お悩み社長
以前、M&A会社からの「迷惑電話」の目的についてこんな記事を書きました。
でも、忙しい事務員さんとしては、「M&Aの電話って何度も何度のしつこい!どうにかしたい!」と、こういう記事を検索されてるケースもあるかと思いますので、今回は簡潔に対処法について伝えていければと思います。
この記事を読むことで分かることは以下の内容です。
・M&Aの営業電話を減らす方法
・M&Aの営業電話を社長に取り次がなくてもいい理由
・なぜこうした営業電話がなくならないのか
ちなみに筆者は昔、大手仲介会社で電話営業をしていた経験もありますので、業者目線でこういう問題についてどうやって解決できるかも知り尽くしております。
ご参考いただければと思います。
【結論】M&Aの営業電話を減らす方法
M&Aの営業電話を減らす方法はいくつかありますが、根本的に効果的な方法から挙げていきます。
①まず企業情報を流出させない
②営業電話を禁止することを明確にHPのお問合せ欄に記載する
③受付段階で断ることを徹底する
④不適切事例として報告する
①まず企業情報を流出させない
これが最も根本的かつ効果的な方法です。
例えば、帝国データバンクや商工リサーチなどに情報提供したり、会社のHPに財務情報を載せたり、決算公告を載せたりといったことです。
特に、帝国データバンクや商工リサーチ、その他の企業情報会社・プラットフォームは、企業情報を外販しており、M&A仲介会社がこれを買い、買収対象先リストを作成し、電話をかけまくるという流れになっています。
なので、そもそも何も会社に関する情報を外に出さなければ営業は減ります。
ただ難しいのは、一度でも情報提供してしまうと「やっぱり情報を外販するな」といっても個人情報に関する部分でなければ聞いてくれない可能性もあります。会社によってはオンラインのみならず、CD-ROMで販売していたりするので、この記憶媒体まで回収を図るのは不可能に近いです。
既に情報提供してしまっているなら、今後は情報を提供しないことで、外販するデータが古くなっていくので、営業の参考にならなくなってくる、ということは一定程度期待できます。
いずれにしても本当に必要な時以外は情報を公に出さないことです。
ちなみに筆者の実体験からいうと、M&A仲介会社が特に欲しがる情報は、「会社名・住所・代表者名・株主・事業内容・売上高・利益・資産・従業員数」あたりの情報です。
仲介会社は「手数料が稼げる売り案件になるか」しか興味ないので、買手が興味を持ちそうな業種か、売上・利益・従業員の規模がちょうどいいか、きちんと株価がつくか(債務超過でないか)を重要視します。
年商でいえば1~10億円くらいが仲介会社のターゲットゾーンみたいな感じです。規模が大きくなればなるほど後継ぎがいたり、外部株主が入っていたりするのと、会社数もぐっと減るのでやはりちょうどいい規模感の会社に営業が集中している印象です。
②営業電話を禁止することを明確にHPのお問合せ欄に記載する
これは、アポインターの心理的に一つの壁になります。
電話をする側からすると「営業電話するなってホームページに書いてあるでしょ?」って言われる可能性があるわけなので、もし、仲介会社側が、既成の顧客リストを上から順にHPを確認した上で架電するというフローになっているなら、「まあ、この会社はクレームになりそうだから飛ばすか」となる可能性があります。
ここで注意点は、「M&Aの提案も営業である」ということが分かる表記にすることです。
電話する業者は、「営業禁止」という記載がHPにあっても、「M&Aのご提案は単なる営業じゃない!」と勝手に脳内変換して架電するモードに入る(というかそう自分に言い聞かせる)ので、M&A業者からのM&Aや資本業務提携に関する電話やDMはいらないことまで具体的に明示でもしない限り、謎のポジティブシンキングで電話してくるのが厄介なところです。
会社によっては、「お取引様からのお問い合わせフォーム」「協力会社様からのお問い合わせフォーム」など用途別に分けて、そこに営業の連絡先がないHPもありますが、これも効果的です。
あるいは、その他のお問合せは電話ではなくすべてメールに誘導して、当社が関係がある要件だけ返信するという仕様にするもの、受付の方の工数略奪の防衛策になります。
HP改修の手間は発生しますが、事務員さんの断る労力と工数削減を考えると手を加えるのは十分合理的だと思います。
③受付段階で断ることを徹底する
どれだけ対策をしても電話をかけてくるM&A仲介会社もいます。
電話番号に関する掲示板では以下のような意見もあります。
匿名さん 2026/01/15 13:46:32
M&A総合研究所からの迷惑電話が非常にしつこいです。
これまで何度も何度もこちらの情報を削除し、「二度とかけてこないでほしい」と明確に伝えています。
そのたびに担当者は必ず
「わかりました」
「対応します」
と言いますが、結局また電話がかかってきます。
理由を尋ねると、毎回のように
「社内で情報共有ができていませんでした」
という全く同じ言い訳。
正直、何回同じことを言えば気が済むのかというレベルです。
個人情報や顧客情報を扱う会社として、社内で情報共有ができていないという説明は通用しません。
それが本当なら管理体制がずさんすぎますし、嘘ならさらに悪質です。
「削除します」「もうかけません」と言いながら電話をかけ続ける行為は、
営業以前に企業としての信用問題だと思います。
二度とかけないと言われても全く信用できません。
引用:jpnumber電話番号検索
M&A仲介会社の迷惑電話でよくあるのが、断ったのにまたかかってきた、というものです。
なぜ何度もかかってくるかの原因としては、「社内で連絡した先をデータベース化していない」、「データベース化しているがクレーム先として登録していない」、「架電者の感覚が麻痺しておりクレームだと思っていない」「外注も使って広範囲に営業しておりそもそも管理でできる範囲を超えている」、といったことが考えられます。
本来クレーム対応になると架電する側にも何のメリットもないので、普通はトラブルが生じた先は次回営業連絡しないのが通常ですが、性懲りもなく何度も電話してくる仲介会社は存在します。
この場合は、相手側(仲介会社側)を変えることは不可能なので、社内で「出禁業者」などとして拒否するしかなくなります。
M&A仲介会社であれば大抵同じような趣旨の電話なので、M&A仲介会社全体を出禁にしてしまってもよいですが、偽名をつかったりする業者も結構多いので判別が難しいこともあります。
実例でいえば、「M&A総合研究所」は「総合研究所」として名乗ってきたり、「M&Aベストパートナーズ」は「MABP」と名乗ってきたり、「M&A DX」は代表者の会計事務所の名前を使ってきたり。。
なので、「M&Aや資本業務提携といった連絡はお断りしている」旨は伝えた上で一方的に電話を切るか、「正式な社名と連絡先を聞いた上で、必要があれば連絡する」と伝え切るかがよいと思います。
間違っても、「社長は今いない」とか言ってはいけません。何度もかかってくる羽目になるので。
④不適切事例として報告する
あまりにしつこい営業に悩まされている場合は、
「御社が中小企業庁のM&A支援機関なのであれば、このやりとりを不適切事例として報告させていただきますが、それでもよろしかったでしょうか?」
と伝えるのも一応方法としてあります。
M&A支援機関というのは「中小企業庁が管理しているM&A業者を取り締る登録制度」のことです。
あんまり問題のあるM&A業者は登録解除しますよ~!ってことで国がお触れを出しているもので、これが登録解除されてしまうとその業者を使うお客さんに補助金が出ないなどM&A業者としては営業的にかなりイタいです。
この不適切事例の報告は簡単に連絡できる窓口はこちらに設置されていますので必要に応じてご利用ください。意外と簡単なので、悪質だなぁと思ったら迷わず連絡したらいいと思います。
参考 情報提供受付窓口(外部サイト)中小企業庁
ただ、この苦情の受付先は役所みたいな対応ですし、実際仲介会社への苦情が殺到しても以下のような注意喚起レベルでの対応しかしていないので、あまり効果があるかはわからないです。
昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について
よほど被害者が金銭的被害を被る事件でも起こさない限り登録取り消しまではしていない印象なので、なんとなく腰抜け感は否めないな筆者は感じています。
ただ、迷惑行為を受けたと感じた方にとっては一つの溜飲を下げる方法くらいにはなると思います。
M&Aの営業電話を社長に取り次がなくてもいい理由
こういう電話を対応しなくていいの?と思う方もいるかもしれませんが、結論としては「取り次がなくてよい」です。
簡単にその理由を記載しておきます。
理由① M&A仲介会社の「貴社と資本提携したい先がいる」は架空の話であることが大半だから
最近ではガイドラインで禁止されるようになりましたが、まだこのようなニュアンスを匂わせて営業している仲介会社は存在します。
あなたの会社が財務情報やビジネスモデルなど詳しい情報を公開してないのであれば、他の会社がいきなり資本提携したいまで踏み込んでくることは普通無いので、架空の商談として相手にする必要はありません。単に社長の時間を無駄にさせるだけです。
理由② 仮に取引相手がホントにいたとしても、その取引相手とだけ交渉するの?って話だから
仮に営業してきた仲介会社がホントに買手を連れてくるのだとしても、その話をいきなり受けることは売手側としてもよいとは言えません。
というのも、中小企業のM&Aでも複数の相手と交渉するのが売手側の常識で、どの会社なら従業員を大切にしてくれるんだろう、とか、どの会社ならより事業が発展するんだろうという比較をするのも会社の将来を考える上で重要になります。
それもせず仲介会社が連れてきた買手とそのまま譲渡の話をするのは、会社の将来や株主の利益よりも仲介会社の手間と利益を優先した選択になるということを予め理解しておくべきでしょう。
理由③ こういう仲介会社って手数料高いことがよくあるから
電話やDMなどで営業にお金をかけているところは、ビジネスモデル上、手数料が高いケースが多いです。
大量の営業を行うことはそれなりの費用が必要になりますが、その費用はどこから出ているかというと主にM&Aが成約したお客さんからの成功報酬です。
安い成功報酬では採算が合わないビジネスモデルなことも多いので、手数料(特に最低報酬額)の設定が割高な仲介会社にあたる可能性も上がります。
もし営業してきた会社の手数料が知りたい方は、中小企業庁の登録支援機関データベースでその仲介会社の最低報酬額を調べてみてください。
数百万円と安いところもあるかもしれませんが、断続的かつ広範囲に営業をかけてくる会社は、最低報酬額で2,000万円や2,500万円といった高額な手数料を設定している会社の可能性が高いのではないでしょうか?
なぜこうした営業電話がなくならないのか
M&A関連の営業電話が異常ともいえるほどかかってくるのは何故だろうと思う方もいると思います。
その理由は、M&A仲介業はM&Aの売り手となる会社を囲い込み続けないと売上が立たないビジネスモデルだからです。
M&Aというのは一度したら普通はリピートが発生しないものなので、同じお客さんから稼ぎ続けるというのは売手側に関してはできません。買手側については、色々な譲渡案件を持ち込めば何度もM&A仲介させてもらえるということはありますが、ただ、持ち込むための譲渡案件が無いと何も始まりません。
色々な買手に興味を持ってもらえる売手をいかに口説いて、仲介契約を締結して、買手とつなぐことができるか。これが全てです。
だから、止まったら死んでしまうマグロのように、連日電話を繰り返すのです。
ただ、M&A仲介会社の中でも、営業のスタンスは少し違います。
当初から、日本M&Aセンターやストライク、名南M&Aのような仲介会社は金融機関や会計事務所・税理士事務所などから売手を紹介してもらって仲介するという営業スタイルがありましたが、M&Aキャピタルパートナーズが顧客へ直接営業する営業スタイルで薬局M&Aをたくさんしていたり、近年ではM&A総合研究所が大量の手紙や電話、お問い合わせフォームからの営業を直接行うような営業スタイルも巷でよく話題になります。
紹介ではなく直接営業して売手を捕まえたほうがM&A仲介会社としては紹介料とか発生しないので利益が取れます。ですが、直接営業は相手に迷惑と思われるような電話も多いので、そこは企業としてもレピュテーションリスクとの兼ね合いで判断しているのでしょう。
筆者は長年M&A業界にいますが、この「99人に迷惑だと思われても1人の客が取れればいい」的な思想の仲介会社が多いのは大変残念ですし、M&A仲介という仕事についての誤解も招いているように思いますのでなんとかならないかなと思っています。
いかがでしたでしょうか?
中小M&Aガイドラインも厳しくなってきているので、過剰な広告・営業に対する反撃もしやすくなりましたが、それでも手を変え品を変えのいたちごっこの様相を呈しています。
筆者もM&A業者なので言えるのですが、M&A自体は単なる資本政策であり経営戦略なので、社長にとっても従業員にとってもメリットがあることも実際多いとは思います。「買収されたら給料が下がるのでは?」と心配される従業員の方もいますが、大半は現状維持か、むしろ給料がアップするなんてことも普通にあります。
それでもM&Aのイメージが悪いのは変な業者がいるからであって、こういう業者を排除すればもっと健全になるのにな、と思う次第です。
最後までお読みいただきありがとうございました。


