お悩み社長
M&A仲介会社からの直接的アプローチとしてはDMか電話がほとんどです。
例えばこんな感じです。
「はい、〇〇株式会社でございます」
「M&A〇〇の〇〇と申しますが、〇〇社長いらっしゃいますか?」
「社長に親展でお手紙をお送りしておりますので、その件でお電話しました!」
「営業はお断りしておりますので、失礼いたします」
最近非常に増えています。
実際電話を受けた方々の意見はこんな感じです。とある仲介会社の口コミですが、色々な仲介会社でも全く同じことをしているので一般的な意見としてご理解ください。
匿名さん
●●●● 社長宛てにゴミ郵便物を送りつけてきてその件でと営業電話
何十回断ってもかけてくる。
昨日断ったのに同じ担当者がまたかけてきたりする
こちらをバカにしてる手法なのか単に雑なのか
会社のレベルなのが伺える。
匿名さん
前の口コミと全く一緒なので電話営業のマニュアルなのか?
わざと、会社名をハッキリ名乗らない、ゴチヨゴチョと言う、
先週社長とはなし、書類送っているので、確認したいとの事
営業のお電話は、全てお断りする様になっておりますと言ったら、
すんなりと切られましたが・・・、
この怪しい迷惑電話ぽい営業に、幻滅しました。
この記事を読まれている方は、実際にこうした電話をもらった方が多いかと思いますので、こういう電話の目的や対応した場合にどういう展開になるか説明していきたいと思います。
筆者は実際にM&A仲介会社でこうした現場を見てきておりますので、かなりリアルな現状をお伝えできるかと思います。
なお、「会社を売って欲しい」という営業電話と、「会社を買ってほしい」という営業電話は内容が異なりますので、それぞれについて説明していきます。
ちなみにこういう「電話を迷惑だ!撃退したい!」と感じている方はこちらの記事の方が簡潔にまとめていますのでこちらをご覧ください。
M&A迷惑電話を断る・減らす具体的な方法【受付担当者さんも必見】
それではいきましょう!
「会社を売って欲しい」場合に掛けてくる電話の内容
どんな感じの電話か?
M&Aの売手を探している時のM&A仲介会社が電話をかけたときには、大体このような内容でかけてきます。
「社長宛に郵便物を送ったのでその内容で説明させていただきたい」
「代表者様に(業務資本提携の話で)重要な話がある」
こういう電話をする仲介会社の事情としては、
「DMの反応が思わしくないから追電しよう!外注や新人使ってテレアポ作戦だ!」
という感じで、リストを上から架電しまくっていることが多いです。
あまり最初の電話で「資本提携」と言ってしまうと、「そんな大事な話を電話を取った受付に話すのか?」とクレームを受けるリスクもあるので、「何のご用件ですか?」という問いについては「秘密情報なんで」でごまかそうとします。
なのでなおさら怪しい迷惑電話だなぁ、と思うわけですね。
M&Aは普通従業員に内緒で行うものなので、決定権者である社長や会社オーナーに話をしないと話が進まないため、なんとか決定権者に取り次いでもらおうとしてきます。
ちなみにM&Aの決定権者とは、「会社の株主」「代表者」と思って良いです(中小企業の場合は一緒なことが多い)。
タチの悪い仲介会社では、こういった電話を受付段階で断ると、
「こんな大事な話を社長に聞きもせずに断るんですか??」
と逆ギレしてくるところもあります。しつこい場合は、「必要があるときはこちらから連絡しますので」と電話を切るようにしましょう。
受付の方が対応に困ることも多々あるので、会社の方針でこの手の電話が来たときはお断り、と決めておくとよいかもしれませんね。
こちらの記事でも記載しましたが、こうしたコンタクトの大半がただの営業目的なので、興味ない会社にとっては「M&A〇〇」などのM&A仲介会社は社名と用件を聞いただけでお断りモードでもよいかもしれません。リストの上から電話をかけているだけなので、架電者がよほどの変な人でなければ断ったことで何か嫌がらせを受けることは無いと思います。
「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実
電話を社長に取り次ぐとどんな話になるのか?
もし、こういった電話を社長に取り次いでしまったり、社長自身が電話に出てしまったらどうなるでしょうか?
だいたいはこんなことを言ってきます。
「御社と資本提携をしたいと言っている先がいます」
「M&Aのメリットを伝えさせていただきたい」
「御社ならとても好条件で譲渡できます」
当然、仲介会社と初回で話している段階で買手企業と話を詰めていることなどないので、好条件で売れるかどうかなんてわかりません。
ここでのミッションは、「嘘でも何でもいいので関心を持ってもらい、とにかく直接面談の機会を得ること」だけです。
社長に「今の事業運営に疲れた」、「事業展開に限界を感じている」など会社を譲渡する要素が少しでもあれば、「それをM&Aで解決しましょう」という展開に持っていきます。
そもそも会社を売らせることが目的ですからね。
もちろんM&Aでこうした問題を解決することもありますが、仲介会社は「今売って欲しい(だって自分が今期の予算を達成したいから)」と思っている訳なので、別に相手にとって最適な答えを探してくれようとしているわけでは全くないです。
もっと言うと、異業種からM&A仲介業界に入ってきて、経営に詳しくもなんともない営業マンが唯一ちょっと勉強したM&Aをゴリ押しするケースもあるくらいなので、経営上の問題をM&A以外で解決する方法なんて知らないといった方が適切かもしれません。
で、中には「ほう、我が社はオファーをくれている会社とM&Aできるのか」「高く売って引退できるのか」なんていって仲介会社と契約しちゃう人がいます。
こういう人が恰好のカモです。
仲介会社が違うだけで実際に払う手数料が10倍近く違うとかも普通にあるので、わざわざカモられるのはもったいないです。
会社名がないと分かりづらいと思うので、こちらに仲介会社毎の手数料を並べた表も作りましたので参考までに張っておきます。
「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!
構造としてはこんな感じです。
「こういう電話営業を積極的に行う会社」
↓
「営業に人件費・広告費をかけている会社」
or「強引な営業をしないと集客できない会社」
↓
「仲介手数料が高い会社」
という可能性が傾向としては高いような気がします。相手の話に流されないよう気を付けましょう。
「御社に既に買収(資本提携)したいと言っている会社がいる」
と言われて、なんとなくその仲介会社を通すことでメリットがありそうな気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
でも大半はそんな買手企業はおらず、買手を一から探索するか、売手側から情報取った後過去やり取りのある買手企業に「この会社どうですか?」と聞きに行くだけです。間違いなく。そのような動き方は他の仲介会社に話をしても結局一緒です。
万一、名指しで買いたいと言っている買手がいたとしても、他の買手と比較もせずにその会社と一対一で交渉するのはどうか、と考えてみてください。
(買手を比較しないということは、自社の評価をその買手の言い値に委ねるということです。これは大安売りしてしまう可能性も多分に秘めています)
この辺の仲介会社の言い回しは単なるリップサービスとして捉えて、まずは健全な仲介会社を探すことを心がけましょう。
※この辺を話し始めると長くなってしまいますが、筆者の書籍「M&A仲介会社からの手紙は今すぐ捨てなさい」で詳しく解説していますので興味がある方はご参考下さい。
次は買手に対してかけてくる電話の例です。
「会社を買って欲しい」場合に掛けてくる電話の内容
どんな感じの電話か?
M&Aの買手を探している時のM&A仲介会社が電話をかけたときには、大体このような内容でかけてきます。
「御社にご紹介したい譲渡企業がある」
「経営企画などのご担当の方はいらしゃいますか?」
こういう電話をする仲介会社としては、
「早くこの案件成約したいから、とにかく興味持ってくれる先を探さないと!」
という感じで電話をかけてきます。
買手企業に対しては、必ずしも社長という訳ではなく、「M&Aを検討している部署(経営企画、社長室、財務部、総務部など)」に取り次いで欲しいと言ってくることもあります。
目的は、
譲渡企業を紹介して、興味を持ってもらえれば是非検討してほしい(でも手数料は貰うよ)
ということですので、会社がM&Aを積極的に検討しているのであれば担当部署に繋いでもよいかと思います(ただ、例えば食品製造会社なのに自動車修理会社などの案件を持ってくるとかのトンチンカンな案件紹介だったら相手にすると時間を無駄にするかもしれません)。
怪しい感じがするのであれば、「会社HPのお問合せフォームで用件をお伝え下さい。興味があればこちらから連絡します」で返しておきましょう。あとでその電話番号を検索すれば、どのような、目的で電話してきたかが他の会社のSNSや掲示板などへの書き込みで判明することもあります。
なお、色々なケースを聞いていると、以下の2つのケースがあるように思います。
・ネームクリア※の許可を売主に取ってから電話をしてくるケース
・単に事前調査で電話をしてくるケース
※ネームクリアとは、売却する会社情報を買手企業に開示することを言います。
どの買手企業に自分の会社名を開示していいかを仲介会社は事前に売主に確認を取ります。大半の電話はこのネームクリアの許可をもらっている状態で打診してきます。
売主に打診の許可をもらっている分、「何らかの回答を買手企業から貰わないと売主に説明できない」と考えて何度も電話を掛けてくることも少なくありません。
買手からしてみたら、「そんなこと勝手にすんな」と思う方もいると思いますが。
一方で、このネームクリアの許可を取らずに、事前調査的に想定している買手企業に電話をしてくることもあります。この場合、いざこの電話をきっかけに買手企業が興味を持ったとしても、いざ売主にネームクリアを確認してみたらNGを食らってしまい、詳細提案が出来なくなってしまった、とクレームになることもあります。
作成する買収候補先リストの精度にもよりますが、新規の買収候補先であれば10社候補先を挙げても1社も話を聞いてくれない、なんてくらいの確率なので、ある程度打診先を最初に増やしておきたいと思う反面、あまり打診数を増やして売手のネームクリア許可を取ってから打診して全部ダメでしたとなると売手からの仲介会社への心象が悪くなるので、ネームクリア許可を得ずに買手打診をしてしまう仲介会社が出てきてくるのでしょう。
筆者は情報管理上これはどうかと思いますが、、
電話を社長や担当部署に取り次ぐとどんな話になるのか?
もし、こういった電話を社長や担当部署に繋いでしまったらどうなるのでしょうか?
だいたいはこんなことを言ってきます。
「御社に是非ご検討いただきたい譲渡企業がいます」
「もし検討頂く場合は、NDA※をいただきたい」
※NDAとは「秘密保持契約」のこと。情報開示する代わりに秘密を漏洩しないと約する書面。
ここでのミッションは、「譲渡企業に興味を持ってもらい」「NDAをもらうこと」です。
大まかな内容や、Teaser(あるいはノンネームシートといいます)を貰うこともあります。
この内容で興味がある場合は、NDAを出してもよいでしょう。というか、Teaserレベルでは売上とかエリアとか業種がざっくり書いてある程度なので、そもそも興味ある案件かどうかも判断できないことがほとんどです。
このNDAの書式の内容にもよりますが、基本的には秘密保持義務と直接交渉禁止の義務を負うくらいの内容なので、費用は発生しないことが多く、それほど気にしなくても良いと思いますが、中には「詳しい情報を知りたければ料金をお支払いください」という企業概要書開示段階で情報提供料などといって料金を徴収する業者も稀にいるので注意しましょう。
ここで何らかの費用を支払うのは買手側が損をする可能性が高いだけでなく、ブローカーチックな業者に引っかかるリスクも上がるので、基本的に相手にしないことをお勧めします。
手数料無料で情報開示を受け、なかなかいい案件だった場合はどうでしょうか?
それでも、その仲介会社の手数料が異常に高いというケースはあるので気を付けた方がよいです。
M&A業界の悪しき商習慣ともいえますが、買手企業の場合は、その仲介会社経由以外でその譲渡企業にコンタクトできないケースが多いので、手数料が高い仲介会社だからといっても、なかなか対処がしづらいところです。不動産でいう専属専任媒介みたいな感じです。
つまり買手の場合は、「仲介会社に手数料を払ってM&Aする」か、「見送るか」の2択ということです。
この辺の仕組みや、買手側としてどういう動き方をするとおかしな費用を掛けずにM&A案件に到達できるのか、を詳しく解説した書籍「なぜ初めての買収は仲介会社にカモられるのか」も作っておりますのでご興味があればご参考ください。
ちなみに筆者は、しつこくていかがわしい営業はすべきでないという立場です。
特に売手の場合は「ウソをついて気を引く」という、ある種の当選詐欺のような形式を取っているケースも非常に多いので、ガイドラインでも問題視されています。
で、怖いのは、上場しているような仲介会社だったり、CMを頻繁に流しているような仲介会社であったりしても、平気で迷惑顧みず連絡してくる事例は後を絶ちませんので、大手だからって安易に信用してはいけません(むしろ大手の方が人海戦術でたくさん迷惑電話している可能性も高いと思っています)。
M&A仲介会社の営業は大変盛んになっていますので、ある程度予備知識がないと、かなり高額な着手金や仲介手数料を支払うはめになってしまいます。
安易に電話を取り次いだり、話し込んだりせず、一度冷静になって、色々自分で調べてから本当に必要だったら折り返すというのが良いと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
お問合せ