が特定の買手と何等かの裏付けがあれば、1社だけの打診であっても成約する可能性はあるので「問題ありません」と言う可能性はありますが、買手いますというのがでっち上げだったら、実際に適当な買手に打診をしたところで成約する可能性は低く、企業概要書の作成など手間をかけるだけで仲介会社的にはリターンの無い話になりうるため、「できれば他の買手も含めて打診させてください」みたいな話をしてくる可能性が高くなります(着手金を取る場合は仲介会社的にも美味しい可能性はあるので、そういった仲介会社の場合はこの対象外です)。

 

ある意味、踏み絵みたいな感じですが、前述した真の目的からすると売手側として合理的な対処になります。

 

本来売手としてみたら、特定の会社を紹介したいって仲介会社が言ってきたのに、そのほかの買手とM&Aした場合でも手数料くれっていうのはおかしい、という主張は筋が通っているとも言えます。

 

よく分からないM&Aで、いいように煙に巻かれたり、仲介会社の都合の良いように誤解されられたりする売手オーナーさんが多すぎるので、是非この辺を知った上で適切に対処していただければなと思います。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

この手のDMやメールは割と前から営業手法としてどの仲介会社もやっていますが、筆者の知る限り、数年前と文面は対して変わっていません。

 

変わったのは機械で印紙した手書き風の手紙が増えたことくらいでしょうか(笑)

 

もう、日本中の企業にDMを配り終えたんじゃないかってくらいやってるはずなので、今はこういうのに騙される人はだいぶ減ったかと思いますが、仲介会社にいた人間でないと分からないM&A仲介業の魂胆なんかもあったりするので、今回お伝えした内容を参考に、仲介会社の見極めにお役立ていただければなと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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