この記事は、M&A総合研究所からの営業を受けた方が読まれているかもしれません。
結論からいうと、電話が来たからといって急いで契約する必要はなく、手数料や担当者の質を比較した上で判断することをおすすめします。
ここでは、元M&A仲介コンサルタントである筆者の立場から、電話の内容や背景、依頼すべきかどうかを解説します。
M&A総合研究所からどんな電話が来るのか
M&A総合研究所からの営業電話は数年前から非常に盛んに行われています。
筆者がこのブログを開設したのは2020年ですが、その当時から「M&A総合研究所という会社からやたら電話がくる」というご相談は多かったです。
この電話の趣旨は、主に「M&Aで会社を売ることに興味があるか」といったものです。
話の入り方としては、まず社長宛の電話があり、資本提携の可能性について会話させてほしいという趣旨の内容に入っていきます。
そして会社や事業を売る可能性がありそうなら、M&A仲介として仲介契約を結び、買手を探しに行くという流れになります。
M&A仲介業界では、一昔前は「弊社のクライアントで貴社との資本提携に興味がある先がいて・・」という営業電話も数多くありましたが、中小企業庁から発出している中小M&Aガイドラインも強化され、徐々にこういう入り方の電話は減ったように思います。なので、M&A総合研究所についても、話の入り方は少し前と若干変わった可能性があります。
M&Aという話題は結構センシティブな話題なので、どうしても電話口の受付担当の方に「御社のM&Aについて」みたいな話は普通せず、とりあえず社長に取り次いでほしい、という架電の仕方になるため、受付の方としては「怪しい電話なのでは?」と思われるケースも多いようです。
M&A仲介が怪しいと思ってしまう理由についてはこちらの記事もご参考ください。
M&A総合研究所の場合、仲介会社の中でも電話営業の架電範囲はかなり大きいと思われます。
筆者が相談を受ける中でも、M&A総合研究所の営業は全国津々浦々の中小企業にも定期的にされている話をうかがっているので、営業がよく来ることで有名、という評価はあるのではと思います。
「電話が迷惑だな」「やめさせたいな」と思う方は以下の記事をご参考ください。
なぜM&A仲介会社は電話営業をするのか
M&A仲介会社の電話営業は一昔前からかなり盛んに行われています。
筆者も昔大手仲介会社で電話営業はしていましたが、M&A仲介会社が営業電話をする理由は主に以下のような理由です。
・ストックビジネスではなく新規開拓し続けるビジネスモデルだから
・紹介案件は利益率が落ちるから
・意外と電話から案件が取れるから
ストックビジネスではなく新規開拓し続けるビジネスモデルだから
M&A仲介業は、会社や事業を売りたいという売手を見つけ、その会社や事業を買いたいという買手を探して、M&A成立を見届けることで手数料をもらう商売です。
売手についていえば、一度M&Aが成立すれば同じ売手が顧客になるということは基本的になく、また新たな売手を探さないといけません。
しかも、M&Aというのは成立までに半年・一年かかるようなものなので、常に手元に何件か案件を持っておかないと安定した収益が確保できない(売上がゼロになるリスクが普通にある)という商売でもあります。
それゆえ、新規案件を常に手元に確保するため、過剰ともいえる電話営業をやめることができないビジネスモデルとも言えます。
紹介案件は利益率が落ちるから
筆者は銀行などから売主さんを紹介してもらいM&A支援をする、というようなこともやっていた時期がありますが、こういう紹介案件の場合、紹介料というものが発生します。
大体は成功報酬の何割かをバックします的な内容なのですが、これは当然仲介会社としての利益を下げることに繋がります。
M&A総合研究所は日本M&Aセンターやストライクよりも後発の仲介会社ということもあり、ネットワークが必要な紹介案件よりも直接DMや電話で営業し、紹介料も発生させずに利益率を上げてきた会社でもあります。
仲介会社側の事情としては、マンパワーが必要になったりクレームを量産するリスクはありながらも、利益率が上げられる直接DMや電話営業というのは一つの選択肢になっているようです。
意外と電話から案件が取れるから
これ、意外かもしれませんが、何の面識もない飛び込みの電話営業からM&A仲介契約を取るということも普通に起こっています。
筆者は長年M&A業界を見ていますが、M&A業界では、「M&Aなんて重要な話、飛び込みみたいな営業で取れるわけない。怒られるだけ」という雰囲気が漂っていました。
でも、確かM&A総合研究所より前にM&Aキャピタルパートナーズが大規模に電話営業しているというのは同業者間で話題になったと記憶しています。
イメージ的には不動産営業的なローラー営業のような手法ですが、実際にこうした営業方法で業績を上げる会社も出てきたので、そのあたりからM&A業界での営業の仕方に対する捉えられ方が変わってきた気もします。
売り案件が取れるならどんな方法でも試されている状況でもあるので、今流行っている営業方法というのは、実際過去に渡って上手くいっている方法といえるかもしれません。
「買手がいる」と言われたら本当なのか
仲介会社のコンサルタントに「買手がいるからM&A(資本提携)を検討しませんか」と言われた場合、信じていいのでしょうか?
筆者はこの手の営業の裏側も全部知っている立場なので、どこまで話したらいいか悩ましいところですが、基本的には以下のような事実をベースに考えるべきと思います。
・「買手がいる」という表現は非常にあいまいであるということ
・買手からの指名はあり得なくは無いが非常に確率が低い
・買手は全く知らない会社を指名したりしない
・仲介会社は手数料も調べないと実際の手取りに大きな差が出る
・売手は1社の買手の提案で進めると条件の良し悪しを比較できない
M&A仲介会社がいう「買手がいる」は、「買手を探せばいる」にほぼ同義なので、いわゆる指名買いでないことに注意が必要です。
筆者も仲介をしていると、たまに買手企業から「あの会社に買収打診してみてよ」と依頼されることはありますが、大体は買手がよく知っている会社か、買手の狭い買収ニーズにヒットした極めて特定の会社、というパターンがほとんどです。
例えば昔あったのは、産廃業の買手で自社営業エリアのちょうど中央に位置している競合先を買いたいという話で、その競合先を買収することで営業エリアが理想的になる、といった話でした。この場合、「埼玉県・年商3~10億円規模・産廃業(金属)」みたいなアバウトな指定じゃなくて、「〇〇株式会社が欲しい」という名指しです。
アバウトな指定は指名買いとは言わないので、本当の名指しで買いたいというのは数でいえば非常に少ないです。
数あるDM、数ある電話営業の中からこうした名指し買いを探すとなると、干し草の中から一本の針を見つけるくらい無謀なことです。
でも買手の立場に立ってみれば、名指しするということはそれなりに責任が生まれるわけで、良くわからない会社や知りもしない会社を名指しなどしませんし、ましてやターゲット企業の財務状態などは公表されてなければ知りようもないので尚更です。
「名指しで買いたいといっている買手がいる」のではなく「買手を探せばいる」のであれば、逆に言うと買手を連れてこれるからという理由でその仲介会社を選ぶ意味もなくなるわけです。
ここは少し冷静に判断しましょう。
M&A仲介会社の手数料は会社によって数千万円も差があるものなので、あまり不確かな「買手がいる」話に乗っかるのではなく、手数料なども比較した上で選んだ仲介会社は買手を探せそうかと確認していく方が順序としては合理的であるといえます。手数料の取り決めだけは仲介会社を選ぶ時点で確定するものなので。
あと、筆者がもし売主の立場だったら、「1社でも弊社の買収に興味を持つ買手がいるのであればもっと他に買手いるんじゃないか?」「色々な先と交渉して、詳しい話も聞いて、条件を出してもらってそこから選んだほうが良い条件の確率や納得感が上がるのではないか?」と思うほうです。
実際、より自社とシナジーを生む買手はどこかを検証したい売主や、よい金額条件を求める売主は、2社以上の買手と同時に交渉します。
売主側も、金額など条件を重要視するのであれば、最初の段階であまり買手を絞り込まないほうが、結果選択肢が広がるものではないかなと思いますね。
M&A総合研究所はどんな会社か
M&A総合研究所はM&A業務専従者で329名(2026/6月時点M&A登録支援機関データベース参照)を擁するM&A仲介会社です。
業界大手の日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズなどと比べると後発ではあるものの、Webでのインバウンド集客からDM・電話・お問い合わせフォームからの営業といったアウトバンド集客を積極的に行い短期間で急成長した会社でもあります。
ちなみに、「研究所」とついていますが、多くの人がイメージする研究所ではなく、一般的なM&A仲介会社という扱いでよいと思います。
筆者の昔の後輩もこの会社に転職したりしてますが、人数も急激に増えたため、短い期間でそれなりの役職になっていたりしました。
急成長企業であるため、担当者の経験や案件遂行能力には差がある可能性があると思われ、担当者だけでなく会社全体のサポート体制も確認したい会社ではあるかなという印象です。
なぜならM&Aは担当者によって結果が大きく変わるもので、経験の幅や知識の量、引き出しの多さ、M&Aを安全に進めるための技量、M&Aの相手方と友好関係を保ったまま進める能力などは、かなり個人に依存しているからです。
M&A詐欺への対応体制はどうか?
昨今M&A業界では、買手が売手を騙すM&A詐欺なるものが話題になっており、以前こちらの記事でも取り上げました。
ざっくりいうとM&A仲介会社は紹介してきた買手がM&A後、売手企業の現預金を引っ張り出して逃亡、売手企業には金融機関借入が残るも個人保証は売手企業の旧オーナーになっているため、M&Aで引退したはずの旧オーナーに返済義務が生じる、という売主にとっては地獄のような事件です。
M&A総合研究所がこうした問題のあるM&Aに関わっていたかどうかについては、取材をしている会社もあるので、そちらの方が詳しく書いています。真偽の程は筆者は確認していません。
M&A総合研究所が「悪質な買い手」との仲介を繰り返す理由とは?社員をM&A成約へと駆り立てる“異様なシステム”の全容(ダイヤモンド・オンライン)
トミス建設とマイスHDの係争についてはこちらの記事でも少し触れています。
この手の問題については、筆者の見解としては以下と捉えています。
・悪質な買手の詐欺事件については、仲介会社は貰い事故という関係性
・この貰い事故は確率論でもあるので、取扱案件数が多いほうがヒットする可能性が出てくる
・M&A詐欺の予兆は事前に分かることもある
・その予兆を新人コンサルは気付けないことがある
・ベテランコンサルでもノルマのためにその予兆を軽視する仲介特有の構造がある
M&A仲介会社側としてみたら、詐欺事件に関与することは不名誉極まりないことですし、場合によって中小企業庁のM&A支援機関登録を取り消されるリスクもあるので、基本的に安全なM&Aを勧める立場です。
ただ、安全なM&Aを提供しようと思っても、買手が仲介会社を騙しに来ていたらそれを見抜けないこともあります。詐欺師が「自分は詐欺師です」なんて言わないですからね。
なので、要は担当コンサルが買手の異変に気付けるか、もし気付いたとしてM&Aを中断させる勇気があるか、という点が詐欺事件に発展させない重要なポイントだと思います。
この「怪しいな」と思ったとしてもM&A中断というのは実は担当コンサルにとってはすごく勇気がいります。
会社からは今期中に成約しろというプレッシャーを常に受けていますし、成約しないコンサルは社内で評価下げられますし、前期貰ったインセンティブで計算されためちゃくちゃ高い住民税を払うために今年も稼がないといけないですし。
筆者は実際社内にいたのですごく分かります。
昔大手上場仲介会社の不正会計事件があった時も、担当者が成果を上げないといけないプレッシャーが原因であったことが第三者委員会の報告として上がっていましたが、つまるところM&A業界で起こる倫理上の問題は、仲介業というビジネスモデルと多額のインセンティブも含めたコンサルタントの労働環境の問題な気もします。
昨今では、問題のある買手を業者間で共有する取り組みなども始まっており、一般社団法人M&A支援機関協会という団体ではM&A総合研究所の代表も理事を務めています。
ただ、詐欺師が同じ名前で詐欺をするとも限らない、M&A業界の問題は担当コンサルに依拠する部分が大きいということから、根本的には「詐欺を見抜けるコンサルか」「見抜いたとしてM&Aを止めることまでしてくれるコンサルか」を気にするほうが有効だと筆者は思います。
M&A総合研究所の手数料はどうか
M&A総合研究所の手数料は、公表されている情報から以下となっているようです。
【譲渡側手数料】
・着手金:無料
・中間金:無料
・月額報酬:無料
・成功報酬:株価レーマン方式で計算
・最低報酬額:2,500万円(税別)
M&A成立まで手数料が発生しないというのは利用しやすいポイントと思います。
また、株価レーマンで料率計算するので、総資産の割に株価が低くなる負債の大きい売手企業の場合は、総資産レーマンで料率計算する仲介会社よりも有利になる可能性があります。
一方で、最低報酬額が2,500万円と設定されているので、どのような株価であってもM&Aが成約したら最低でも2,500万円を支払う必要があるという点は注意が必要です。
また、成功報酬が発生するタイミングが、「最終契約締結の時」なのか「実際譲渡する時」なのかは事前に確認しましょう。M&Aには最終契約締結したもののクロージング要件を満たさずM&A実行されない、という事案も存在するからです。
譲渡金額別の手数料は以下のように計算できます。
5,000万円で譲渡:2,500万円の手数料
1億円で譲渡:2,500万円の手数料
2億円で譲渡:2,500万円の手数料
3億円で譲渡:2,500万円の手数料
4億円で譲渡:2,500万円の手数料
5億円で譲渡:2,500万円の手数料
10億円で譲渡:4,500万円の手数料
20億円で譲渡:7,500万円の手数料
※いずれも税別
最低報酬金額の業界標準
M&A仲介業を行う業者の最低報酬額の設定額は以前、中小企業庁から以下の分布図が公表されていました。
引用:「M&A支援機関登録制度実績報告等について」(令和5年3月16日)
令和5年の資料なので古いですが、かなり仲介会社によって設定額が異なる傾向があると思います。
譲渡額が低くなれば低くなるほど譲渡額に対して支払手数料の割合が大きくなる傾向がありますので、実際いくらくらいで譲渡できそうかをもとにシミュレーションしてみることをお勧めします。
結局、M&A総合研究所に依頼すべきか
筆者ならどう判断するか
あくまで筆者の意見ではありますが、筆者が売主の立場だったとしても、M&A総合研究所からの営業をもとにそのまま仲介契約を結び仲介1社で進めることはしません。
M&A総合研究所は、M&A業界の中でも大手で上場しており一定の信用が得られている点や成約実績がある点は安心できるポイントです。
ただ、M&A仲介会社は担当者によって経験値や能力の差があるため、他のコンサルタントとの比較はとても重要になることや、前述のような個人としてポリシーを持ってM&A支援に取り組んでいるかはコンサルタント人それぞれなので比較はしたいところです。
また、最低報酬額の設定についても各社バラバラなので当然きちんと比較します。
筆者がこういうのもなんですが、M&Aにおける仲介手数料というのはM&A取引からすると単なる中間マージンでもあるので、同じ買手と交渉できるのあればできるだけ仲介手数料が安い仲介会社を使ったほうが手残りが多くなります。
例えば、売手2,000万円、買手2,000万円の仲介手数料を設定している仲介会社を通すと、本来1億円出資できる買手でも、最終的な売手の手取りは6,000万円になってしまいます。
一方で、売手500万円、買手500万円の仲介会社なら売手の手取りは9,000万円です。
仲介手数料が大きいほうが買手とよい条件交渉をしてくれるのでは?と勘違いしている売主もたまにいますが、M&A仲介おいては利益相反行為をしないことになっていますので、そういう交渉はしません。
なので、少しテクニカルにはなりますが、仲介会社を1社でなく、報酬設定が異なる2~3社に設定し、各社から出てきた買手候補先リストを見比べ、被っている買手がいれば報酬が一番安い仲介会社に打診をさせる、という方法を筆者ならとります。
M&A仲介は基本的に、1社の買手に対して打診するのは1社の仲介会社という整理をするので、その打診権を売手の裁量で決めるということです。
この方法で進めるには、どの仲介会社もその仲介契約に「専任条項」を付けさせてはいけませんし、複数社が可能な限り同じタイミングで候補先リストを出させるスケジュールを組まないといけません。
面倒ですが、この手間を惜しまないことで、より売主が主導権を持った状態でM&Aを進められると筆者は思います。
まとめ
M&A総合研究所は営業がさかんな会社なので接触頻度は多い会社かもしれません。
ただ、M&A仲介会社は担当者の質や手数料体系など確認するポイントが多いので、営業電話が来たからと言って、そのまま進めてしまうのはもったいないかもしれません。
もし、この記事を読まれている方が、以下のようなお悩みをお持ちであればお気軽にご相談ください。
・今提案を受けている内容は本当か
・株価や実際にかかる手数料はどうなるか
・理想的なM&Aの進め方をするときにはどことどう調整したほうがよいか
最後までお読みいただきありがとうございました。



