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「建設業が得意なM&A仲介会社って?」事例と業者の選び方

お悩み社長

建設業の会社を売却しようと思ったらどんな仲介会社がいいの?

 

日本でとっても多い業種、建設業。

 

社長の高齢化や会社の将来性を考えて売却を考える方も多いです。

 

そんな中「御社と資本提携したいというクライアントがいる」なんてDMや電話も建設業の社長のところにはたくさんやってきます。

 

「弊社は建設業のM&Aが得意です」とか「私は建設業専門のコンサルタントです」とアピール合戦になることもしばしば。

 

そんな中から仲介会社を選ぶのって結構大変だな、と感じている人も多いようです。

 

だいたいどこの仲介会社に話を聞きに行っても「弊社は建設業のM&A実績があるので!」とグイグイくる感じになるので、客観的な意見を参考にしたい方は今日の記事をご覧いただけると実体が掴みやすくなるかなと思います。

 

それではいきましょう!

 

建設業のM&Aもいろいろ

 

M&A業界では、「建設業の担当です」とか「IT業の担当です」というコンサルタントも多いですが、これって結構アバウトです。

 

総務省の日本標準産業分類でいくと、建設業というのはまず「総合工事業」と「職別工事業」と「設備工事業」に分かれます。

 

そしてもっと細かくいくとこんな感じです。

総合工事業 : 一般土木建築工事業、土木工事業、舗装工事業、建築工事業、木造建築工事業、建築リフォーム工事業

 

職別工事業 : 大工工事業、とび・土工・コンクリ―ト工事業、鉄骨・鉄筋工事業、石工・れんが・タイル・ブロック工事業、左官工事業、板金・金物工事業、塗装工事業、床・内装工事業、ガラス工事業、金属製建具工事業、木製建具工事業、屋根工事業、防水工事業、はつり・解体工事業

 

設備工事業 : 電気工事業、電気通信・信号装置工事業、管工事業、機械器具設置工事業、その他設備工事業  など

 

読者の方の事業はありましたでしょうか?

 

一口に建設業といってもこれだけ種類があり、しかもそれぞれ買手の種類や見つけ方は異なります。

 

なので、仲介会社に「どんな分野が得意なんですか?」と聞いて「建設業が得意です」と回答するのは、「どんなスポーツが得意?」と聞いて「球技が得意です」っていうようなもんです。

 

M&Aコンサルタントというのは一般的に受注したがる(売手と仲介契約を結びたがる)ものなので、電気工事のM&A仲介しかやったことのないコンサルタントでも、「建設業が得意です」とアピールすることもありますし、土木工事をしている売手に対して「建設業の実績があるのでお任せ下さい」と言ったりもします。

 

実績の有無を仲介会社を決める判断基準にしているのであれば、任せてから「なんか違うな」と思うかもしれませんので、具体的にどんな工事をやっている会社をどんな会社に売却したのかまで聞いた方がいいかなと思います。

 

タイプ別成約事例

 

M&Aはかなりの割合で、同一もしくは類似業種、川下川上などの間で行われます。

 

そのため食品製造をしている会社が学習塾を買収したり、飲食店をしている会社がネジ工場を買収したりなんてことは普通ありません。

 

また、建設業が建設業を買収するということはあったとしても、土木工事業をしている会社を電気工事会社が買収するみたいなことはあまり聞かれません。

 

中小企業のM&Aでも「シナジー効果」という言葉がよく出てきますが、これは売手の行っている事業と買手の行っている事業が一緒になることで相乗効果が生まれるか、という話で、同じ建設業同士でもシナジー効果が生まれなければ買収は積極的に行われません。

 

あるいは買手にとっては管理できる(知見がある)領域でないと怖くて買えない、買って問題が起こっても対処できない、などの理由もあります。

 

建設業ならではかもしれませんが、どのような工事業であっても職人さんというのは非常にこだわりが強かったり、仕事に誇りをもっていたりすることもあってか、経営陣には統率力が求められることも多いです。こんなことからも、買収する会社は買手にとって近い仕事をしている(経営の手綱を引きやすい)会社が好まれる傾向はあるといえます。

 

もしこれからM&Aで会社や事業を売却しよう、と思われるのであればどのような先が買手になるのかを想像してみるのも適切な仲介会社を見抜く上で大切です。

 

仲介会社に買手探しをお願いすると、色々な会社名を挙げられるとは思いますが、自分の会社と近い会社なのか、その会社は自分の会社を買収することでシナジー効果が生まれるのかなどは売手として冷静に見極めるのがいいと思います。

 

同業だからといって仲介会社が買手と想定していても、売手からしてみたら「絶対にあの会社は買わない」ということを思われるケースも多々あるので、その理由について深い議論をしてから動き始めることが肝心です。

 

ここで、実際に筆者が成約をお手伝いした事例を少しご紹介します。

 

内装工事会社 × 電気工事会社のM&A

 

買手が内装工事会社、売手が電気工事会社という事例です。

 

内装工事会社は地方の会社で主に店舗系の内装工事などをやっている会社でした。社長が精力的に活動し全国で工事案件を取れる体制が整っていたため、全国でM&A案件を探索している状況でもありました。

 

そんな中、都市部で電気工事をしている会社の譲渡の話があり、こちらの内装工事会社との面談になりました。

 

内装工事会社はC工事を行う会社でしたが、自社の職人で賄えない工事を外注していたこともあり、その内製化をすることで自社のコスト削減と電気工事会社の仕事も増やすことができるというシナジー効果が提案でき、さらに電気工事会社は職人気質の社長で営業は苦手、3次、4次の仕事なども多く利益が取れていない状態だったので、この提案は渡りに舟、といった感じでした。

 

そのまま順調に話がまとまり成約に至りましたが、ここでのポイントはお互いの足りないところを補完できたという点です。

 

この補完し合う関係というのも色々あって、人的な部分で補完し合うのもあれば、エリア的な部分で補完し合うのもありますし、情報やノウハウを補完し合うのもあるなど様々です。

 

また、内装工事会社が電気工事会社を選べる立場にあるというサプライチェーンのような問題もあったりするので、M&Aを行う際は、色々な方向から事業を見た上で適当な候補先かどうかを判断するのが良いと思います。

 

内装工事会社 × 内装工事会社のM&A

 

こちらは売手も買手も住居用の内装工事をしている会社の事例です。

 

これは事業承継で第三者への譲渡を検討していた売手と、本業(内装工事業)を拡大させる意欲のあった買手のニーズがマッチしたM&Aになります。

 

買手はボード工事や軽鉄工事、壁工事など内装仕上工事に定評のある会社でしたが、万年職人不足の状態になっており、経営者としては職人が確保できれば売上拡大が間違いなくできる自信があるということで同業のM&Aを検討していました。

 

売手の内装工事会社も社外の常庸職人含めてかなりの職人を擁していたので、この点に魅力を感じた買手が是非傘下に、ということで成約に至りました。

 

このM&Aのポイントは経営資源の拡充という点です。

 

人手を確保するのが目的だったりしますので、他の業種でいえば、運送会社がドライバー確保のためにM&Aを行ったり、ソフトウェア開発会社がプログラマー確保のためにM&Aを行うようなのと同じイメージです。

 

同業であれば双方の人材が活用できるという面も多いですが、特に建設業の場合は、施主の求める品質で仕事ができるかどうかなども重要になってくるので、本当にマッチする職人を擁しているかというのは少し深い会話も必要だと思います。

 

エクステリア用品販売会社 × れんが・ブロック工事業のM&A

 

こちらは買手がエクステリア系の商品を取り扱う会社で、売手がれんが・ブロックの工事会社という事例です。

 

れんが・ブロックの工事会社は事業承継での売却を検討していたところ、販売に合わせて工事までサービスを拡充したいエクステリア用品販売会社が名乗りを挙げて成約したという案件です。

 

れんが積み職人は業界では希少でもあり、また、熟練の技を習得するまでに期間を要するので、工事が可能な職人を確保する意味でのM&Aとも言えます。

 

このM&Aのポイントとしては買手によるサービスの増強という点になります。

 

買手にとっては、物販だけでなく工事まで一貫して行うというのは付加価値になるため、業種は違うけど扱う材料は近い(一緒)という組み合わせでもシナジー効果が出ます。

 

また、買手が商材を販売する先が売手だったりもするので、売手に利益を落としたりとグループ内での合理化が図りやすかったりもします。

 

このような建材商社×工事会社という組み合わせも組み合わせとしては綺麗なのですが少し注意が必要な点もあります。

 

それは、商圏や商流などの関係で、買手が買収したことによって仕入先や顧客に問題が生じることもあるという点です。売手の会社に親会社(買手)の色がついてしまうことで、今までしていたやり方で事業運営ができなくなってしまうおそれもあったりするということです。

 

建材業界は木材・電材・管材・エクステリアなど縦割りが昔から強いので、どの会社がどの会社を買った、という情報も営業担当を介して広まるのが早いですし、こちらの縄張りに参入してきた、ということで敵視されたりと、M&Aをする際には注意すべき点も多いです。

 

 

このような感じで、M&Aには色々な種類があります。

 

ただ、何等かの相乗効果が見込まれて成約に至る、ということが多いわけなので、売手の事業を理解した上で適切に買手を分析・選定してくれるコンサルタントを選ぶのが良いかなと筆者は思います。

 

会社の規模別、M&A業者の選び方

 

事業に対する理解をきちんとしている仲介会社・コンサルタント選びが良いという話をしましたが、その上で、会社の規模感も考え仲介者を選びましょう。

 

M&A業者は大変増えているので正直選びにくいと思いますが、M&A業界の環境も踏まえた上で、「これはない」とか「こうすべし」という感じで説明していきたいと思います。

 

一人親方

 

個人事業か法人でも職人兼社長の一名だけ、という状態の売手です。

 

こうしたところにも最近では「御社と資本提携したいというクライアントがいる」なんてDMや電話が来たりします。

 

ですが、大抵はリストに入っていたからという理由でDMや電話をしているだけなので、いざ連絡をしてみても「御社は難しいですね」となると思います。

 

M&Aというのは譲渡した後も正常に今までの企業活動がある程度機能することが前提でもあったりするので、高齢な一人親方が会社を売却して退任してしまったりすると何も残らないことから検討の土台にならないというのは実際よくある話です。

 

手数料的にもどの仲介会社に依頼しても高すぎる、と感じるはずなので、何か事業を残したいという想いを持たれているのであれば、全国に設置されている公的機関の事業承継・引継ぎ支援センターに相談されるか、こういった新しいサービスなどを活用するのもよいかなと思います。

事業承継プラットフォーム「relay(リレイ)」ってどうなの?

 

従業員10名以下

 

中小企業のM&Aでもよくある顧客層になります。仲介会社の営業もガンガン来ていると思います。

 

社長が退任をして会社が傾かないことなどは前述の通り大切ですが、世の中で広く行われているM&Aではこのような規模感の会社も多いです。

 

M&Aを進める際には、先ほどの事業承継・引継ぎ支援センターに相談される方もいますし、自分でM&Aマッチングサイトに登録して買手を探す方もいますし、仲介会社などを使う方もいらっしゃいます。

 

ただ、仲介手数料に関していうと、多くの仲介会社は高すぎると感じるケースが多いと思います。

 

こちらに仲介会社の手数料をまとめた記事もあるのでご参考いただければと思いますが、会社の規模的に、売却できたとしても最低報酬額が適用される可能性も高く、売却後の手取金額に対する手数料が大きすぎる(場合によっては手数料でマイナスになる)こともあり得ます。

「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!

 

仲介会社の営業はガンガン来ますが、手数料を聞いてから本題を聞くくらいがちょうどいいかもしれません。

 

最低報酬額が高い仲介会社を使うと割を食う顧客層可能性があるので、最低報酬額を最重要の確認事項として比較すると良いと思います。

 

なお、一人親方の箇所で説明したオープンネームでの買手探しというのは、従業員などを不安にさせてしまうなどもあるため、従業員がいるこの層以上の売手が検討する際には十分注意した方が良いと思います。

 

従業員10名~100名

 

中小企業のM&Aでもよくある顧客層になります。中小専門の仲介会社にしてみると一番スイートスポットな顧客層ともいえます。

 

数十名以上の会社になると、きちんとした組織になっているケースも多いため、M&A後もスムーズに進められることも多いです。

 

この顧客層から、売却金額も大きくなってくるので、のれんなどの評価によって買手間の提示金額にもバラつきが大きくなってきます。

 

売手であればより多くの買手と交渉することでメリットを受けやすいとも言えるので、より多くの買手と交渉できることを考えていくのが良いです。

 

仲介会社を使うのが候補先を増やす上では必要になってはきますが、変な仲介会社を使ってしまうと特定の買手を押し込んできたりと面倒なので、仲介会社をそもそも信用できんという売手であれば、非専任という形で複数の仲介会社を併用するのも一案かと思います。

 

また、売却金額が5億円をゆうに越えるようなケースでなければ、まだ仲介会社によっては最低報酬額が適用されるケースもあります。

 

仲介会社の質は手数料の高さには比例しないものなので、この顧客層でも最低報酬額の低さは重要視しながら声を掛ける仲介会社を選定して、その次にコンサルタントの質を見極めに行くというのが無難だと思います。

 

従業員100名以上

 

この顧客層では売却金額が5億円をゆうに越えるようなケースも頻出してきます。

 

比較的高めの仲介会社は最低報酬額が2,500万円などで設定していたりしますが、最低報酬額が500万円だけどレーマン方式で仲介手数料を計算しますという仲介会社の場合でも、売却金額が5億円なら仲介手数料は2,500万円となります。つまり一緒です。

 

レーマン方式の計算方法にも色々ありますが、このくらいの顧客層になってくるとどの仲介会社で計算しても仲介手数料が一緒になる、みたいなことも多くなってきますので、あまり仲介手数料で仲介会社を選ぶということを考えなくても良くと思う方も多いかもしれません。

 

こういうケースにおいては固定で仲介手数料は〇〇万円としている仲介会社の方がレーマン方式で計算している仲介会社よりも圧倒的に安い、みたいなことも起こるので、仲介手数料の設定方法、に重きを置いて仲介会社を比較するのが良いと思います。

 

なお、ざっくり営業利益で1億円を超えてくるような売手であれば、仲介ではなくFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を起用することも可能になってくるかもしれません。

 

FAとは売手・買手どちらかのみの味方になるアドバイザーになるので、仲介役ではなく、こちらだけの味方になって交渉してこさせるということも可能です(仲介会社は交渉はしません)。

 

弁護士みたいなイメージを想像すると分かりやすいですね。

 

売手と買手の間でFA同士がやり合う、みたいな感じになり、取引の相手方の温度感は感じにくくなってしまうなどデメリットもあるので、どちらかというと売手も買手も合理的な考え方をしており、交渉は交渉と割り切れる感じのタイプでないとマッチしないこともあるので、ご自身のM&A検討のイメージに沿った方を選ぶのも良いと思います。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

建設業が得意ですとアピールする仲介会社やコンサルタントでも、実際任せてみたら建設業のことも良く分かってないコンサルタントで、やっと相手を見つけてきたと思ったら最低報酬で高額な手数料を取っていく、なんてことは日常茶飯事です。

 

売却する会社の規模にあった仲介会社選びと、きちんとした知識と経験が担当者にあるかという点に注目して、選んでもらえるといいかなと思います。

 

最後までお読みいただき有難うございました!

 

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