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【実践編】M&A会社の本質を見抜く7つの質問

お悩み社長

どのM&A会社も立派そうに見えるんだけどいい見抜き方は無いものかな?

 

M&A仲介会社の数は増えていますが、どの仲介会社も「弊社は実績もある専門家集団です」みたいなアピールをするので、本当にM&Aの相談をして良い会社なのかどうか分からなくなってしまいますよね。

 

結論から言うと、いくら世の中で知れ渡っているM&A仲介会社であっても、素人みたいなコンサルタントは在籍しているので、そういう担当者に当たってしまうとM&Aは失敗するか、M&A仲介会社の労に不相応な法外な手数料を支払うことになります。

 

筆者は元々大手のM&A仲介会社におりましたが、そこで感じたのは「M&A仲介業という事業はスケールメリットがそれほど出にくく、どんな大きな仲介会社であったとしても、その中身は個人事業主の集まりに近い」ということです。

 

それゆえ、他業界のように、規模が大きい会社の方が「質が高い上に提供する価格が安い」という通説があまり成り立たちません。

 

むしろ、規模を大きくすることでブランドイメージを構築して、(質は伴ってなくとも)手数料を高く設定しようとするM&A仲介会社が非常に多いというのが実情です。事実、上場しているM&A仲介会社のIR情報では、上場してから案件単価が上がったとアピールする内容も見られ、昨今では案件単価を上げるために上場を目指すという会社も増えているのではないかなと思います。

 

たぶんこの記事を読まれている方は、「質が低いのに高い仲介手数料を払うのは嫌!」と思っているものかと思いますので、M&A仲介会社がどんな性質の会社なのかを見抜く質問をお伝えしていきたいと思います。

 

それではいきましょう!

 

M&A仲介会社の本質を見抜く7つの質問

 

M&A仲介会社と何等かの形で接点を持ち、何度か面談をする機会があるかと思いますが、仲介契約やアドバイザリー契約を締結する前に以下のような質問をしてみましょう。

 

「他のM&A仲介会社と比較した時の、あなたの会社の優位性って何?」

他のM&A仲介会社と比べて何が優れていると言えるのかは、M&A仲介会社を選ぶ上で間違いなく重要な点と言えます。

 

たぶんこういう質問をすると、

「弊社は全国に〇〇社のネットワークがあり買手探しが有利に進められます」とか、

「弊社はAIを活用して業務の効率化をしていて、短期間でM&Aの成約を実現できます」とか、

「専門家が在籍しており、専門的なアドバイスを提供できます」とか色々言うと思います。

 

ここで「なるほど」と分かった気になってしまう経営者の方が多いですが、こんな説明で納得してはいけません。

(ここで納得してしまうから「どの会社も立派そうに見える」のです)

 

もう一歩踏み込んで、「競合他社は何社のネットワークがあるのか」「専門家の数は他の会社に比べてどのくらい多いのか」といった質問をしてみましょう。おそらく「他社の事はちょっと分かりません」という感じで、明確な答えは無いと思います。

 

要は、他社と定量的な指標で比較してもないのに「自分の会社が一番良い会社だと自負しているだけ」ということです。

 

なぜ、わざわざ高い手数料を払ってその仲介会社に依頼するのか、というとても重要な動機付けをこういう安易な理由で片づけてしまうからM&A仲介を依頼した後に不満を抱えることになってしまうのです。

 

もし他社の情報が分からないということであれば、その仲介会社の正しい情報(専門家の数であれば、税理士・公認会計士などの士業の在籍人数など)を聞いた上で、あなたの方で比較するか、優位とは言えないレベルの情報ということで話半分で聞いておくくらいでよいと思います。

 

あと、”買手探しのためのネットワーク”という表現は非常に曖昧な表現なので、M&A担当者に直接すぐにコンタクトできるルートなのかどうか、過去1回買収ニーズを聞いたレベルなのか定期的に案件情報をやり取りしているレベルなのか、社内での買手探しの業務フローはどうなのか、きちんと確認した方が良いです。

 

「あなたの会社の手数料ってどういう根拠で設定されているの?」

M&A仲介会社的にはあんまり聞かれたくない類の質問です。

 

なぜなら、どの仲介会社も自社の手数料は「案件受託できる範囲内でできるだけ高くできればいいな」で決めた価格だからです。

 

「大手の仲介会社は〇〇万円くらいの水準なので、弊社のネームバリューでは〇〇万円くらいまでならとれるだろう」という着想なので、きちんと説明できない会社がほとんどだと思います。

 

加えて、きちんと競合他社との差別化もできていないので、「他社よりも〇〇万円程度費用は掛かるが、その分弊社を選んでくれれば〇〇という付加サービスがある」と説明することも難しいはずです。

 

「質」と「価格」の比較を元に、妥当なM&Aサービスを得たいと思っているのであれば、前述の競合他社との優位性と手数料の設定根拠のつじつまが合っていない点に無関心ではいけません。

 

前述の質問で「弊社はAIを活用して業務の効率化をしていて、短期間でM&Aの成約を実現できます」という質問も挙げましたが、業務の効率化をしているのであれば、その分人件費は浮くはずで、仲介手数料も安くなるはずです。それはきちんと仲介手数料(着手金の有無や、最低報酬額の高さなど)に反映されていますでしょうか?

 

また、「弊社は表明保証保険を無料で付加しています」というメリットを伝えられたとして、一般的に保険料100万円~300万円で加入できる表明保証保険の分以上に他の仲介会社より手数料が高くないですか?

 

こうした質問に答えられないなら、手数料設定に明確な考え方が存在せず、「手数料を取れるだけ取りたい」という考え方のある仲介会社とも言えるので、サービスの質に不相応な手数料設定である可能性が高いと言えます。

 

どんなに注意しても、現場のM&Aコンサルタントはいいことを言ったり、適当な事をいったりするリスクはどうしてもあるので、「見極めが難しい」と思われる方は、絶対に裏切られない仲介手数料の金額をもとに良いコンサルタント(仲介会社ではなく)を探すのが間違いないかと思います。

 

「成約した場合にはコンサルタント個人にインセンティブが支払われるのか?」

答えてくれるかは別にして、これを聞くことで、そのコンサルタントの意見を今後どういう立場の意見として解釈したら良いかの判断基準を得られるということです。

 

インセンティブが支払われる方が何としても成約させるモチベーションが高いはずなので、当初の話から考えて明らかに無理矢理話をまとめさせようとしてきているかどうかを見極めるのに役に立ちます。

 

良いコンサルタントというのは始めからあらゆる可能性をきちんと伝えた上で、都度M&Aの流れ上どういう状態なのかを客観的に伝えてくれ、判断を依頼主に仰ぐという姿勢を取ります。

 

一方で、自分のインセンティブしか考えていないコンサルタントは、依頼主を「M&Aはこういうもんです」とマインドコントロールしようとしてくることも多いです。

 

「この人は本当にうちの会社の事を考えてくれている」と性善説で思うのも良いのですが、それぞれの利害関係を明確にしていないと、その信頼関係を利用されるというリスクもあるので心構えとして必要なのです。

 

腹を探る相手は、実は買手だけではないってことですね。

 

「今回の案件には、誰がどんな形で関与するの?」

M&A仲介会社と仲介契約やアドバイザリー契約を締結する前に必ず確認しましょう。

 

契約を結ぶまでは、M&A業界で長年経験を積んだ熟練コンサルタントが訪問してくれたけど、契約した途端に新米コンサルタントが担当になるという事例はたまに聞かれます。

 

専門性をアピールして高い仲介手数料を要求してくるのであれば、主担当になるコンサルタントも実績と経験が豊富でないとなんだかおかしいですが、どのコンサルタントを主担当にするかをコミットしてくれる仲介会社はほとんどありません。

 

これって普通に考えておかしいですよね。

 

どのM&Aコンサルタントに担当されるかで成約率や、M&Aを進める上での売手側のストレスなんかも変わってくるので、この重要な部分を手数料を取る側である仲介会社に任せてはいけません。コンサルティング業界では、本来どのコンサルタントに任せるかは依頼主側で選べるのが普通ですが、M&A業界はその辺が全く整備されていないので、「この人に任せたい」と主張する依頼主に比べ、主張しない依頼主は損する可能性が高いとも言えます。

 

ちなみに、こちらの記事でも説明した通り、M&A業界ではコンサルタントの役職についてもインフレ状態にあるので、「役職を持っているコンサルタントだったらちゃんとしているだろう」というのはただの妄想なので、自分の感性を信用するようにしてください。

「みんな役職持ち?」未熟なコンサルタントに騙されない方法

 

「あなたの会社にはどのくらいM&Aを経験したコンサルタントが多いの?」

会社としてどのくらいのM&A経験者がいるかは、その仲介会社を知る上で重要です。

 

こちらの記事でも説明しましたが、大手・中堅のM&A仲介会社は頻繁に人材募集をかけていることが多く、M&A仲介を経験している人ではない業界未経験者を大量に採用しているケースも多いです。人員拡大と売上拡大が比例するビジネスなので、事業規模拡大の為に人員確保が必要になる事情や、同業への離転職や独立するための退職も多い事情が背景にはあります。

【図解】「M&A業者はこんなにいらない?」タイプ別あなたが選ぶべき仲介業者とは

 

こういう質問に対して「豊富なM&A経験者ばかりです」と答える者もいるかと思いますが、会社が事務所を増床したり拡大志向が明らかなのに豊富なM&A経験者ばかりというのであれば、それはそれで矛盾があるケースもあります。

 

そもそもM&A業界はまだ新しい業界なので、本当にM&Aで経験値のあるコンサルタントの絶対数はまだまだ少ないと思います。

 

どの会社も多数の豊富なM&A経験者を取り揃えるなど困難で、見せかけ上の役職を与えたり、複数のコンサルタントで成約した案件をそのコンサルタント個人の実績として成約件数1件としてカウントしたりと、見栄えを良くさせることに必死です。中には、1件成約させただけで「豊富なM&A経験者」扱いしている仲介会社だってあります。

 

会社なので新人がいること自体は別に悪いわけではないですが、こういう質問には「新人が多いけど現場に一人でいかせるようなことは会社の規定上できない」とか「未経験者に対応させないよう、きちんとした経営者の確保ができるペースで事業拡大している」などの答えの方が安心できますね。

 

「買手探しはどうやって行っているの?見つからなかった時はどうするの?」

これは特に、着手金を徴収する仲介会社を検討している場合に必須の質問になります。

 

いくら着手金を支払ったとしても、「あなたの会社に興味を持つ会社が中々現れません」と言われて長期間放置される案件というのは、どの仲介会社でも一定割合で存在する可能性はあります。

 

最近では、仲介会社内で買手担当と売手担当を分けていて、それぞれ別の担当者が売手と買手のそれぞれを担当するという仲介会社が見られますが、中には売手担当はやる気があるけど、買手担当は全然やる気がなく、きちんと買手にコンタクトを取っていないというケースもあります。

 

当然売手側には、「頑張って買手を探しています」とは言うんですが、買手担当は動いていないので、買手が見つかることは絶対にありません。

 

売手側は、仲介会社がどういう買手探しの方法を取るか全くと言っていいほど分からないと感じることは多いはずなので、きちんと買手探しの方法や報告の頻度、見つからなかった場合の対応についてはきちんと確認しておきましょう。

 

「こういう手紙(メール)は他の会社にも送っているの?」

よく、M&A仲介会社と接点を持つきっかけが、「あなたの会社とM&Aしたいと言っている買手がいる」という手紙やメールや電話をもらって取り合えず会ってみた、というケースが非常に多いです。

 

こちらの記事でも取り上げましたが、バイネームで買いたいと言っている買手いるという話は基本的にはウソ情報であることがほとんどです(買収ニーズがあるのは事実でも、買いたいとまでは言っていないはず)。

「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実

 

「この仲介会社は他の仲介会社と比べても何が良いのか分からないな」とか「なんでこんなに手数料高いんだろう」と思ったとしても、「具体的な買手を連れてこれるから」ということで仲介契約やアドバイザリー契約を締結してしまう人が非常に多いので、こういう手口が横行しているに過ぎないのですが、これを見抜かないと仲介会社選びの判断を誤ることになります。

 

この質問に対しては、「買収対象があなたの会社でないといけない理由」や「買手がその仲介会社を使わないといけない理由」が客観的にも納得のいく説明が得られるのかを判断することになりますが、「その仲介会社でなくても買手企業には打診できる」ことや、「結局複数の買手と交渉することが売手として交渉力を得られる」ことを考えると、

 

「買手がいるからその仲介会社を選ぶ」のではなく、「信頼できる仲介会社を先に選んでその仲介に複数の買手を探してもらう」

 

というのが正しい順番です。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

本気で仲介会社を選ぼうと心に決めれば、意外と核心をついた質問で本音に迫れるはずです。

 

また、その本音に迫れば迫るほど「M&A業界ってあこぎな商売だなぁ」と感じるはずです。筆者はこのM&A業界の色々な面を見ているので、まさにそういう感覚です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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