お悩み社長
最近よくご相談いただく内容です。
巧妙なのが、売主がまだM&Aの知識がない状態で、高めの株価算定を出し、「このくらいの株価で売れるんだからこの手数料も支払えるでしょ?」みたいなことを言って、高額な手数料を支払うことを契約書で縛ろうとしてきます。
「株価算定が思ったより高かった!」と、浮かれてハンコを押すと不利益を被るリスクがあります(これだけ言っても契約書を読まずに締結してしまう方がいらっしゃるのが現状です。。)
そもそも仲介会社が出す株価算定は参考でしかないので、その価格で売買できるという根拠は何もありません。
なので株価算定を鵜呑みにするのは危険ですし、実現するかどうかも分からない株価で仲介手数料を払う計画を立てるなんて無謀です。
「仲介手数料高いな~」と思っている状態で契約を結んでは絶対にいけません。ちゃんと比較しましょう。
M&A仲介業を営む筆者が、忖度無しでどの業者がどのくらいの手数料がかかるのかまとめた記事もあるので是非ご一読下さい。

M&Aの仲介手数料というのはそもそも法律で決まっているものではないので、基本的には「M&A仲介業者の言い値」です。そして、それをそのまま受け入れるかどうかは売主側の判断です。
裏を返すと、実は値下げ交渉もできる、のです。
そんなわけで今回は業者への値下げ交渉について取り上げたいと思います。
筆者もM&A仲介業者の立場ではあるのでこれは商売の種明かし的な話にもなりますが、筆者は同業者の商売を邪魔しようという意図はなく、むしろ、顧客も業者と対等に交渉できるようになることで透明性の高いM&A業界にすることができ、昨今の不信感を改善させる可能性もあると思って発信しています。
それではいきましょう。
M&A手数料値下げを交渉する方法
M&A仲介会社に手数料を下げてもらう方法については、色々あると思いますが基本的に交渉事です。
交渉事といってもそんなに難しくなく「安くしてほしい」というだけで事足ります。
ただ、交渉を持ち掛けるタイミングや方法によって結果も変わってくることがあります。
M&A仲介業者をコンペにさせて相見積もりさせる
やはり王道ですが、相見積もりが一番有効です。
M&A仲介手数料には法律上の制限が無いので、業者が「うちの会社はこのくらいなら取れるかな」という感じのノリで決めているのが実態です。
なので、大体規模が大きくなると「弊社はこのくらいの規模感だから最低報酬額に設定しても受託できるだろう」と値上げしていたりします。
これは何を意味しているかというと、「コストが〇〇円かかるから売価は〇〇円」みたいな決め方をしていない、ということです。
こちらの記事でも解説していますが、1件成約するのに、仲介会社のコストとして何千万円もかかるわけがないので、受領する手数料のほとんどが仲介会社の利幅なのです。

だとすれば、「何としても受託したい!」と仲介会社が考えている案件なのであれば、多少手数料を下げても応じてくれる、なんてことは当たり前にあるのです。
先ほどM&A仲介手数料には法律上の制限が無いとお伝えしましたが、これは下限の制限もないということなので、究極的には「売手手数料は無料でやります(手数料は買手からもらいます)」という対応も実際あります。
この交渉が上手くいくかどうかは「案件に魅力があるか」が深く関係しているため、やってみないと分かりません(筆者はだいたい判断できますが、多分業者でないと分からないと思います)。
ただし、これは仲介契約締結前にしないと意味がありません。
なぜかというと、基本的に仲介契約というのは手数料を払うことを約束する契約でもあるので、これを一度結んでしまうと「やっぱり値下げしてほしい」と言っても、「こちらの契約書で手数料を了承したではありませんか」と反論を受けてしまうからです。
仲介業者が、この案件取れるかなどうかな、という心理状態の時に交渉を持ち掛けるのが普通です。
「まだ頼んでもないのに値切ってくる顧客なんて煙たがられないかな・・」
と思う方もいるかもしれませんが、ここについてはそこはそんなに気にしなくていいです。
M&A業界でも「自分のコンサルティングはそんな価値じゃない!」といって断るタイプのコンサルタントもいるにはいますが、筆者の感触としては、不動産業界のように「〇〇な客は〇〇だ」みたいな偏見が植え込まれている業者は少ない印象があるのと、結局のところビジネスとなるか否かでドライに判断している業者が多い印象があるためです。
筆者も長らくM&A業界にいると「安くしてくれないか」という要望を言われることもありますが、単純に商売になるか否かで応じるか判断しています。値下げ交渉を持ち掛けられたこと自体に腹を立てるというのは、単に個人のプライドの話であって、それをビジネスの世界に持ち込むのは違うという考えからです。
引継ぎ支援センターを経由して仲介会社に依頼する
最初の仲介会社選びの段階で使える方法なのですが、最初に仲介会社と接点を持つのではなく、まず商工会議所の引継ぎ支援センターに行くという方法です。
参考 トップページ(外部サイト)事業承継・引継ぎポータルサイト
引継ぎ支援センターとは公的に事業承継を支援しているところで、M&Aも支援してくれます。
※公的な機関なのでお金はかかりませんが、業として仲介をするわけではなく、仲介会社ほどガッツリ案件に絡んでくれる訳ではないので、相談所的なイメージです。
色々なM&Aの仲介会社や銀行はこの引継ぎ支援センターに登録しており、引継ぎ支援センターは、相談にこられた売主を登録しているM&Aの仲介会社に紹介しています(もちろん売主が拒否したら紹介しないと思いますが)
M&A仲介会社や銀行にとって引継ぎ支援センターは案件を紹介してくれるありがたい存在なので、中には「引継ぎ支援センター経由の案件は標準の手数料よりも格安の手数料を設定している」という会社もあります。
M&A業界は同業間の競争も激しいので、仲介会社においては顧客を見つけるためのマーケティングコストはそれなりの金額になってきますが、引継ぎ支援センター経由の案件はそういったマーケティングコスト無しで獲得できるわけなので、その分コストダウンしても問題ない、という考え方もできるかもしれません。
トリバゴのように、同じ仲介会社でもどこ経由でコンタクトを取るか次第で手数料が変わる、という構造がM&A業界にはあったりもします。
ただ、この方法で注意しないといけないのは、引継ぎ支援センターの担当者や方針によって紹介する業者に偏りがあることです。
仲介手数料300万円以下で業者を探しているのに、最低報酬1,000万円以上の業者しか紹介されないということになるといくら相見積しても高くつくこともあります。
癒着とまでは言いませんが、引継ぎ支援センターの担当者別に馴染みのある業者とそうでない業者、繋がりがある業者とそうでない業者というのは当然あるので、引継ぎ支援センター経由の業者しか付き合わない、ということなると選択肢は狭まります。
なので、大手仲介会社に依頼するなら引継ぎ支援センター経由で、くらいが良いのかもしれません。
ちなみに、顧問税理士や金融機関にM&A業者を紹介してもらうというのは手数料を安くする上では辞めた方がいいです。
というのも、顧問税理士や金融機関は民間の事業者なので、M&A業者を紹介する見返りに紹介料をもらいます(紹介に対して紹介料を貰うこともあれば、成約したときに成功報酬の何割かをバックしてもらうこともあります)。そうすると、顧問税理士や金融機関はできるだけ手数料の高いM&A業者を紹介したくなるインセンティブが働くので、結果売主側の手数料が収まる可能性はぐんと低くなります。
手数料交渉をしてどのくらい安くなる?
M&A手数料の交渉をするとどのくらい安くなるのでしょうか?
これはケースバイケースにはなってしまいますが、敢えて筆者の印象を言えばこういう印象です。
・当然手数料水準が高い仲介会社の方が下げ幅は大きい
・ただ、会社のポリシーとして下げない大手もある(だからと言ってM&A支援の質が良いとは限らない)
・担当コンサルにインセンティブが支払われる設計の場合は渋られがち
・上場している大手より上場してない中堅の方が交渉しやすい
・交渉によって半額以下、場合によって無料になったという事例もある
M&A仲介会社の中には上場している仲介会社もありますが、上場すると利益率をいかに高くするかが株主からの期待も大きく、経営としては中々容易にディスカウントできない傾向があります。また、同業からも「お高く留まっている」と言われる大手もあり、交渉を試みるもけんもほろろという方も結構います。
特に大手仲介会社の中には、「他の仲介会社は安かろう悪かろうなので辞めておいた方がよい」「弊社には専門家や経験のあるコンサルタントが多い」「結果的に高く売れる会社に任せた方が、手数料が高くても良い」などと言い、だから弊社は値下げできない、と断る事例を筆者は確認しておりますが、これは疑った方がいいです。
そもそも、大手の方がコンサルタントの経験値が玉石混交なので担当者ガチャ感は否めないですし、高く売ることを条件に高い手数料を飲ませる行為は利益相反に繋がる行為なので、まず第一にこういうことを言うコンサルタントを信用してよいのかを疑いましょう。
筆者の経験上、こういうことをいうコンサルタントはM&A仲介をする場面でも、あることないことを言って買手の要求を飲ませたり、仲介にとっても都合のよい考え方に強引に持っていくという仲介をしています。
あと、値下げ幅についていうと、10%下げくれ、とか、5%下げてくれという交渉はどちらかというと珍しく、「他社は〇〇円でやってくれると言っているからそれ以下でないと御社には頼めない」というやり取りの結果、一気にその金額まで下がるというケースの方が多い印象です。
筆者的には、手数料が高いからといって仲介の質がよいとは到底思えないので、手数料1,000万円の仲介会社に交渉して500万円にしてもらうなんてことをしなくとも、最初から手数料200万円、300万円で質のよいコンサルタントに依頼したらいいと思います。この方が楽です。
相見積が目的でなくとも、色々な仲介会社やコンサルタントを見比べることはとても重要なので是非してみてください。筆者は「M&A仲介に関しては、仲介手数料と提供されるサービスの質は全く比例しない」といつも言っていますが、その理由が分かるはずです。
いかがでしたでしょうか?
手数料交渉についてお伝えしましたが、くれぐれも、M&Aが終盤になって単に手数料を払うのが惜しくなってきたから交渉するというのはやめてあげて下さい。
成功報酬の場合は、最後に報酬をもらうことになるので、それまでは仲介会社の持ち出しで動いていることになります。それなのに最後になってやっぱり手数料下げろというのは、レストランで存分に食べておいてお金は払えない、と言っているようなものなので、、。
実は、「この手数料を払うだけの価値がないコンサルティングだった」という意見を漏らす方も世の中では結構多いのですが、それであれば、最初の段階でよい仲介会社・よいコンサルタントを選ばないといけません。
M&Aは成果物を最初にお客さんに示すことが難しいものではありますが、仲介会社やコンサルタントの見極め方についてはこのブログの主題になっていますので、よろしければ他の記事もご覧いただければ嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ちなみにM&A手数料以外にも売主が払うコストや注意点もありますので、それはこちらの記事もご参考ください。

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