お悩み社長
当サイトでは、「信用できないM&A業者に任せるのはやめましょうね」と口酸っぱく言っています。
それでも世の中には、なんとなく良さそうな仲介会社だと思って仲介契約を結んでしまった結果、後々、「なんでこんなことになってしまったんだ」と思っている方もとても多いように思います。
中には、
「こんなの詐欺だ!金返せ!!」
という方もいると思います。
詐欺というのは、刑法246条では「人を欺く行為をして相手方を錯誤に陥らせ、相手方に財産処分させる行為」となっているので、「人を欺く意思があって相手を錯誤に陥らせた」ということが前提になると思いますが、「金品を騙し取ろう」と画策してM&Aを持ち込んでくる仲介会社は実際それほどいないように思います。
でもM&A業界に長くいる筆者が聞いている話では、お客さん側が騙されたと感じてもおかしくないようなことをしている仲介会社という趣旨の話は結構聞きます。
要は、M&A仲介会社は詐欺の認識ではないけど、適当な仕事をした結果、受け手は詐欺だと感じてしまう、ということですね。
最近ではこちらの記事にもあるように仲介が見抜けなかったために売手が買手に騙されてしまう、という事例も報告されています。
ルシアンホールディングスのM&A詐欺?手法とその対策
ちなみにこれ、大手仲介会社の内部情報として筆者も聞くケースが多いので、「詐欺的なことをしているのは名前も聞いたことの内容な仲介会社」ではなく、「社会的な信用がありそうな仲介会社が裏ではこんなことをしてる」というのも結構あるので、あまり他人事と思わない方が良いです。
今日はこんな話題について取り上げたいと思います。
本日の内容が役に立つ方
・M&Aで詐欺に遭うのではないかと心配している方
・これから依頼する仲介会社が詐欺をしていないか心配な方
・実際に詐欺と疑われるような事例が発生している方
それではいきましょう!
怪しい仲介会社に騙されたと感じる事例
仲介会社が騙す意図はなくても、売手オーナーが騙されたと感じる事例は結構多いです。
例えばこんなケースです。
・着手金を払ったのに全然買手を連れてこない
・仲介契約を解除したいのに多額の違約金を請求された
・担当コンサルタントに言いくるめられて損するような契約を相手方と締結してしまった
・きちんと説明を受けていない事項についてM&A後買手から請求を受けてしまった
一つずつ解説していきます。
着手金を払ったのに全然買手を連れてこない
仲介会社と仲介契約を締結し、着手金を支払ったけど、全然買手を連れてこない。
こんなとき「詐欺に遭った」と思う方もいるかもしれません。
この仲介会社としては、「買手は探しているが意欲のある買手が現れない」という言い分を主張すると思いますが、どんな時間軸でどういう探し方をしているか、きちんと打診の状況を報告しているか、がきちんとできていないと、売手オーナーとしては何にもしてないように見える、ということでしょう。
これはM&Aの本当に難しいところで、現実的に買手が現れないということは普通にあります。
理由は様々ですが、希望金額が高すぎて買手の箸にも棒にも引っかからないというケースやニッチな事業過ぎて需要が無いなどがあります。
でも、同時に、買手を探そうとしなければ絶対に見つかりません。
着手金は受取っているが本気で買手を探していない、という会社も中にはあります。
本音を語る仲介会社の社員がたまにリークしていたりもしますが、営業系の仲介会社だと、
「買手探しが難しそうな案件に時間をかけるより、すぐに決まりそうな案件に時間をかけて、早く成果を出し、インセンティブを貰いたい」
という状態にどうしてもなってしまうため、同じ着手金をいただいていても同じようなサービスが提供できていないという事が発生します。
着手金を貰っているのにこれはあかんやろ、と筆者は思います。
こんな感じで、M&A仲介において売手が着手金を払うということを”払い損になる可能性が相当あるもの”としてきちんと捉えないと「詐欺だ」と感じてしまうことに繋がってしまいます。
そもそも着手金が無い会社を選べばこういうことは起きないので、筆者としては「着手金無しでも受けてくれる売手であれば、着手金がある仲介会社は選ばない方がいい(もちろん最低報酬額なども考慮した上で)」と思っていますが、もし、もう着手金を払ってしまってどうしようも無くなってしまっている方は、以下のようなことを再度確認しましょう。
・着手金はどういう目的で徴収されたものなのか
・その目的は現在果たされているのか
・目的が果たされないときは返金されるのか
・仲介者の動きとして誠実かつ正しい動きをしているのか
依頼しようとしている仲介会社が着手金を取る会社だった場合には、本来事前に確認しておくべき内容です。
とはいえ着手金は、「企業概要書などを作成する手間賃」みたいな意味合いで徴収している会社が多く、実際返金しない仲介会社が多いです。
着手金の扱いについては、仲介会社と結ぶ仲介契約書(アドバイザリー契約書、業務委託契約書など他の呼び方もあります)にきちんと揉めない書き方にしておく必要があるのと、それでも明らかに問題があると思う場合には、弁護士に相談するのも良いと思います。
仲介契約を解除したいのに多額の違約金を請求された
仲介会社の動きが悪いと感じて仲介契約を解除したいのに違約金を請求された、というケースでも騙されたと感じる方がいるかもしれません。
仲介会社の動きが悪いと感じる理由には色々あるので、一概にどういうケースが動きが悪いのかはあいまいですが、大体の仲介業者としては違約金について「仲介会社の責によらずに合理的な理由なく一方に解約する場合は違約金を請求する」とする会社があります。
要は、お客さん側が「やっぱやーめた」と一方的にM&Aを辞めてしまったケースはお金ちょうだいね、ということです。
着手金を取らない仲介会社は特に、途中でM&Aを辞められてしまうと、今までの人件費が回収できないということになってしまいます。それを抑止する目的で仲介契約で定める内容になりますが、次の点は注意しておきたいポイントです。
・どういったケースが一方的な契約解除にあたるのか
・違約金の金額算出方法は明確か
この点に認識の違いがあると揉める原因になります。
一般的には、「業績が悪くなったから会社を売ろうと思ったけど、業績が戻ったから売るの辞めるわ」とか「誰も後を継がないと思っていたから会社を売ろうと思ったけど、息子が帰ってくるって言ったからやっぱり売るの辞めるわ」とかが一方的な契約解除とされるケースなどです。
買手や仲介会社からしたらちょっと待ってくれ、って話ですからね。
一方で、「買手が中々見つからないし、仲介会社も次の買手を見つけるのは難しいと言っている。だったら一旦このM&A検討をペンディングしようか」とか「買手からは色々提案を貰ったが、当初伝えていた希望条件に合わないものばかり。一旦M&Aは辞めよう」というのは一方的な契約解除とも言い難いものかと思います。
常識的に考えれば一方的かどうかなんてものは分かりやすいものですが、変な交渉をしてくる仲介会社やお客さんもいたりはするので、お互い客観的に状況を捉えることが重要になってきます。
また、違約金の算出方法についても、仲介契約書上明確になっていることが望ましいです。
人件費を時給換算するのか、作業ごとに単価を設定するのか。
算出方法も決まっておらず時給も明示されていなかったりすると、両社で相談して「では●●万円にしましょうか」みたいなふわっと決まるケースも多かったりします。
お客さん側が、一方的に辞めることに引け目を感じていればある程度話合いでまとまるケースもあるのですが、両者喧嘩ごしみたいな感じだと、ここで言い合いになりますので、やはり事前に決めておくことが良いでしょう。
根も葉もない根拠で高額な違約金を請求してくる仲介会社がいるのであれば、それは中小企業庁の相談窓口に通報するか、支払をする前にまずは弁護士に相談するようにしましょう。
問題のあるM&A仲介会社は苦情窓口へ通報?情報提供窓口の使い方
担当コンサルタントに言いくるめられて損するような契約を買手と締結してしまった
押しの強いタイプのコンサルタントを使うと言いくるめられてしまう方もいたりします。
M&Aのことなんて分からない会社オーナーばかりなので、それをいいことに、都合の良いことを言ってお客さんを動かそうとするコンサルタントは実際います。色々はき違えているコンサルタントなんですが、M&Aはあくまで売手と買手の取引なので、仲介者が何等かの判断をするということはそもそもおかしいです(判断を決定付ける重要な進言というのも危ないです)。
売手と買手がそれぞれ判断する際に、仲介者が「メリット・デメリットをきちんと伝えて判断を仰ぐ」「仲介なら利益相反になるようなことは言ってはいけない」という姿勢で対応することは当たり前なんですが、そういう認識がそもそもないコンサルタントがいるのは怖いですね。
こういうコンサルタントが多い理由は、「第一に成約させることが目的」で動いているからです。
(特に大手中堅の仲介会社は、成約ノルマがきついですし、インセンティブ報酬で従業員のモチベーションアップを図っているので環境的にはどうしてもこういう目的になってしまいます)
「成約させることがお客様にとっても良いことだ」と正当化するのが彼らの口癖ですが、きちんとした判断材料と説明を伝えて、選択肢を用意し、理解を得たのか、というと同業からみても怪しい取引も多いです。
手数料が多くもらえる特定の買手とくっつけたくて、実は恣意的に買手をチョイスして打診を行っていたという仲介会社なんかもアウトです。
お客さんを言いくるめて早期にM&A成約させるコンサルタントは仲介会社内ではちやほやされたり、昇進したりもしますが、仲介者として優秀かどうかはお客さん目線できちんと判断しないと本当に危ないです。
筆者はこういうゴリゴリ系の営業は生理的に無理なんで、少し話しただけで「あ、この人無理かも」と感じてしまうことも多いのですが、コンサルタント選びではそういう感覚を大事にしましょう。
以前こんな記事を書きましたので、こちらもご参考下さい。
「選んではいけない!」M&Aコンサルタントの見分け方まとめ
ちなみにM&Aは一度成立してしまうと、それを取り消すということは容易ではありません。
また、M&Aは一対一の相対取引で一物一価です。そのM&Aをして損をしたということを証明することも難しいでしょう。
従業員や取引先なども巻き込んでしまっていますし、事業譲渡になると権利や労働契約も元通り変更しないといけない話になるので複雑な処理になります。
だから「安売りしすぎたな」と後から思ったとしても泣き寝入りしてしまうケースが多いです。
担当コンサルタントの進め方に問題があったために錯誤が発生した、ということであれば、きちんと状況と証拠を整理して動かれるのが良いと思います。
きちんと説明を受けていない事項についてM&A後買手から請求を受けてしまった
これはコンサルタントがお客さんの理解度に併せて説明できていない時に起こる可能性があります。
M&A取引で法的拘束力を持つ一番重要な書面は最終契約書ですが、これを「お客さんの理解度に応じて説明しているか」は重要です。説明の時間とか細かさとかよりも理解度です。
最終契約書には権利義務色々書いてありますが、この理解がきちんとできていないと、ある日買手から売手に何らかの請求がなされ「そんなの聞いてない!」となってしまうかもしれません。
M&Aの最終契約書には「完全合意」という、「今までの交渉で色々会話してきたけど、この契約書に盛り込まれないと法的な効力ないよー」という文言が入ることが多く、契約書としてはバッチリ仕上げているのに、肝心の当事者がきちんと理解していないというケースも結構多いのです。
筆者は、最終契約書については「絶対一回聞いただけでは理解してないでしょ」くらいの感覚で何回も説明してます。あとから「聞いていない」と言われる可能性と言われないように。。
契約書については、コンサルタントを過信しすぎると自分に跳ね返ってくるくらいのものだと思った方が安全な気もするので、意味の分からない単語や言い回しがあれば必ず解決した上で、調印に挑むようにしましょう。
こちらの記事で注意点についてまとめていますので、良ければ参考にしてみてください。
「M&Aをした後に売手って何か制限・拘束を受けるの?」最終契約書について分かりやすく解説
色々「騙された」と感じる機会はあるかもしれませんが、「金品を奪ってやろう」と考えて仕掛けてくる仲介会社よりも、「動いた以上の見返りが欲しい」「楽に成約させて成功報酬が欲しい」という仲介会社の方が多く、悪質と判断しずらいです。
「刑事事件で裁かれなくとも、民事で訴えてやる!」と思う方もいると思いますが、悪質な仲介会社こそ、契約書上できちんと身を守っていたりするので、結局泣き寝入りしている人が多いように思います。
いくら契約書上で縛られていても、契約締結に誤解を与える事象があればそこを争点にすることもできるかと思いますので、「問題あり!」と感じる節があれば、一度弁護士の先生に相談してもよいと思います。
詐欺に遭わない対策と悪質な仲介会社の見抜き方
「詐欺にあった!」とならないようにしたいものですが、そもそもどんなことに注意したらいいでしょうか?
ここでも、「金品を奪ってやろうと考えて仕掛けてくる仲介会社」と「詐欺と感じてしまうような動きをする仲介会社」を分けて対策を考えようと思います。
金品を奪ってやろうと考えて仕掛けてくる仲介会社の注意点
これは本当に詐欺を働くタイプのM&A仲介会社です。
具体的には、「ありもしない案件を紹介して紹介料を徴収する」とか「本当の株主でもないのに会社を売って売買代金を奪い取ろうとする」などがありますが、こういうターゲットはM&Aの買手に対して行います。
売手で注意しないといけないのは、「M&Aを支援する気もないのに仲介を申し出て着手金を徴収する」ブローカーなどです。
ブローカーとは、自分達でM&Aを仲介せずに、仲介会社に情報を横流しすることで紹介料を稼ぐ人々をいいます。別の本業の傍ら紹介業をしている者もいますが、このM&Aブームに乗じて詐欺を働く者もいると聞きます。
そもそも、海外企業とのM&Aなどでなければブローカーを使う必要もないかと思いますので、ブローカーだと分かれば相手にしないのが安全だと思います。
ではこういうブローカーの見分け方ですが、中小企業庁の仲介会社データベースを利用しましょう。
参考 登録機関データベース(外部サイト)中小企業庁
このデータベースには健全にM&A業務を行いますよ、と宣誓している業者が登録されているので、本当にヤバい業者はここには入っていないと思われます。
全国のM&A業者はほぼここに登録されているはずなので、たまたま登録し忘れてたとかはあまり考えなくてよく、「登録されていない業者は使わない方がいいんだなー」と思ってもいいと思います。実際M&A補助金も使えないですし。
あと、例えばこんな感じで、M&A支援機関の種類が「M&A専門業者・仲介」となっているのに、M&A支援業務専従者の従業員数が0人になっている会社も気を付けた方が良いです。
意味合いとしては、「M&A仲介業者です」と言っておきながら、「M&Aに専従している従業員がいません」ということなので、M&A業務についてブローカーの可能性もあります。
※ちなみに税理士・会計士事務所はここが0人になっていたりもしますが、明確に本業が別にあるので、この場合は気にしなくてよいです。
なお、ブローカーだったら詐欺をしている、という訳ではないので、あしからず。。
詐欺と感じてしまうような動きをする仲介会社の注意点
これは前述の通り、「着手金」など前払いの仕組みがある仲介会社や、強引な営業をしてくるタイプのコンサルタントを使う時に起こり得ます。
単純にコミュニケーション不足が原因だったりもしますが、詐欺と感じるのは受け手の感性だったりもしますので、仲介会社やコンサルタントに悪意が無くても問題に発展することもあります。
こういうネガティブな話にならないようにするためにはこんな対策も有効です。
着手金が無い仲介会社を選ぶ
着手金を取る仲介が多い訳でもないので他の心配をしない分比較的選びやすいと思います。
仲介会社の最近のトレンドとしては着手金無しが多くなってきた感じです。
なかなか成約しなさそうな案件の場合は、仲介会社側も完全成功報酬で請けることをためらうケースもありますが、逆にすぐに決まりそうな案件であれば最終報酬だけに寄せる形でも受託したいと仲介会社は営業的に思うはずです。
自社の業種や財務上のコンディションなども考慮に入れた上で、どの程度仲介会社に対して強気にいけるのかを考えても良いです。
強引な営業をしてくる仲介会社・コンサルタントは選ばない
騙されたと感じない為には自分の意志でM&Aを決めるということが重要です。
その判断基準に過度に口出しする仲介者は使わない方が良いでしょう。M&Aをしようと決断すること自体についても同様です。
お客さん側の判断を急かすのはコンサルタント個人のノルマも十分に関係していたりするので、考えようによってはインセンティブの仕組みが無い仲介会社を選ぶということも一案かと思います。
強引な営業は、実際に面談して感じとる他、下で紹介しているような営業DM・営業メール・営業電話でも感じることはできると思いますので、仲介者探しは受け身ではなく、能動的に探していくような姿勢が本来は望ましいです。
「貴社と資本提携したい」というDMは大抵ウソ、という事実 「M&A仲介会社からの迷惑電話!?」資本提携?どういう目的でかけてくるの?
買い叩いてくる可能性がある仲介会社・コンサルタントは選ばない
売手に会社の株価が低いと思わせ、本来売れる売却金額よりも安く売らせる仲介会社・コンサルタントにも注意しましょう。
これ、悪気が無くても、知識や経験、市場感が分からない仲介会社・コンサルタントが対応したりするとこういう事が発生します。
最近では、こんなことをすると案件受託できないという事情から、逆に株価を高く思わせることをする仲介会社・コンサルタントの方が多いかもしれませんが、売手があまり色々な情報を取る方でなければ、それをいいことに株価が安い印象付けを行い、安く会社を売らせるようにする者もいるので注意した方がよいです。
結局会社や事業の価値は買手が決めるものなので、仲介者があれこれいうのは違うと思いますので、「この人、偏った意見言うな~」と感じる節があれば警戒するようにしましょう。
いかがでしたでしょうか?
M&A業界では実際に詐欺も発生していますし、悪徳な業者というのもいますので注意しないと危ないです。
筆者は良いことも悪いことも正直にお伝えしてM&Aをお手伝いしていますが、たまに「他の業者に騙された!」といって駆け込んでこられる方もいらっしゃいます。お話をうかがうと、もう少し早く筆者と会話していれば防げたのに・・と思うケースも多いので、「これってどうかな?」という段階でも色々な専門家と相談した方がいいと思います。
筆者へは下のお問合せフォームからお問い合わせを受け付けておりますので、お気軽にご相談下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました!