お悩み社長
以前、M&A会社からの電話についてこんな記事を書きました。
「M&A仲介会社からの迷惑電話!?」資本提携?どういう目的でかけてくるの?
でも、忙しい事務員さんなどが「M&Aの電話ってどうしたらいいんだろう」とこういう記事を検索されてるケースもあるかと思いますので、今回は簡潔に対処法について伝えていければと思います。
この記事を読むことで、電話に対する適切な対処ができるようになり、今後この手の電話を多少減らすことも可能になると思いますので是非最後までお読みください。
ちなみに筆者はM&A仲介をしている身ですが、同業者のこういう迷惑行為はどうかと思っており、業界の仕組みを知っている立場として効果的な対処法をお伝えしたいと思ってこういう記事を書いています。
それではいきましょう!
電話がかかってきた時の対応方法
M&Aの営業はだいたいこんな感じで電話をかけてきます。
【M&A業者】
「先日お送りしたお手紙について社長様にご説明したくお電話しました」
「貴社と資本提携したいといっているクライアント企業がいましてお電話しました」
「社長様にお伝えしていることがあり補足でお電話しました」
だいたいは「重要そうな話がある風」を装って電話をしてきます。
中には、「さも社長と面識がある風」を装って電話する者もいます。
結論から先にいうと、重要な話でもなくただの営業ですし、社長と面識なんてありません。
まともなM&A業者であれば、M&Aという会社にとって重要な話を社長や会社の株主以外に話をすることはありませんので、面識があるなら最初から社長に電話するはずです。そもそも相手を誤認させてひっかけようとしている時点でヤバい業者なんでガチャ切りでよいくらいです。
こういう営業の目的は「なんとかして社長に取り次いでもらう」ということですが、こう返しましょう。
【受付回答例】
「弊社ではこのようなお電話はお取次ぎしなくてよいと指示が出ておりますのでお引き取り下さい」
多くを語る必要はなく、上からの指示で取次ぎを拒否する旨を伝えるだけでOKです。
ポイントとしては、”受付担当者の判断”ではなく”会社の意思決定者の判断”として断っている旨を伝える点です。
なぜなら、強情際の悪い営業の場合、受付担当者の判断で断ってきたなと感じると「こんな重要な話を社長ではなく、受付のあなたの判断で断るんですか?」と逆切れしてきたりしますので、とても面倒です。筆者としても同業者として恥ずかしい限りですが、実際こういう業者はいます。
気になる方は一度社内で「M&A業者からの電話は全てお断り」と認識を合わせておきましょう。
なお、「社長に聞いてもないのにこんなこと言っちゃってもいいの?」と思う方もいるかと思います。
結論としては、問題ないです。
こういう電話はあなたの会社だけでなく他の会社にもローラー作戦でバンバン電話していますので、いままでもこれからもたくさん電話は来続けます。通常業務の支障になるからという理由でお断りすることは何も悪いことではありません。実際、社内でM&Aとか資本提携とかその手の電話は全部お断りと決めている会社も結構あります。
令和6年8月に改訂された「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも言及されていますが、M&A業者の行う広告・営業が中小企業の事業活動や経営者の生活に多大な支障を与えるような過剰なものである場合には、民法上の不法行為責任を負う可能性がある旨指摘してもいいかもしれません。
また、これによってあなたの会社の社長が重要な商機を失ってしまうみたいなこともありません。
大抵この手の電話は、「会社・事業を売ってくれ」か「会社・事業を買ってくれ」のどちらかです。どちらもあなたの会社として興味がないなら全部断ればいいです。
そもそも、いきなり知らない会社があなたの会社を買収したい、みたいな話は無いですし、既に関係がある先からのM&Aしたいという申し出であれば、会社の代表番号とかに電話するんじゃなくて、別の機会で社長と二人きりになったタイミングで切り出すとかが自然です。
また、こういうガンガン電話営業するM&A業者は総じてM&A手数料が高いことが多いので、むしろ、その電話を社長に取り付いで社長が丸め込まれてしまうことで、社長を損させてしまう可能性が高いと考えられます。もっと言えば、M&A手数料が高い業者を使ったM&Aは買手側からも高い手数料を取るので、もしM&Aが成立してしまうと、買手としては多額の投資資金の回収のために従業員の給料がなかなか上げづらくなるという害もあります。
社長に「なんで断ったんだ」みたいな話で受付の方が怒られてしまう可能性があるようであれば、社長に是非このブログを読んでいただくように勧めていただければと思います。なんでそんな電話に出てはいけないのか理由も説明していますので。
ちなみに、あれこれとごねまくってなかなか電話を切らせてくれないM&A業者だった場合の対策で一つキラーフレーズをお伝えします。
【受付回答例】
「御社が中小企業庁のM&A支援機関なのであれば、このやりとりを不適切事例として報告させていただきますが、それでもよろしかったでしょうか?」
だいたいこれでM&A営業は黙ります。ゴキブリにゴキジェットプロくらい効きます(笑)
一応説明しておくと、M&A支援機関というのは「中小企業庁が管理しているM&A業者を取り締る登録制度」のことです。
あんまり問題のあるM&A業者は登録解除しますよ~!ってことで国がお触れを出しているもので、これが登録解除されてしまうとその業者を使うお客さんに補助金が出ないなどM&A業者としては営業的にかなりイタいです。
これに報告されるという話になるなら、「失礼しましたっー!!」って逃げていくのが普通ですね。
なお、国内のM&A業者は大体M&A支援機関で、電話をかけてくるのはこのM&A支援機関という理解で良いです。万一「弊社はM&A支援機関じゃないので」みたいな返しをしてくる場合には、そもそも国の定めるガイドラインを遵守していないという業者を意味するのでそれこそ相手にしてはいけないヤバい業者です。
この不適切事例の報告は簡単に連絡できる窓口はこちらに設置されていますので必要に応じてご利用ください。意外と簡単なので、悪質だなぁと思ったら迷わず連絡したらいいと思います。
参考 情報提供受付窓口(外部サイト)中小企業庁
なお、こうした通報対策なのか、社名をわざとはっきり言わない・略称で伝える業者も増えています。ここまでくると詐欺かなんかに近いですね。
M&A業者の社名や会社の電話番号はきちんと確認してから通報するようにしましょう。ちなみに電話番号で検索すると業者の正式名称にヒットすることもあります。
迷惑電話を減らす有効な対策
上のような対応を一回でもすればその会社からは普通掛かってこないような気もしますが、テレアポは外部に委託していたり分業でやっているので、情報管理ができていなければどれだけクレームを言っても何度もかかってくることもありますし、そもそもM&A業者は本当に数も多いので全部に同じ対応するのも面倒だと思います。
そこでオススメの対策は、「会社のホームページのお問合せフォームなどに営業電話やメールは受けない旨を明記しておく」ことです。
ホームページ改訂の手間はあるかもしれませんが、その後の対応工数の手間を考えたら十分やる価値はあります。
技術的に可能であれば、「営業目的ではない」というボックスにチェックを付けないと送信できないようにするというのもよいでしょう。これは送る側の心理的な壁になります。
ただし、多くのM&A業者は1社1社ホームページを確認せずにいきなり電話してきたり、「これは営業じゃない!資本提携という使命を背負っているんだ!」と信じ込んで連絡してくるので、相変わらず連絡がくることもあります。
もうこういう業者はどうしようも無いんですが、対外的に営業電話は受けないことをネットで公言しているわけなので、「ホームページも見ずにM&Aとか言わないで欲しい」くらいの温度感で撃退することもできるかもしれません。
また、ごねられた場合の電話はどうしても受け手の時間を取ってしまうので、「何か用があればお問合せフォームから連絡してください、折り返す必要があればこちらから折り返します。電話では承っていません」で切るというのもよいです。これが一番穏便かつ早いこともあります。
お問合せフォームからのメールやDMで、ウソのM&A情報を持ってくる業者の見分け方はこちらで詳しく解説していますので、実際にその手の連絡が来た場合にはこちらもご参考ください。
「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実
こんな電話を社長に取り次がなくてもいい理由
こういう電話を対応しなくていいの?と思う方もいるかもしれませんので、簡単にその理由を記載しておきます。
理由① M&A業者の中では「貴社と資本提携したい先がいる」はほぼ嘘だから
DMでも電話でもこのような話は蔓延しています。
なので、薄々感じてる方も多いと思いますが、この手の決まり文句はどのM&A業者でも使いまわしています。
理由は簡単で、まんまと騙されて実際に顧客を獲得できる可能性があるからです。
「探せば買手が見つかるかもしれないな」というレベルで「買手がいるのでM&Aしましょう」くらいの文章を送ってしまう業者がほとんどなので、基本的に嘘で丸め込もうとされていると思って、必要でないならこんな内容を真に受けなくてもいいです。
理由② 仮に取引相手がホントにいたとしても、その取引相手とだけ交渉するの?って話だから
M&Aの交渉というのは、良い条件で取引する為に、複数の相手と交渉するのが売手側の常識です。
今や年商1億円に満たなくても、複数の買手とM&A交渉をするのが中小のM&A市場では普通です。
なので、「買手がいるっていうなら」と交渉に入るのはよっぽど自分の会社が売れないと思っている方か世間を知らない方がすることで、交渉上手な方は「複数の買手と交渉するためにはどうしたらいいんだろう」と考えるものですし、「業者への無駄な仲介手数料をできるだけ安くして、手取りを多くしよう」と考えるのが合理的です。
複数の買手と交渉するには、複数の候補先と交渉の場を設定してくれる業者か、あるいは、業者を複数並列で走らせる、というのもよい手段です。少なくとも、このクライアントと是非!と言ってくる業者を使うべきではありません。
理由③ こういう仲介会社って大概手数料高いから
電話やDMなどで営業にお金をかけているところは、ビジネスモデル上、最低報酬額の設定が高いケースが多いのです。
以前、こちらの記事で仲介会社の手数料をまとめました。
「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!
今回電話がかかってきた仲介会社の社名はないでしょうか?場合によっては、M&Aするのに最低でも5,000万円かかる会社も普通にあります。
なんでこんなに営業の無駄打ちができるかって、それだけ荒稼ぎしているということです。
大量の営業 ⇒ 顧客獲得 ⇒ 多額の手数料を回収 ⇒ さらに大量の営業
という感じで拡大しているビジネスモデルです。売手の立場でこれに乗っかるとたとえM&Aが成立しても手残りが少なくなってしまいます。
M&Aに興味があるなら、手数料が安く信用できる業者からトライするのが王道です。
また、本当に悪質な業者は手数料について細かく伝えずにM&Aの話を進めようとしてきたりします。
これ本当に危険なんで、絶対に相手にしてはいけません。
こちらの本でも細かく解説していますが、M&A業界は手数料が自由に設定できるので、はっきり言って何でもアリです。
【お知らせ】「M&A仲介会社からの手紙は今すぐ捨てなさい」を出版しました
筆者は最低報酬300万円で設定していますが、やっていることも変わらないのに最低報酬2,000万円、3,000万円という業者がたくさんいるのは、内心「なんだかなぁ」という気持ちもあります。
いかがでしたでしょうか?
中小M&Aガイドラインも厳しくなってきているので、過剰な広告・営業に対する反撃もしやすくなりましたが、それでも手を変え品を変えのいたちごっこの様相を呈しています。
筆者もM&A業者なので言えるのですが、M&A自体は単なる資本政策であり経営戦略なので、社長にとっても従業員にとってもメリットがあることも実際多いとは思います。「買収されたら給料が下がるのでは?」と心配される従業員の方もいますが、大半は現状維持か、むしろ給料がアップするなんてことも普通にあります。
それでもM&Aのイメージが悪いのは変な業者がいるからであって、こういう業者を排除すればもっと健全になるのにな、と思う次第です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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