お悩み社長
これからM&Aに取り組もうという方は、M&A仲介会社に依頼をした後どんなことが起こるかあまり想像できない人がほとんどだと思います。
それゆえ、「絶対後悔したくないし騙されたくない」と思いつつも、どんなことに気を付けたらよいか分からないという悶々とした感じになることも多いですよね。
右も左もよく分からない、と思っている状態に付け込んで金儲けをしようという輩は後を絶たず、最近ではM&Aがそういうカテゴリの代表格になりつつあったりします。
ちょっとメッセンジャーボーイをしただけで何千万と手数料を取っていたらそうなっちゃいますよね。
筆者はそういう気持ち悪い業界も業者も嫌だなと思って、自己主張メインでこういう発信をしていますが、M&Aをする前に知っておくとよいことも多々あるので是非この記事に限らず色々読んでいただけると嬉しく思います。
そんなわけで、今日は「M&Aを検討する前に(M&A仲介会社を選ぶ前に)知っておくと後悔する事態を避けられるかもしれないこと」に焦点を当てて記事を書きたいと思います。なお、この記事を作成するにあたり、M&Aでわだかまりが残っている方数名に取材を行っております。
「M&Aは仕組みを知らないと損をすること」がとても多いので、知っておくと得することもあるかもしれません。
それではいきましょう!
M&A仲介会社を規模で選んでしまったために高額な手数料を払うことになってしまった
これは譲渡金額に対してかなり高額な仲介手数料であったため、M&Aが成約したのはいいけど「あれ、こんなに手数料払う必要はあったの?」と後から後悔している方の意見です。
とある仲介会社では、成約時の盛大なセレモニーを動画で見せ、「ああ、こんなM&Aできたらいいな」と思わせてM&Aを決心させるケースなんかもあったりします。
無事M&Aを成約させて、祝杯を挙げて、とそれはそれでいいのですが、ふと冷静になった時に「あれ?手数料がもっと安くてもM&Aできたんじゃない?」と思う方は多いです。
お金に不自由のない方だったらそんなM&Aでもよいかもしれませんが、多くの方は、M&Aで売却して得たお金は老後の資金であったり、これから新しい事業を行う上での軍資金であったりします。
なので、1円でも多く手残りを多くするということは本当に重要です。当たり前ですが。
でも、M&Aを始める時は「M&Aなんて成約するかどうか分からないし、この仲介会社規模も大きくて信頼できそうだしまぁいいか」で契約してしてしまう方がとても多いです。
「M&Aができる立場」になって初めて手数料について疑問を持ち、交渉をしたくなる、というのが人情かもしれませんが、そんなことはできないようM&Aが始まる時に仲介契約やアドバイザリー契約という形で手数料を決めるというのが仲介会社の通例です。
だから後からどれだけあれこれ言ったとして払わないといけないわけです。
M&A仲介手数料について交渉できる最大のタイミングは「どのM&A仲介会社にするか選ぶ時」です。
M&Aいろは塾ではこのM&A仲介会社選びに対して、本音ベースで様々な情報を提供しています。例えば、こちらの手数料一覧の記事については、仲介会社の水準感がわかりますので「今会話している仲介会社と手数料全然違わない?」ということにも気づくことができます。
「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!
是非お役立てください。
仲介手数料以外になんだかんだ結構費用がかかってしまった
M&Aをする上でのコストでは、M&A仲介手数料が一番高額です。
ですが、その仲介手数料を支払うタイミングや、それ以外の費用が発生するかどうかは仲介会社によっても異なります。
仲介会社によっては、月額のコンサルフィーを請求してくるところもありますし、交通費や宿泊費を請求するところもあります。
また、顧問税理士に少しお手伝いしてもらったらその分の報酬を請求されたとかもありますし、仲介手数料に全部含まれていると思っていた契約書類のリーガルチェック費用も、仲介会社から「うちは仲介なので売手側で弁護士を雇ってやって下さい」と後から言われたりと、思っていなかった出費が発生することもあります。
始まってみないと分からない費用もそれなりに多いですが、最大でどのくらいの費用が発生するかはイメージしておくとよいかと思います。
仲介会社には「仲介手数料にはどこまでの費用が含まれるか」「どこまでは自己負担か」「今回の案件ではどういう費用が発生し得るか」「一度払ったものでM&A不成立の場合に返金があるものはあるか」と必ず契約締結する前に聞いておきましょう。
これをすることで、M&Aコンサルタントの経験値やレベル感が透けて見えたりと副産物も多いですし、人によっては「え、じゃあ仲介手数料高すぎない?」と思うかもしれません。
着手金だけ払って放置された
売手企業の中には、着手金だけ払って放置されている会社が相当数あります。
どの仲介会社も、受託した会社が全て成約するわけではありません。成約率という指標は仲介会社にとって都合が悪い指標なのでどこも明示しませんが、筆者の元いた会社では1年内成約率は概ね50%弱だったりします。
これを着手金のある仲介会社において考えてみると2社に1社は着手金を払うだけ払って成約していないということです。
筆者の考えとしては、成約しないなら返金するか、手間賃でもらうなら実費を基準にすべきという考えですが、根拠が示せない高額な着手金を徴収する会社もあるので注意しましょう。
そして、着手金を貰って受託したのに買手探しをしていない案件も実際存在します。これは塩漬け案件とも言われますが、こうなるとただ着手金を仲介会社に寄付しただけみたいになってしまいます。当の仲介会社は「頑張って探しています」とは言いますが。。
M&A業界にいる筆者からみても信用できないM&A仲介会社は腐るほどいる(もちろん信用できるM&A仲介会社もたくさんいますが)ので、M&A仲介会社は信用できない前提で接するようにした方がよいですし、着手金を支払うのはリスクでしかないので、何の成果もない出費を避けたい方は着手金を取る仲介会社を選択肢から外すほうが無難と思います。
あと、余談ですが、具体的な自社の客観的な成約率や他社との比較を明示しないのに「圧倒的に高い成約率」などと謳う仲介会社は多いので安易に信用しないようにしましょう。
M&A支援機関ではないM&A業者を使ってしまったため補助金が利用できなかった
中小企業のM&Aを促すためにこちらの記事で紹介したような補助金が存在します。
【2022年4月~】事業承継・引継ぎ補助金の受付開始!
M&Aを進める際に一番のコストになるM&A仲介手数料にも利用できるため、利用者側(売手や買手)からするととてもメリットのある補助金ですが、これを申請できる条件として、M&A支援機関の登録をしている仲介会社を利用しているという条件があります。
国内のほとんどのM&A業者はこの登録をしていますが、まれにM&A支援機関でないM&A業者もいたりします。
登録自体は難しくないので、M&A支援機関でないM&A業者というのはつまり、「M&A支援機関登録制度の存在を知らない業者」か「国が定めるガイドラインを遵守できないという業者」か「何等か問題があって登録できない業者」といったところですので、補助金関係なく使わない方が良い業者かもしれません。
一番最初にM&A支援機関かどうかを下のデータベースで確認するのも良いですが、素行の悪い業者は途中で登録が剥奪される制度になっているので、評判の悪い会社は避けた方が良いです。
参考 登録機関データベース(外部サイト)中小企業庁
雰囲気に飲み込まれて変な条件で売ってしまった
M&Aを成約させた売主がたまに言うのが、「安売りしすぎた」です。
本当に安売りのケースもあれば、そうでないケースもあるので一概には言えないですが、仲介会社が他の選択肢を示さず売手としてはもう売るしかない状態にもっていかれてしまった、という他者からの働きかけで判断を誤ったり、自分が買手に共感し過ぎてしまい「頑張って欲しい」の意味も兼ねて安く売ってしまったなど自ら安くし過ぎてしまったなど様々です。
初めてのM&Aなので、雰囲気に飲まれるのはよくある事ですが、取引金額も含めた条件については冷静に考える時間を必ず設けるようにしましょう。
行儀の悪い買手がトップ面談の場で条件提示をして「その場で回答が欲しい」と迫ってきたり、それを仲介者が止めなかったりといったハプニングもあるかもしれませんが、大事な決定事項を時間を設けず判断させるというのは普通ではありません。
時間をかけて既に諸条件が煮詰まっている訳でもなく、即断即決を求めてくるというのは、相手の判断ミスを誘い自分が有利に事を進める際に使われる手法でもあるので、そういう交渉をしてくる相手は警戒するべきです。
また、信頼できる仲介者であったとしても、仲介者のゴールはM&Aの成約かつ手数料を徴収することであるので、そういう目的を持った人間の意見であるということは覚えておきましょう。
最近ではセカンドオピニオンも許容される風潮になってきましたので、M&A検討を特定の仲介会社と進めている最中であっても他のM&A業者に偏りのない意見を求めることもできます。
是非、色々な意見を聞きつつ、自分の納得する結論を出しましょう。
もっとちゃんと買手と会話した上でM&Aを決断するべきだった
M&Aをした後に、買手が原因で従業員が退職してしまったり、家主や取引先と揉めたりすると、「あー、もっと買手と話をして、相手を見定めればよかったな」と感じる方もいます。
M&Aに至るまでに行う売手と買手の会話は、実際思っているよりも少ないです。
仲介会社を使うと基本的には仲介会社とのやり取りになるので、気づいたら買手とはトップ面談1回と最終契約の調印1回しか面談せずM&Aをしてしまった、なんてケースもあるくらいです。
交渉のフェーズによっても話せる内容が異なりますので、きちんと丁寧にM&Aをしようとすれば、こんな少ない面談回数でM&Aができる訳がないのですが、最近では「短期間でM&Aをします!」みたいな仲介会社も増えているので、仲介会社主導で面談回数の少ないM&Aにされてしまうケースが多いです。
本来仲介会社は、できるだけ短期間でたくさん成約して手数料を効率よく稼ぎたいと思っている人々ですので、仲介会社の都合に合わせて短期間で成約させる必要は全くありません。
売手と買手がお互いに意思疎通できていないな、と思うのであれば何度でも面談して会話して意思疎通を図りましょう。「結局M&Aしてみないとわかりません」とか「早く決めないと相手の気持ちが変わってしまいます」と仲介会社が言うかもしれませんが、自分がきちんと腹落ちできるよう買手の意志をきちんと直接面談をした際確認しましょう。
普通の買手であれば、売手が不安に思っているのであればなんとか解消してあげて円満にM&Aしたいと思うものです(M&A後も売手には協力してもらわないと困るから)。
筆者は、「M&Aの仲介者を選ぶ時には、その仲介者を通して相手方の温度感や考え方をきちんと読み取れる人を仲介にしましょう」と日々お伝えしていますが、細部に渡る調整が必要になるM&Aでこの点がおろそかになると、買手の気持ちもよく分からなくなってくるので気を付けましょう。
いかがでしたでしょうか?
M&Aの納得感・満足度はびっくりするくらい人によって違います。
事前に知っていれば「もっと良い判断ができた」と思うようなことは多いので、可能な限り色々調べた上で決断するようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!