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「M&A DXが中小企業庁から登録取り消し処分」問題のある業者の排除が始まる

お悩み社長

M&A仲介中堅のM&A DX社が支援機関の登録取り消しされたけど何か悪いことしたの

 

令和7年1月24日、中小企業庁はM&A DX社に対してM&A支援機関の登録取消を発表しました。

参考 M&Aに係るトラブルの発生を踏まえた対応について(外部サイト)中小企業庁財務課

 

そもそも、M&A支援機関制度というのは、簡単にいうと「M&A界隈では問題のある業者が多いから、国でガイドラインを作って業者に守らせよう。M&A支援機関に登録する条件としてこのガイドラインを守る誓約をさせ、もしガイドライン違反を起こしたら登録抹消させるぞ」という仕組みの制度です。

 

このガイドラインは法律ほど強制力はないものの、これを守っているM&A支援機関(業者)は国のお墨付きが与えられているような面もあり、M&A支援機関を使ったM&Aを使うと売手も買手も補助金を申請できるという特典もあります。当然お客さんとしては補助金がもらえる方が良いので、お客さんに選ばれやすいM&A支援機関になっておこうと国内のM&A業者はだいたいこれに登録している印象ですね。

 

今回、M&A DX社はこのガイドラインに違反したため、登録取消になったということです。

 

中小企業庁が実名で登録取消を公表したのは今回が初めてな気がしますので、今回はこの話題を取り上げてみたいと思います。

 

 

M&A DX社がM&A支援機関の登録取り消し処分を受ける

 

まず、M&A DX社はどんな会社かというと以下のような会社です。

会社名 株式会社M&A DX(旧:株式会社すばる)
住所 東京都港区浜松町二丁目4番1号 世界貿易センタービルディング南館17階
代表者 牧田 彰俊
設立 2018年1月
URL https://subaru-inc.co.jp/

 

近年、一部のM&A仲介会社が、大規模な人材募集をかけ拡大している傾向がありますが、この会社もその一社で、筆者的には中堅のM&A仲介会社という感じの印象をもっています。

 

M&A案件獲得のための電話やDMも盛んな会社で、営業が来たことがあるという方もいるかもしれません。

 

 

そんなM&A DXが今回M&A支援機関の登録取り消し処分を受けたということですが、一部報道では、「M&A DX社の仲介事例で、買い手に買収資金が払えない疑いがあることを売り手に伝えず、結果的に株式代金も払われなかった。専門家でつくる第三者委員会にも諮り、登録業者が守るべきガイドラインで定めた善管注意義務に反すると判断した」という理由も報道されています。

 

こちらの記事でも取り上げた、M&A後に買手が売手企業の資金を吸い上げてトンズラするという事件も話題になりましたが、今回報道されている「買い手に買収資金が払えない疑いがあることを仲介会社が知っていた」というような事例は、より悪質性が高いと判断された可能性もあります。

ルシアンホールディングスのM&A詐欺?手法とその対策

 

これまでルシアンのような詐欺事件では、関与した仲介会社が「買手がそんなことをするなんて想像つきませんでした」と言い逃れをするケースが多かったですが、もし、仲介会社がそういう買手だと知った上で売手に紹介していたのであれば、ちょっと別次元の話になってきます。仲介会社が加害者寄りであるという色が強い話なので。

 

 

このような取消を受けて、「M&A DXってヤバい会社なの?」という印象を持つ方もいるかもしれません。

 

筆者が思うに、中小M&Aガイドラインというのは結構当たり前のことしか書いていない印象なので、そのガイドラインに違反したという点では問題がある会社と言えるかもしれません。

 

このガイドラインには、仲介者として普通の倫理観で注意しながら進めればそれほど踏み間違えるようなものでもなく、むしろ、「譲受側から追加の手数料をもらって譲受側に便宜を図るようなことは禁止」などといった、「そんなこと普通せんやろ」的な内容も入っているようなものなので、ガイドラインに抵触するのは結構問題だと思います。

 

以前、M&A DX代表の牧田氏も、YoutubeやSNSでヤバい業者が多いというような趣旨の発信をしていたような気がするので、問題意識自体がおかしい会社だとは筆者も思いませんが、その後やり方が変わったか、場合によると人材確保のために色んな人を入れると問題が起きるという事例なのかもしれません。

 

筆者はこの点、とにかく未経験者でも何でも人を採用して、高額なインセンティブというにんじんをぶら下げて働かせる、というこれまでの仲介業界の構造に問題があると思っているので、「M&A DXだけがヤバい会社」という話で収束するような話ではなく、「何をしてでも成約させないと認められないM&Aコンサルタントの人事制度って、不正の温床になってるんじゃないの?」という構造的な話だと思っています。日本M&Aセンターの不正会計問題もしかりです。

 

 

ちなみに、「事業承継・引継ぎ補助金」という、売手や買手がM&Aを行う際に費用補填でもらえる補助金がありますが、これを仲介手数料に充てる場合、M&A支援機関を介して行わないと申請できない補助金なので、仲介会社を選ぶ際には注意しましょう。登録解除されたM&A DX経由だと申請できない気がします。

参考 事業承継・引継ぎ補助金(外部サイト)事業承継・引継ぎ補助金事務局

 

 

問題のある他の業者へもイエローカード

 

今回発表された内容では、実名公表されているM&A DXの他に、「不適切な譲受側とのM&Aを支援したM&A支援機関6社に注意を発出した」とあります。

 

現時点、この6社についての実名公表はなく、登録の取消しまでは行われておらず、適切な対策が図られていない場合は来年度以降の登録継続が認められない、にとどまっています。

 

M&A DXに対する処分と差があるのは、事の悪質性など、何等かの差分があるのかもしれません。

 

ただ、この「注意」についても実名公表した方がよかったかな、と筆者は思います。お客さん側がその業者と接する際に注意するという機会が得られないからです。

 

注意を受けた業者がその後も対策せずやっぱり登録取消が妥当でした、となった場合に、お客さん側としてはなぜ国の機関は問題を起こした業者だと知っていたのに早く公表しなかったのか、という話にもなると思います。

 

個人的には、業者の営業に影響を与えることについて忖度したのか?大手の仲介会社だから?とか色々考えてしまいますね。

 

 

公的な情報発信は無いものの、こうした独自に取材をして仲介会社の実名も出して発信しているところもあるので、実際どんな会社が関与しているんだろうと気になる方はご覧いただくのもよいと思います。

 

筆者は真面目にM&A仲介に取り組んでいるので、M&A仲介業者で一括りにしてみんな腐ってる、と言われるのはな・・という感じですが、業界全体でみたら対外的にそう見えるのは分かります。

 

筆者の感覚的には、仲介業者を大手・中堅・小規模で並べた時に、基本的に頭から腐っていて、腐った会社から同じやり方で独立してやっている仲介業者も腐っており、さらにM&A業務をやったことのない新規参入業者は進め方がカオス、というのが正直な感想ですが、どの業者が大丈夫か、腐っているかなんて区別がつきづらいので、特にこれからM&Aを初めて取り組もうとする売手からは判断が難しいかな、とも思います。

 

なかなか言語化しにくい「どういう仲介者が安全か」問題を、このブログではできるだけ色々な視点で記事を書いていますので、そちらもご参考いただけると嬉しいです。

 

 

事業承継・引継ぎ支援センター経由での紹介は安全?

 

今回、M&A支援機関の登録取消と併せて、「事業承継・引継ぎ支援センターとの連携停止」も盛り込まれている点は注目かと思います。

 

「事業承継・引継ぎ支援センター」は公的機関である中小企業基盤整備機構が、全国の商工会議所に設置しているM&Aに関する相談所的なところで、M&A業者の中にはこの事業承継・引継ぎ支援センターに登録して、売手や買手を紹介してもらっている業者もいます。

 

ざっくりなイメージとしては、M&A支援機関は国内のM&A業者はほぼ全社(者)登録していて、事業承継・引継ぎ支援センターに登録しているのは一部の業者という感じで、両方登録していることもあれば、M&A支援機関だけ、というケースもよくあります。

 

業者的には、事業承継・引継ぎ支援センターに登録できるとM&A案件への接触機会が増えるのでメリットがあるのですが、今回の処分では、その機会も取り上げ、ということになります。

 

右も左も分からない、民間のM&A業者はゴリゴリの営業ばかりで嫌だから事業承継・引継ぎ支援センターに相談にきた、という方も結構いると思いますが、いざ「M&Aを進めよう!」となった場合には、民間のM&A業者を紹介してもらって進めるケースも少なくありません。

 

こうした問題業者を排除するというスクリーニング作業を事業承継・引継ぎ支援センターで連携してもらえるのであれば、事業承継・引継ぎ支援センター経由でM&A業者を紹介してもらえれば、少なくとも問題視している業者に当たらなくて済む、という可能性はあるかもしれません。

 

じゃあ、絶対大丈夫か、とまでは筆者は思いませんが、ただ受動的に営業を受けたM&A業者に決めるよりはマシ、程度ですかね。。

(筆者は、過去、事業承継・引継ぎ支援センターの担当者が大手仲介会社を優先的に紹介したり、担当者の古巣の金融機関に忖度したり、、というのを見てきているので多少懐疑的には見ています)

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

このブログでは、忖度なく、M&Aでおかしいことにはおかしいと問題提起している内容になっているので、実際M&Aでは何が問題なんだろう、という疑問への答えになるかもしれません。疑問に思っていることの答えが無い場合やご質問などあれば下のお問い合わせフォームよりお問合せ下さい。

 

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